3月のライオン | ナノ
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甘い毒に溺れる


ほんとにごくごくたまにではあるけれど、島田さんに時間があるとき連盟の近くにある私の定位置となってしまったベンチに二人で腰掛けて話をすることがある。

その日の対局相手の話だったり、単純に「いい天気ですねー」なんてたわいのない話だったり。

そういう何気ない時間を過ごしていくうちに、島田さんの隣に私の居場所ができればいいのにと願ってやまない。

島田さんと居る時間はいつだって私は全力だ。
島田さんへの思いは年中無休、24時間体制で稼動している。元気だけが取りえともいえる私だけれども。
とすん、と隣に誰かが腰掛けたのがわかった。

なのに、まどろみのなかにいる私は反応ができない。

もう3日程課題に追われて寝ていない。ようやく全ての課題に肩をつけて提出し、その足でまっすぐにここへきた。
今日は島田さんの対局日のはずで、一目でもいいから会いたくて、その一心で重たい体をひきずるようにしてベンチにまでは何とかたどりついた。
けれども、ベンチに座り込むなりに疲れがピークに達した。柔らかな午後の陽気も手伝って、うとうとと夢の世界へと誘われようにまぶたがおちて。

ベンチの上で体育すわりをして丸まっている私の横に感じる人の気配。
そっと伸びてきた手が私の頭を撫ぜ、髪を梳いてくれる。


この手の持ち主なんて、目を開けなくったってわかる。


――もうすこしだけ、このままで。

幸せすぎる、柔らかな午後。
甘い毒のように体を巡り、ここから一歩も動けない。



(この恋に溺れて死んでしまいそうなほどに幸せで)