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長州閥本丸 壱


「いいか?ねーさんに我が家の期待が全部のっかってんだからな」
軍服をかっちり着込んだ弟が言う。
「重い」
期待されたことがない身としては今にもへたれそうだ。
「しかし姉さんに適正があったとは儲けもんだったぜ」
高級スーツを着込んだ弟が言う。
「ほんとほんと、俺たちに適正なかったときの爺さんの顔見たか?この世の終わりみたいな顔してたよな。笑える」
「おじいちゃんになんてことを」
「いい子ぶるなって姉さん」
「あのくそ爺に散々ごくつぶしだの、一族の恥さらしとか言われてたじゃん。ふんぞり返って崇め奉れくらい言ってやれよ」
「だがまぁ、俺たちの顔立てるためにも頑張ってくれや」

私は本日をもって周防の国で審神者になる。
歴史を修正しようとする輩から、正しい歴史を守るお仕事らしい。

「やっぱな、軍と政治と牛耳ってる本家としちゃ、審神者輩出ゼロは結構な痛手だったし」

我が家はばりばりの長州閥である。古くから続く因習に巻き込まれて、双子の弟は一人は士官学校の、一人は最高学府の門をくぐっている。二人ともいずれは家を支える二本柱である。長女である私はといえば、とりたてて何かの才能にめぐまれたわけでもなく。とりあえず大学に行き、とりあえず普通に就職して、たぶんそのうち政略結婚の駒に使われるんだろうかとか思っていた。弟に言わせれば姉さんを駒にして何とかなる程度の相手なら、他にいくらでも打つ手があるとかなんとか。
姉ちゃんは自由に生きていいんだぜ?という微笑みは優しさだが、絶妙な戦力外通告である。政略結婚する気満々の妹たちは社交界を蝶のように飛び回っている。
ひっそりと、弟や妹たちの邪魔にならん程度に生きていくかと思っていた矢先にこれである。

「頼んだぜ姉さん。俺たちのぶんまで審神者として名をあげてくれよな」

優秀な弟たちが言う。おねえちゃんはプレッシャーで押しつぶされそうだ。なんといっても長州閥の流れをくむ政府関係者の審神者率は大変低いのだ。分母の数が小さすぎて、かかる期待が重い。
かくして私は審神者になった。



***



「どうしようむっちゃん、ノルマが終わらん・・・」
「しっかりするき主」
「もうだめ、わたしは死んだ」
「まだ時間はあるぜよ?!」

初期刀のむっちゃんが私の尻をひっぱたく。酷い。

「そもそも主のノルマ設定って高すぎなんだよ。3徹以上は許さないからね」

当本丸のお母さんポジたる光忠君が、ぷんすこと怒っている。そうはいうものの、ノルマが終わらないのだから仕方ないのだ。

「上からの命令だし・・・弟たちに情けない成績見せられないし・・・・もう一晩、もう一晩だけ粘ろうようみっちゃん〜。一期、一期くんもわかるでしょ?おねーちゃんとかお兄ちゃんという生き物は見栄と意地でできてるんだよ!」

鍛刀イベントにまったく望みの持てない当本丸は、政府主催の確定報酬任務には全力投球である。現在、秘宝の里にて玉を集める任務真っ最中だ。玉を○万個集めれば新刀剣男士が迎えられるとあって、死にもの狂いで里を駆けずり回っている。
賭けだし審神者ゆえに、超難周回は自殺行為。ゆえに、難のコースをひたすらマラソンしている。

「蛍くん、ごめんよ、もうちょい頑張ってくれ・・・」
「僕は別にいいんだけどさ、主はもうちょい寝なよ?」

我が家の頼れる大太刀+刀装3つ装備な蛍丸くんはキュートでプリティーだが、豪快に敵を薙ぎ払ってくれる上に、中身まで大天使である。審神者はきゅん死に一歩手前である。
みっちゃんの呆れた視線が突き刺さっているが気にしない。気にしたら負けである。

「主殿の気持ちもわかりますが無理は禁物ですぞ。倒れてしまっては元も子もありませんしな」
「ですな」
「俺っちたちの錬度上げも忘れないでくれよ大将」
「ふふふふふ、おっけーおっけー、かっこよく徹夜きめなくちゃね!」
「主!」

このあと華麗に四徹目を決めたら、みっちゃんにめちゃくちゃ怒られた。







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