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遠距離ホリデー


『ハルさん、ハルさんっ、せっかくのホリデーじゃないですか!なぜ!南国に来ないんです?!』

スマホの向こうから煩い声がしているので、私は小さくため息をついた。声にまじって南国の波音が聞こえていた。

「わたし、忙しいので」

通話相手たるクロウリーの口癖『わたし、優しいので』を皮肉って言ってやるが、あまり効果はない。

「新人教員はやること多いんですよ」

ホグワーツの新任教員たる私は、最初のホリデーを学校に残ることに決めていた。何せ、まだまだ覚えることがたくさんあるのだ。

『ホグワーツ、ちょっと労働環境ブラックなんじゃありませんか?ナイトレイブンに今からでも遅くないですからくればいいんです!!驚きのホワイト環境な職場ですよ?わたし、優しいので』

でた。クロウリーの口癖。優しいというかなんというか。口がうまい。そして口癖と同じくらい、最近はナイトレイブンへ勧誘してくる。

「やですよ男子校なんて。可愛い女子生徒教えたいんです」
『・・・・・・・・か、かわいい男子生徒もいますよ!?』
「どっちもいた方がお得じゃないですか」
『ですが、これじゃあちっとも会えないじゃありませんか!わたしたち、恋人でしょう?』
「・・・・・・・・そりゃ、私だって会いたいけど、」

本音を言えば南国にだって飛んでいきたい。でもダメダメ。せっかくあこがれのホグワーツ職員の席を手に入れたのだ。

「せんせーい!ホグズミードいこうー」

約束していた生徒が声をかけてくる。今年も何人かの居残り組みがいるのだ。

「ごめん、クロウリー。私行かなきゃ」
『・・・・・・私以外の男とデートに行くんですかハルは』

声が拗ねたようになる。聞こえていたらしい。

「ごめんってば。それに女の子も一緒だからデートじゃないよ」
『男もいるんでしょう』
「クロウリーこそ南国のビーチで美人に鼻の下のばしてない?」
『当たり前です!』
「・・・・そっか、よかった」
『はい?え?ハル?あなたちょっと本気で浮気してるかもとか思ってたんですか?』
「じゃー、切るね!南国みやげよろしく!」

ちょっと思った。
だってクロウリーは昔からモテる人なのだ。変な仮面つけていても。多少言動が突拍子がなくったって。どうにも人を惹きつけてやまない。
歴史ある学校の学園長だし。魔法だって一流だ。あれこれと仕事を転々として、ようやく今年教職につけた私なんかとどうして付き合っているのかいまだにちょっとわからない。
マジカメをチェックすると、相変わらずのクロウリーに少し笑ってしまう。アロハに仮面っていつもの夏スタイルだ。
フォローしているのが学園の公式アカウントと私だけなのはいい加減どうにかならないのだろうか。

(・・・・浮気、してないなら良かった)

口だけかもしれ何けれど。
ちょっとだけほっとして、マジカメじゃなく個人メールで『バカンスの最後でいいから会いにきてくれたら、嬉しい』と素直な気持ちを送ってみた。文字化けメールが返ってきたから、たぶん、会いにきてくれるはずだ。あのアロハじゃあ、ホグズミードに行くには寒すぎるかもしれないけれど、恋人と一緒に三本の箒でバタービールを飲むくらいは、ホリデーの楽しみにしてもいいかな。





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