形式(ソルジェラ)
ソルジェラがデキていますそれはアジトで何をする訳でもなく、日がな一日をダラダラと過ごしていた時の事。
誰が見ているかもわからないテレビから、セレブの結婚式のニュースが流れていた。
純白の衣装を着た花嫁はとても幸せそうに輝いていて、私はふとお気に入りのナイフを磨く手を止めた。
「結婚式かぁ…」
私がポソリと言うと、ソファの端に座っていたソルベとジェラートがチラッとこちらをうかがった。
その視線を感じて、私はナイフを研ぐ手を止める。
「ねぇ、ソルベとジェラートは、結婚とか、考えてないの?」
ギシッと安いソファを鳴らして、私はソルベとジェラートの隣に座る。
「んー、ソルベは、どう?」
「ないな」
「じゃあ俺も」
ソルベの膝の上に乗ったまま、ジェラートがこちらを見てニコッと微笑む。
「えー、こんなにラブラブなのに?」
私はソルベの肩にコツンと頭を乗せる。
ソルベは特に気にしていないように、私とジェラートの体重を受け止めている。
「今のままで十分幸せだからなぁ」
「あまり形式に興味はない」
あまりにもスラスラ出てくる答えに、私はふーんと相槌を打つ。
「そっかぁ、そう言う愛もあるのね」
なるほどなぁと感心していると、ジェラートが私の鼻をツンとつついた。
そして小首を傾げて問いかける。
「みゆは、結婚に興味があるの?」
「ん?ないよ?」
私は床に座り直すと、またナイフを磨く作業に戻る。
「ただウェディングドレスは着てみたいかな」
私が何気なく言った言葉に、2人がピクンと反応する。
「みゆがウェディングドレスか…」
「何だか娘が嫁に行くみたいで面白くないな」
「同感」
そしてジトッ…と言う目で2人に見つめられる。
「二人の中で、私はいったいどう言うポジションなの…」
「隙があれば、養子縁組したいポジションかな」
「はじめて明かされる事実!」
私は笑いながらソファに肘をつく。
「子供にしては、歳を取り過ぎてるでしょ」
「それでもみゆと、身内になりたいんだ」
「色々世話を焼いてやりたい」
ソルベとジェラートが、うんうん、と頷きながら私の未来を語る。
その空気が何だかとても暖かくて、クスクスと私は笑う。
「今ももう、家族みたいなものじゃない」
ナイフを日に照らしながらそう言うと、ソルベとジェラートは顔を見合せて、最後にクスリと笑った。
「形式なんて、いらないんでしょ?」
私が二人のことが大好きなことに、変わりはないんだから。