単発夢 | ナノ



友人以上(トリッシュ)


がやがやと、普段より人混みの多いミラノのショッピングモールを、私達は手を繋ぎながら歩いていた。
「休日だとやっぱり人が多いね」
「みゆ、はぐれないようにね?」
繋いだ手をきゅっと握られ、私はフフッと微笑んだ。
今日はトリッシュとのウィンドウショッピングだ。
ブランド物からお手頃なものまでが色々置いてある。見ているだけで楽しいショッピングだ。
ふらふらと見て回っている内に、トリッシュがクイッと手を引いてきた。
「このショップ気になるから、見ていってもいい?」
「もちろん!」
トリッシュはオシャレさんだ。休日を使ってはこうして色んなショップを巡る。
それに同行できてる自分がとても誇らしい。
「どう?この服。似合うかしら」
「似合う似合う!トリッシュのために作られたんじゃないかってくらい!」
「それは言いすぎよ。でも、ありがとう」
それはお世辞じゃあなくて、トリッシュはどんなファッションだって似合う。
元がいいのだろう。少なくとも私はそう思う。
これは?逆にこれは?と色々な服を手に取る彼女に、私は満面の笑みで応える。
こうしてる隙にも、周りには一般人に扮したボディーガードが配置されている。
彼らはいつでも一緒だ。
しかし私達には、彼らさえ知らない秘密があった。
「うーーん、1回考え直したいから、お手洗いに行ってもいいかしら?」
「いいよ」
そう言って私達は一度離した手を握り、お手洗へ向かった。
男性ばかりのボディーガードは、入り口で待機だ。
二人っきりになった瞬間、トリッシュが徐ろに腕を組んできた。
お手洗いに誰もいないと確認すると、トリッシュは化粧を直す一環で、リップを塗った。
そして、つやつやと光る唇で、私を誘惑する。
「ねぇ、リップ塗りすぎちゃった。もらってくれない?」
そう、色っぽく問われる。
そんな風に言われて、抗える私でもなく、そっと目を閉じた。
そして、何秒後かに訪れる唇の感触を待ち構える。
ちゅ。
唇に温かい感触。
目を開けると長い睫毛と、端正な顔立ち。
「……今日は女性の護衛がいなくてよかったね」
キスした本人がいたずらっぽく笑う。
「私は、バレたっていいんだけどね」
「……もう」
私は、しょうがないって顔で彼女の手を取る。
「私だって…それでいいと思うわ」
示し合わせたようにお互いの視線が合う。
トリッシュは困ったように笑い、またきゅっと私の手を握った。
「まずはジョルノ達への報告が先ね」
「ふふ、反応が楽しみだわ」
そう言って、私達は化粧室を出る。
ボディーガードにはバレないように、手を繋ぐのは忘れずに。
さも何もなかったように振る舞う。
入った時と変わらない様子に、ボディーガードを欺く。
ボディーガードはいつも通り、さも個人に興味もないように、すっと持ち場につく。
私達はその日常の変わらなさにクスッと笑って、またきゅっと手を握る。
ああ、私達の関係を教えたら、ジョルノ達はどんな顔をするんだろうか。
そんな事にワクワクしながら、私達はつかの間のウィンドウショッピングを楽しんだ。
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