単発夢 | ナノ



甘やかしてよ(ミスタ)


「ぐす、ぐすん」
「なあ、もう言い加減泣きやめよ。それでも組織の女か?」
夜のローマを、黒塗りの高級車が颯爽と走り抜ける。
「それとこれとは別でしょ。ああもう男ってみんなこうなのかしら……」
私は今日、ローマで彼氏とディナーだった。楽しい食事を予想していたが、要件は別れ話だった。
静かな落ち着いた店内の雰囲気に負け、大声を出すこともはばかられて、私は静かに頷くしかなかった。
暫くそのまま食事を続けたが、ポタポタと一度流れだした涙が止まらなくなり、じゃあね、とだけ言い店を出ると、たまたま任務でローマに来ていたミスタから連絡があった。
そして今からネアポリスに帰るとの事だったので、ついでに乗せてもらって、現在に至る。
「もっと優しくしなさいよ」
「慰め方なんか知らねーんだよ…」
「泣かせてばかりだものね、あなたって」
ゆったりした座席に深く座りながら、化粧が崩れるのもいとわずハンカチで目元を拭う。
運転手と目があってしまったが、今日ばかりはこの顔でも許して欲しい。
車はキラキラと輝く街並みを横切りながら、真っ直ぐにアジトへ向かっている。
もう一ヶ月もしたらナターレだ。私は彼と過ごす気でいたので、街中のネオンを見るとチクチクと胸が痛む。
プレゼントは何がいいか毎日あんなに楽しく悩んでいたのにな…なんて思い返して、またポロッと涙が流れた。
「ああもう泣くなって!どうしたらいいのかわかんねーんだよ」
私の方を伺いながら、ミスタが慌てる。
「簡単よ。落ち込んでる女の子には優しくするのよ」
「今更お前相手に、女も何も無いだろ」
確かにミスタとも随分長い付き合いだ。それはもう家族のような。
「それとも、お前は俺に女として見て欲しいわけ?」
窓に肘をおきながら、ミスタがチラッとこちらを伺う。
「ずるい聞き方」
私は、クスッと一つ笑うと、ミスタとの距離を詰め、ぴったりとくっついた。
そしてぽすんとミスタの肩に頭をのせる。
その肩から、ピクンとミスタが反応したのが感じ取れた。
「そうよ、今日くらい女として見て、それで、うんと甘やかしてよ」
「甘やかす、ってよぉ〜……」
暫くミスタは、ああ、だの、うう、だのと唸りながら、私の肩に腕を回そうとしたり止めたりと、落ち着かない様子だった。
そして最終的にその手は、私の頭をくしゃくしゃと撫でる所に落ち着いた。
「甘やかすの下手くそか」
それは女というより子供をあやすような手つきで、私はつい吹き出してしまった。
「だから!わかんねーんだってそういうの!」
悪いか!と文句を言いながら、もっと強い力でぐしゃぐしゃと頭を撫でられる。
私はそれが心地よくて、クスクスと笑いながらミスタに身を委ねた。
未だにアジトにはつかない。外はやっぱりナターレ気分だし、私は先程フラれたばかりだけれど。
こうして、ぎこちないミスタの手に触れられているうちは、少しは気分が落ち着いた。
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -