単発夢 | ナノ



真っ先に浮かぶのは(ジョルノ)


「…あ、どうしよ」
小鳥がさえずる朝、私はベッドで横に寝そべる少年を見てはああ〜〜と深い溜息をついた。
私の隣にはすやすやと眠る中学生〜高校生程の少年。
その身には何も纏っおらず、また、私も下着さえ身に着けていない有様だった。
「やっちゃったかなぁ…」
隣の少年を見て染み染みと考える。
昨日は職場の近くで飲んで、そこから夜景を見に行った。
見に行ったのだが、そこからの記憶がない。
とても素敵な思いをしたような、していないような…。
ううん、どうもお酒のせいで記憶がおぼろげで、頭がまわらない。
私がそうして唸っていると、隣で寝ている少年が、ん…と声を出して寝返りをうった。
「ん、うう…もう朝ですか?」
特徴的な前髪のカールを乱しながら、ケロッとした様子で少年はそう言う。
「随分のんきね、状況わかってる?」
「酒の勢いに任せて、何処の馬の骨とも知らない女性と、一晩を共にした翌朝です」
のんきな割に私よりもよほどしっかりしているのだろう、少年はそれがどうしたんです?と言いたげにアクビをした。
「…その通りよ」
私は急に恥ずかしくなり、少し小さめの声でそれを肯定する。
改めて見るその少年は、法に触れてもいいとさえ思えるほどに整った顔をしていて、体格も実に私好みであった。
惜しいのは昨夜の記憶がないことだ。
「自己紹介でもしておきます?」
ふふんと笑いながら少年が私の髪を弄ぶ。
私はそれを振り払いながら、今日の仕事は遅刻だなあなんてその場にそぐわない事を考えた。
「いいわよ、どうせこれっきりなんだから」
そう言ってギシッとベッドから立ち上がる。全裸であったが、今更気にする必要も、きっとないのだろう。
「随分あっさりしているんですね」
「慣れているのよ、こういうこと。…お子様とは違ってね」
それは私の精一杯の強がりだった。昨夜溺れてしまった自分への虚勢だ。
「僕はまた来たいですけどね」
「都合のいい寝床にしないでくれる」
何です、バレましたか、と言って笑う少年は、歳に不釣合いな程に色っぽかった。

それで私達の関係は終わり、な、はずだった。
「何でまた来てるのよ…」
残業にかられて夜もどっぷり沈んだ頃、安いアパートのドアの前にはあの時の少年がうずくまっていた。
出血をしている。嫌な予感が、した。
「とりあえず入って」
私は素早くドアを開けると、周りを警戒しつつ少年を家の中へと連れ込んだ。
そのままベッドのある部屋へ通すと、お湯とタオルを大量に用意した。
どうやら腕をやられたらしい。しかし骨折はしていないようだ。これなら手当をして安静にしていればどうにかなるだろう。
「…随分、手馴れているんですね」
血を拭い止血をし包帯を巻く私を見て、少年はぼそりとそう言った。
「昔の彼がね、きっと君と同じ職種で…。だからかな。慣れたくなんか、ないんだけど」
そう言ってぐるぐると包帯を巻き終える。そして抱いていた疑問を少年にぶつける。
「何で私のところだったの?」
他にもきっとあるだろうに。詳しくはないが、アジトだったり、身を隠す施設だったりが。
「…真っ先に思いついたんです」
少年が下を向きながらぽそりと喋り出す。
「真っ先に浮かんだのが、あなたの顔だったんです」
迷惑をかけてすみませんと言う彼の唇を、私はゆっくりと塞いだ。
「…血の味がする」
「そりゃあ、そうでしょう」
彼は呆れたように笑った。そして改めてちゅっと触れるだけのキスをされる。
「いいよ。ここを都合のいい場所にして。どうやら私、君の事がタイプみたい」
そうして笑う私に、ばかですねぇと彼は笑った。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -