みんなにキスを | ナノ



ドライブ(ギアッチョ)


久しぶりの休日、私は任務で使う化粧品が少なくなっていることを気にしていた。
化粧品とは消耗品だ。いくら暇なチームと言えど、使えばなくなる。
買いに行こう買いに行こうとは思っていたのだが、任務で使うにはそれなりの品質のものがいい。
そうなると最寄りのショップよりも隣町に出たい所なのだが…。
そこで私はぐるっとアジトのリビングを見渡す。
そこにはピコピコと何やらゲームに勤しんでいる巻き髪の人物が一人。
私はゲームを邪魔しないように、又は逆上されないようにそっとその人物に近付く。
「…ねぇギアッチョ。買い物に行くから、車で送ってくれない?」
そう言うとギアッチョはゲーム画面から目を離さないまま、ハンッと鼻で笑った。
「何で俺なんだよ、メローネにでも頼めよ」
それは最もな意見だった。メローネならバイクだし送っていくだけなら適任だ。しかし今はギアッチョに頼まなければならない理由があった。
「メローネは今スタンドの育成に忙しいらしいの」
そう、メローネは今朝、息を荒げて帰ってきたかと思うと、最高の女に出会えた!と言って、それからずっと個室に篭もりきり、スタンドの育成に夢中なのだ。
ああなったメローネを外に釣れ出すのは不可能だし、チームのことを思ってもスタンドの育成は必須だ。
それに納得した様子のギアッチョは、はああ〜〜〜〜と長い溜息をつくと頭をボリボリとかく。
「めんどくせぇ…」
そう言ってぐぐっと顔を上に向ける。
あとひと押しだ。
「それに、私はギアッチョとドライブしたい気分なの」
「……へいへい」
別に私に絆されたわけじゃあない。ギアッチョはこれでいて優しいのだ。
ギアッチョはバチン!と乱暴にゲームの電源を切ると、むくっと立ち上がり「さっさと用意しろ」と私に言った。
「2分で準備する!」
ギアッチョの気が長くないことは理解している。私は急いで自室に戻ると最低限の化粧をした後、カバンを持ってリビングに戻る。
「んじゃ、行くか」
ギアッチョは車のキーを手で弄びながらさっさと玄関へ行ってしまう。
私はその背中をまたも急いで追いかけた。

「隣の街。通り沿いの大きなとこ」
「あーあそこか。わぁったよ」
私が助手席でナビをしながら、平日だからか比較的すいている車道を走る。
電車ならもっと時間がかかる所を、やはり車は速い、10分たらずで目的地についてしまった。
「ありがとうギアッチョ」
「まだ車停めてねーんだから、勝手に出んなよ」
そう言ってそこそこ車の止まっている駐車場に入ると、なれた様子で駐車のハンドルをきる。
後ろを確認しハンドルをきるその姿はいつもとひと味違って見えて、私はドキンと胸が鳴るのを感じた。
有り体に言って、かっこいい。
ストンと車が止まった頃を見極めて、私はギアッチョの名前を呼んだ。
「ねえギアッチョ」
「あ?」
ちゅっ
ギアッチョがこちらを向いた瞬間に、その唇にキスをする。
「!?」
一瞬目を丸くしたギアッチョだったが、次の瞬間私を遠慮もなく突き飛ばした。
「こんのキス魔が…!まだエンジンついてんだぞ!」
「ごめん!あんまりにかっこよかったものだからつい…」
そう言って謝罪する私を、ギアッチョは物凄い眼光で睨む。
しかし、その顔は茹でダコのように真っ赤であった。
「意味わかんねー事言ってんじゃねーよ!くそっ」
エンジンを切ると、ギアッチョは乱暴に私の髪を掴み、そちらに引き寄せた。
そして、歯がガチン!と当たるような乱暴はキスをされる。
「いっ…」
私が顔をしかめると、ギアッチョは舌で私の歯をこじ開けると、舌と舌を絡ませきた。
突然の予想外の行動に私が目を見開くと、至近距離にあるギアッチョの目がニイっと笑った。
ガリッ!
「ん!?」
何の警戒もしていなかった舌を、歯で思いっきり噛まれた。
私が反射的に体を離そうとすると、ギアッチョは私の後頭部を掴みより深いキスを仕掛けてきた。
「ん、む〜〜〜!!!」
ジンジンと痛む舌を執拗に舐められ、痛いやら心地良いやらで私は涙目になりながらギアッチョの体をドンドンと強く叩いた。
暫くした後に開放されると、私はぐったりシートにもたれ、ギアッチョはそんな私を満足そうな顔で見ていた。
「これでちょっとは反省しろ」
「ひゃ、ひゃい……」
そう言ってバン!と乱暴に車から出る。
すぐに後を追い駆けたい所なのだが、先程の余韻が残っている私は、暫くそこから動けずにいた。
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