みんなにキスを | ナノ



マンマ(プロシュート)


「おいちとせ、朝だ起きろ」
そう言って、俺はアジトの一室を乱暴に足で蹴り飛ばす。
蹴られた扉に鍵などかかっておらず、それはあっさりと大きな音を立てて開いた。
「んん…」
外でさえずっていた小鳥も驚き飛び立つ程の騒音にも関わらず、部屋の主は一瞬眉間にシワを寄せただけで、未だに夢の中にいるようだった。
俺はそれにも慣れた調子でズカズカと部屋に入ると、ギッとそいつの眠るベッドに腰掛ける。
しかしいつ見ても驚くほどに安らかに眠っている。スウスウと規則的に聞こえる寝息にイラッとして、俺はその鼻をつまんでやる。
「ん!?、んんん〜〜〜〜!!!!!」
すると苦しくなったのかベッドの上でちとせがバタバタと暴れだす。
パッと手を離してやると、ぷはー!と大きく息を吸い、目をぱちくりとさせるちとせと目があった。
「プロシュート?ん、あれ?もう朝…?」
目をぱちぱちさせたまま、ちとせは不思議そうに俺の顔と時計を見る。
「もうとっくに朝だ。今日も任務があるんだろう?」
そう言ってぼさぼさの髪を手で撫で付けてやる。
「って化粧も落とさねーで寝たのかよ」
そこで若干崩れた目元に気付き、そう言えば昨日も遅くまで任務だったなと思い返す。
きっと化粧を落とす余力もなくベッドに入ったのだろう。
「ひでー顔」
そう言って手を目元へ移動させ、よれたアイラインをぐっと擦る。
すると一転してちとせはむくれたような表情になった。
「放っておいてよぉ…」
緩い力で手を退かされ、ちとせはふわああ〜〜〜と大きなあくびをした。
「いいじゃない、あなたの前でくらいだらしのない女でも」
「…いい口説き文句だな」
さらりと言われたその言葉に、一瞬言葉が詰まる。そうだ、こいつはそんな女だった。
はあ、と一つ息を吐いて、俺は開け放たれたままの扉に向かう。
「ちゃんと顔洗ってこいよ、朝食できてるから」
「ありがとうマンマ」
「誰がマンマだ。このマンモーニが」
気怠そうにベッドから出るちとせを確認して、俺は一足先に朝食の準備がしてあるキッチンへ向かった。
さあ、今日もどうしようもない俺達の1日が始まる。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -