みんなにキスを | ナノ



※きっと殺してね(メローネ)


「ああ!もう出てしまいそうだ!」
パンパンと肌がぶつかる音と中年男性の野太いの声が部屋に響く。
私は露骨にあんあんと喘ぎながら、どこか他人事のように必死に腰を振る男を見ていた。
そんなに女に飢えていたのか、まるで猿のようだ。
そこそこの地位の男だった筈だがその面影なんてない。
思わず笑いそうになって、私は恥ずかしがるふりをして口元を手で隠した。
「出すっ!出すぞ!ぅっ」
グッと腰を掴む手の力が強まったのと、その男の頭が吹き飛ぶのはほぼ同時だった。
「中出しはだーめ」
そう言って銃を構えたメローネは冷めた目でビクビクと体を痙攣させる男を見つめた。
「危ない。私にも当たるところだったわ」
「俺がそんなヘマする筈ないだろ?」
どさっと私の上に倒れて来た男を汚物でも触るかのように横によけると、メローネはその死体を見つめて皮肉めいた笑みを浮かべた。
「こいつ必死すぎだろ、俺が入ってきても全く気付かず腰振ってたぜ」
「その隙を狙って、わざわざ股を開いているんじゃない」
女の体は便利だ。
情報を聞き出す隙も殺しのチャンスも作る事ができる。
仕事上これ以上神様に感謝する事はない。
私はむくりと上半身を起こし、ふぅ、と一つ息をついた。
そこで下半身の、身に覚えがある不快感にやっと気付く。
「うわぁ…この人撃たれた瞬間にイっちゃったみたい」
そう言って自分の秘部を広げて見せると、中からどろっとした白い液体が溢れた。
それを見たメローネは酷く表情を歪ませた。
「うえ、幸せな野郎だな」
歪んだ顔はそのままに、メローネはギシリとベッドを鳴らし私に覆いかぶさった。
「俺のモノで掻き出してやろうか?」
「…横に頭をぶち抜かれた死体があるのに?」
凄いセンスね、尊敬する。と冷めた目で見つめると、メローネはニィッと笑った。
「ありがとう、褒めてもらえて嬉しいよ」
「褒めてないわよ」
そう言ってメローネを押しのけてシャワーの準備をはじめる。
ターゲットの匂いをできるだけ消すために、毎回持参のお風呂セットを用意してある。
ゴソゴソとカバンをあさっていると、メローネがベッドで足をぷらぷらとさせながらこちらに声をかけてきた。
「本当に手伝いはいらない?」
「手伝いをしたいと言ってくれるなら、死体の片付けをお願いしたいわ」
私はそう言い残して、メローネの顔を見ずにお風呂セットを片手にシャワー室に入った。


シャワーを浴びて部屋に戻っても、メローネはベッドに突っ伏して死体の片付けなどしてくれてはいなかった。
それは特に問題ではないのだが、うつ伏せで微動だにしないメローネに違和感を覚えてそっとメローネに近付く。
「メローネ、何してるの」
「んー…」
私の問いかけに、メローネは気のない返事をする。
状況がよくわからず髪をバスタオルで拭きながら突っ立っていると、メローネがごろんと体の向きを変えて私を見つめてきた。
「こいつは最後の瞬間まで幸せだったのかな?」
質問の意図がわからず私は黙りこくる。
「そう思うと、胸糞悪くてさ。ちとせといいことして、最高の瞬間に死んだんだろ」
言いながら足で死体を1蹴りする。
「羨ましいこった」
何を今更そんな事を思ったのかはわからないが、今日のメローネはセンチメンタルなようだった。
私はバスローブを羽織ってメローネの隣にキシッと座ると、できるだけ優しくメローネの頭を撫でた。
メローネは子供扱いはやめろ、と言いながら満更でもなさそうにそれを受け入れてた。
「俺もそうして死にたいな」
自分を撫でる私の手を掴むと、メローネはそれに指を絡ませた。
私はメローネの言葉に困って眉を八の字に下げる。
「私が虚しすぎるじゃない」
仕事柄いつ死ぬかなんてわからない私達だけれど、その終止符を打つのが仲間同士だなんてとても悲しい事に思えた。
私は空いている方の手で、輪郭に沿ってメローネの綺麗な髪を梳いた。
「死ぬまでに一回くらい付き合ってあげるから、あんまり悲しい事は言わないでほしいわ」
「…ちとせは俺の事を愛しているんだな」
「ええ、大好きよ」
そう言ってメローネの頭にキスをすると、自嘲気味にメローネは笑った。
そして、ん、と催促されて、唇にちゅ、と触れるだけのキスをする。
「じゃあ今度お願いするぜ」
「まぁ、そのうちね」
それはいつになるのだろう。
少なくともしばらくはないんだろうな、と思いながら、私は帰り支度を始めようか、と立ち上がった。
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