ジョルノ様は神様です! | ナノ



楽しいディナーとご褒美


アジトのあるリストランテの閉店後、そこを貸し切ってメンバー全員揃ってのディナーが行われた。
大きなテーブルにいつもより少し豪華な食事が用意され、メンバーがそれを囲む。
「では、ジョルノ様のチーム入りを祝って〜!」
椅子から立ち上がり高らかにグラスを掲げ、私はかんぱーい!と大きく声を出す。
しかしそれに応えてくれたのはブチャラティとナランチャだけだった。
「はじめからテンション高すぎだろ」
ムッとする私の隣で、ミスタがパスタをつつきながら言った。
「こんなのただの飯だ飯」
アバッキオも相変わらずの調子で、さっそくパクパクとピザを頬張っていた。
「もう!もっと歓迎ムードになってよ!ジョルノ様がチームに入ってくれたんだから!それはとても嬉しい事なんだから〜」
怒っていた筈が、どんどん声のトーンがデレデレとだらしないものになっていったのが自分でもわかった。
「お前が嬉しいだけじゃねーか…」
「ベタ惚れですね…あれだけ冷たくされてめげないのはある意味感心します」
ミスタとフーゴのそんな声を聞きながら、私はストンと椅子に座った。
この時のために大急ぎで簡単とは言えない任務をこなしてきたのだ、嬉しくない筈がない。
隣に座るジョルノ様をチラッと見ると、何を考えているのか読めない表情でカップに注がれた紅茶を飲んでいた。
それがたまらなく美しくて、任務で疲れた体が癒されていくのを感じた。
「ジョルノ様…素敵です…」
頭の先から指先まで洗練されていてそれに見とれていると、ジョルノ様の取り皿にまだ何も乗っていない事に気がついた。
「ジョルノ様!サラダはお好きですか?」
「…?ええ、嫌いではないですが」
「取り分けますね!」
ニコリと笑ってサラダを取り分けると、ジョルノ様は小さくありがとうございます、と言ってそれを受け取った。
ジョルノ様の手をお皿越しに感じてしまった!
私はまたはああんと蕩けていると、ジョルノ様が怪訝な目でこちらを見た。
「あなたも僕ばかり見ずに、何か食べたらどうです?あなたが言い出したディナーでしょう」
見てたのバレてた!とびっくりしていると、フーゴが当たり前でしょう、とため息をついた。
そう言われてしまってはそれ以上見つめることも出来ず、私もジョルノ様と同じサラダを皿にとった。
タコやサーモンの魚介サラダ。
私が好きでメニューに入れてもらったが、ジョルノ様もパクパクと食べてくれているようで安心した。
あーと口に頬張ろうとして、あ!と私はいい事を思いついた。
「ジョルノ様!」
私の一層明るい声に、ジョルノ様は鬱陶しそうにこちらを見た。
「今度は何です?」
「あの、ジョルノ様、私、お願いがあるのですが」
もじもじと指をこすり合わせると、ジョルノ様が早く言えと目で訴える。
「あの…食べさせて、下さいませんか?」
隣でワインを飲んでいたミスタはブーッ!とそれを吹き出した。
「ミスタ汚い!」
「てめーが変なこと言い出すからだろうが!!」
ガンッ!と机を大きく叩いて、ミスタが私に抗議する。
「だって!いい機会だと思って」
「何がいい機会だ!本当お前は突拍子もない奴だな!」
私とミスタがああだこうだと言い合いをしていると、ジョルノ様がカチャン…とフォークを置いた。
そしておもむろにピザに手を伸ばす。
「…何を言い出すかと思えば」
その声にミスタから視線をジョルノ様に移すと、ジョルノ様がジッとこちらを見ていた。
真っ直ぐこちらを見つめるジョルノ様にキュンキュンと心臓が切なくなるのを感じていると、ジョルノ様はピザを一口サイズにちぎってこちらに差し出してきた。
まさか!まさか本当にあーんしてくれるなんて…しかも手で!
言い出したはいいが戸惑ってドキドキとジョルノ様の目を見つめていると、ジョルノ様はフッと笑顔を見せ、手をパッと開いて見せた。
ポトリ
重力のまま、一口サイズのピザが床に落ちる。
「ジョルノ様…?」
「どうしたんです?食べてください」
氷のように冷たく綺麗な顔で、ジョルノ様は笑ってそう言った。
「僕の足元に落ちたパン、残さず這いつくばって食べてください」
「おいジョルノてめぇ!新人がいきがってんじゃねぇぞ!」
ミスタがガタッと立ち上がりジョルノ様に勢いよく噛み付いた。
それをジョルノ様は涼しい顔で受け流す。
「ぁ…」
そんな声は至近距離にいる筈の私の耳には届かず、私は床に落ちたピザを見て、頭がクラクラする感覚に陥っていた。
ジョルノ様が私に食べろと言って床に落としたピザ。
それがとても、甘美に感じられ、気付けば体が動いていた。
「てめーはいけすかねぇ奴だと思っていたが、俺だってチームの新人だからって…っておいきょうこ!何食おうとしてんだ!やめろ!」
「ジョルノ様が私にこんな仕打ち…幸せすぎますぅ…!」
胸がキュンキュンと高鳴るのが止められない。
私は床に膝を付け、恍惚とした表情でピザに顔を近付けていく。
「ダメだ!やめろ!人間としてそれは超えちゃあいけないラインだ!戻ってこい!」
「止めないで!ジョルノ様が私にくれたはじめてのものなのよー!」
ミスタに肩をガシッと掴まれ、それを阻止される。
それでもグググと粘っていると、ブチャラティが落ちたピザをヒョイと拾いそのままゴミ箱に捨ててしまった。
「あぁ…もったいない…」
「お前何考えてんだ…」
ミスタが私を掴む手を緩め、ふらふらと自分の椅子に戻った。
「ジョルノもジョルノだ…最近の学生は皆こうなのか…?」
はぁ、とため息をついて、ミスタは落ち着くためにグイっとワインを一気に飲んだ。
「すみません、少しふざけすぎましたね。食べ物を粗末にするものじゃあない…」
ジョルノ様はそう言ったが、それは私と言うよりも、ブチャラティに向かって言ったのではないかと思う。
残念だと思いながらも、まだ高鳴る胸の鼓動に浸りながら、私も服を軽く叩いて椅子に座り直した。
ふう、と落ち着くために一息つくと、ジョルノ様に肩をトントン、と叩かれた。
何かと思い振り向くと、口にズイっとピザを押し込まれた。
「頑張ってくれたご褒美です」
むぐっと口いっぱいにピザを含む私を見て、ジョルノ様は小さくフッと笑った。
「…っジョルノ様あああああああ!!!!!愛してます!!!!」
「調子に乗らないで下さい」
そのまま抱きつこうとしたが、片手で簡単に制されてしまった。
それでも楽しくて、嬉しくて、私はニヤニヤとにやける顔の筋肉を制御することはできなかった。
「それでいいのか…」
「俺、きょうこを見る目が変わったかも…」
ジョルノ様の事しか考えられない今の私には、フーゴとナランチャのぼやきは聞こえないのであった。
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