ジョルノ様は神様です! | ナノ



おやすみの挨拶


時刻も0時を過ぎ、アジトにしているリストランテも店じまいをした頃。
そろそろ今日もお開きかというタイミングで、その来客者達はやってきた。
「よう」
チリンチリンというドアの開閉音と、少しドスのきいた男性の声。その後にぞろぞろと数名の男性が無遠慮に扉をくぐる。
テーブルに集まっていた護衛のメンバーは、ジッとその様子を伺う。
この時刻にこの人数。それにこのオーラ。只者ではないことは明らかで、きっと同業者だと、この場の誰もが確信していた。
この場にいるのはブチャラティ以外のメンバーだ。特にアバッキオとミスタは敵意をむき出しだった。
私はそんな空気の中、アジトに訪れてこちらを値踏みするような視線を送る客人たちを見回した。
坊主頭のお兄さん、おさげのお兄さんにくるくるパーマのお兄さん。そして。
「あ!!あなたは!」
私はその中から懐かしい顔を見つける。
その人物は私が声を上げると、少し驚いた様子でこちらを見て、ああ!と何か合点がいったような声を出した。
「カフェで会った美人じゃあないか!嬉しいなあ、またこうして会えると思っていたんだ」
その人はそう言うと数人いる男性を押し退けると、私の前にぐいっと出てきた。
その様子にミスタやフーゴは眉間にシワを寄せていたけれど、私としては奇跡的な再会を喜ぶほうが先だった。
「私もまた会えて嬉しいわ!でもどうしてこんな時間に?」
私がそう聞くと、お兄さんは あーと言いながら他の男性陣に目配せをした。
その様子に場が一瞬ピリッとする。
そんな空気をさして気にしていないかのように、お兄さんはまた私に視線を向ける。
「そっちのリーダーに聞いてないかい?合同任務。つまり俺達もギャングで、暗殺チームをやってるんだ」
暗殺チーム。噂には聞いていたが本当に存在したのか。
私がぽけーっとそんな事を考えていると、お兄さんは何が面白いのかクツクツと笑った。
それに私がむっとした顔をすると、お兄さんはごめんごめんと口元を押さえた。それが何故か妙に色っぽいなと感じる。
「君、名前は?」
「きょうこ」
「そう、きょうこ。いい名前だ。君、目の前に同じ組織とはいえ暗殺チームがいるってのに、何も動じないんだね」
お仲間はさっきから俺に殺意を向けっぱなしだってのにさ、と、やはりお兄さんはクツクツと笑う。
しかしお兄さんも変なことを聞く。だってお兄さんとはもう会っているじゃあないか。
「私にとってお兄さんは、暗殺チームより先にカフェでご一緒したお兄さんよ。あれがとても楽しい思い出だから、今も楽しいの」
そう言って笑うと、お兄さんはお腹を抱えて笑い出した。
「ベネ!ディ・モールト・ベネだ!気に入った!あんた最高に狂ってて愛しいよ」
そう言って私の頬にキスをした。
ちゅっと言うリップ音と共に、香水だろうか?お兄さんの甘い匂いに包まれて、少し胸がドキッとした。
その距離の近さにメンバーがガタッと席を立った時、暗殺チームのメンバーの一人がグイッと金髪のお兄さんの髪の毛を引っ張った。
「いてててて!やめろよギアッチョ!俺のキューティクルが死滅するだろ!」
「うるせえ!いつまで無駄話してんだよ、馴れ合いなんざごめんだからな」
そう言ってパーマ頭のお兄さんは、お兄さんから私を引き剥がす。後ろに構えている皆もジッと私を見据えていいる。
「おいおいそんなマジになるなよ。合同任務、なんだぜ?もっと和気藹々というこうじゃあないか」
またピリッとした空気。私はどうしたらいいかわからず、ヘラヘラと笑う。
「ごめんなさい」
そう言ってのどから出た言葉が、またお兄さんを怒らせた。
「チッ!」
そして私の前にズイッと出てきた。
「こんなガキクソ女が、この任務で役に立つとは思えねーけどな」
フンッと鼻を鳴らしてふんぞり断つお兄さんに、私は困惑した顔を向ける。
「そもそも、任務の内容を知らないのだけど……」
「それは俺たちから説明しよう」
張り詰めた空気を斬るように 扉がガチャっと開くと、そこにはブチャラティとシマシマ模様の服を着た男性が立っていた。
「ブチャラティ!」
全てに対して後手に回っていたチームのメンバーが、やっとか、と言う顔でブチャラティを見る。
それに気付いたブチャラティは苦笑すると、すまない、と一言謝った。
「何となくは聞いているか?今回はここにいる暗殺チームとの合同任務だ。言うのが遅れてすまない、立て込んでいてな」
「こちらも、順序が逆になったことを詫びよう」
そう言ってシマシマ模様のお兄さんが軽く頭を下げると、暗殺チームのメンバーが少しざわついた。
「リーダー!こんな奴らに頭なんか下げんなよ!」
くるくるパーマのお兄さんーーギアッチョと呼ばれていた。がそう叫ぶと、リーダーと呼ばれたシマシマ模様の男性は、ゴツン!と一つギアッチョさんの頭を叩いた。
「俺達の組織は仲良し集団じゃあない。だが、敵でもない。少なくとも今は利害が一致した協力者だ。喧嘩腰でどうする」
「チッ…」
言い終わるが早いか、ギアッチョさんは近くの椅子にバフンッと座ると、で?とリーダーさんに目線を向けた。
「護衛と暗殺が組むなんざ、どんな任務なんだ?」
「ああ、それは存外わかりやすいものだ」
ざっと二人のリーダーから説明された任務の内容は、確かにわかりやすいものだった。
「虐殺、かあ」
私達が組織の裏切り者の護衛につく。そしてそのアジトに入り込み、暗殺チームを誘導した後に関係者諸共全員を殺す。
とてもシンプルな作戦だ。これも相手がスタンド使いではない、ただの人間に対してだから使えるような手だろう。
「いやぁ、ギャングに身を置くものとしても、気持ちのいいものじゃないよね」
作戦の内容とともに教えてもらった暗殺チームのメンバーの名前…おそらくはコードネームだろうが、そのうちの金髪のお兄さんーーメローネさんが、私の独り言を聞いて笑った。
「確かに君には、殺しは似合わないな」
「ん?もう、またまたぁ〜、これでも結構いける口なんですよ?」
そう言って二人でニシシと笑う。何だろうか、この人とは気が合う気がする。
「任務の執行は明後日だ。そこの二人のようにとは言わないが、明日はミーティングと親睦を兼ねて皆で食事だ。一応覚えておけ。任務のあるものは夜までには終わらせる事」
リーダーのリゾットさんがそう言うと、暗殺チームの皆さんはあからさまに嫌な顔をしたが、撤収!の一言でぞろぞろとリストランテから出て行った。
「じゃあ、きょうこ、また明日」
「ええ、メローネさん。おやすみなさい」
「フフ、ああ、おやすみだ」
メローネさんはそう言って、今度は私の額にキスをした。そして小走りに仲間のもとへと駆けて行く。
おやすみの挨拶だろうか…。
私がぼーっと、出入り口から小さくなっていく暗殺チームの皆を眺めていると、ふとジョルノ様に肩を叩かれた。
「いつまでもそんな所にいると風邪をひきますよ」
「あ、はい!すみません!」
私がドアを閉めようとすると、ブチャラティにそれを静止された。
「俺達も今日はもうお開きだ。明日に備えて各自さっさと寝るように」
それと、とブチャラティは私の額に手をやる。
「親睦を深めるとは言ったが、必要以上に仲良くならないように、な」
そして服の袖でゴシゴシと額を擦られる。
「いたいいたい」
そしてそのままドアを開けて、ブチャラティは帰っていった。
それに続いて、他のメンバーもアクビをしながらドアから出て行く。
「では、僕も帰りますね」
「はい!今日もお疲れ様でした」
しかしそう挨拶したジョルノ様は、何か言いたそうな顔でその場に立ちすくんでいた。
「ジョルノさ、ま」
私が声をかけようとすると、ふわっと花の香りに包まれ、額にちゅっとキスをされた。
「!」
「…おやすみなさい」
そう言ってジョルノ様は夜のネアポリスに消えていった。
…おやすみの挨拶だろうか?
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -