ジョルノ様は神様です! | ナノ



舐めれば治る


今日はちょっとした抗争があった。
しかし相手はスタンド能力を持たない近隣のギャングの末端。
上層部が動かなくとも、私達のチームと駆けつけた数チームでカタが付いた。
「…」
最後の一人を片付けたタイミングで、他チームがわらわらと帰っていく。
「あ、お疲れ様です!」
馬乗りになっていた姿勢のまま、私は去って行く皆の背中に挨拶をする。
随分と色んなチームが駆けつけてくれた。5チーム程だろうか?
私達の管轄にこんなにギャングが集まるのは私がチームに入ってから初めてだ。
何だか妙な高揚感の中、ふと記憶にある後ろ姿を見た気がしたが、すぐに雑踏に紛れて見えなくなってしまった。
綺麗な金髪に露出の多い黒い服…確かに見覚えがあるが、まあいい。同じ組織ならまた会う機会もあるだろう。
私は人間だったものから離れると、キョロキョロとチームのメンバーを探した。
すると少し離れた位置に、ミスタとフーゴが座り込んでいるのを見つけた。
「うわ、また派手にやられたわね」
近付いて二人を覗き込むと、ミスタの綺麗に割れた腹筋にざっくりと深い切り傷ができていた。
ダラダラと血を流しながら、ミスタは照れくさそうに「まあな」と笑った。何がまあな、なのだろうか。心配するこっちの身にもなって欲しい。
「ホッチキスで何とかなりますよ」
私が自分の上着でミスタの血を拭っていると、フーゴが懐からおもむろにホッチキスを出した。
「俺それ痛いからあんま好きじゃねーんだよなぁ」
そう言いながらも。ミスタはホッチキスがとめやすいようにぐいっと服をたくし上げる。
「あ、待って、傷ならもしかすると…」
私の言葉をかき消すようにバチンッ!とホッチキスがうたれると、しゃがみ込む私達の上にふと影がさした。
「あなた達は今までどんな大雑把な処置をしてきたんです…」
「ジョルノ様!」
見上げると、そこには戦闘でかいたであろう汗を拭うジョルノ様が立っていた。
「ギャングなので」
「理由になっていませんよ」
ジョルノ様の姿を一瞬確認して、またミスタの腹にホッチキスの針を刺そうとしているフーゴの手を、ジョルノ様がそっと制する。
「傷口を見せて下さい。直します」
そう言ってジョルノ様はスタンドを発現させた。
「!」
近頃ジョルノ様が仲間にスタンドを見せるようになった
心を開いてくれたということなのだろうか。そう思うと少し嬉しい。
私のそんな心の声が顔に出ていたのだろうか、私を見たミスタが怪訝そうな顔をした。
「きょうこ、俺が痛がってんのがそんなに面白いか?」
「ふふ、違う違う!感慨深いなぁって」
ミスタは、こいつは何を言っているんだ?と言う目で私を見たが、すぐにいでででで!とGEの痛みに顔を歪めた。
私はその様子をうっとりと見つめる。
「わかるよぉ、ミスタ。痛いのが最高に気持ちいいよね」
「…………?…今背筋がゾッとしたぞ」
ミスタは心底わからないという顔をするが、そんなミスタを私はニコニコと見つめる。
うんうんと頷きながら、私は過去にジョルノ様に治療を施してもらった時の事を思い出す。
「あっ、もちろんジョルノ様からの痛み限定ですよ」
「全く嬉しくありません」
ジョルノ様は顔も上げずに返事をする。
しかしチームに加入した当時の刺々しさはなく、ミスタの治療も、痛くなり過ぎないよう調節がなされている。ように感じる。
何だかとてもハッピーな気持ちに浸っていると、チクっと指先が痛む事に気付いた。
「あ…」
それは怪我と言うにはあまりに些細な切り傷だった。
しかしそう言う傷は、気付いてから妙に痛みを感じるのは何故だろう。
私がムッと指を見つめていると、それに気付いたジョルノ様が不意に声をかけてくれた。
「何か問題でもありましたか?」
「あっいえ!指に怪我をして…でも、こんなの舐めてたら治りますから!」
私がヒラヒラと手を振り笑うと、ジョルノ様はちらりとだけこちらを見ると、スッと手を差し出してきた。
「…?」
よく理解もしないままその手のひらに自分の手を重ねると、そのまま手首を捕まれぐいっと少し強い力で引き寄せられた。
「わっ…」
倒れ込みそうなのを抑えて中腰になると、ジョルノ様がそのまま私の指を口に含んだ。
「っ…!!??」
ぬるりとした舌の感触に、ゾクッと全身が震える。
溢れた血を丁寧に、優しく吸い、傷に触れないギリギリのラインを舌の先端で舐められる。
最後にちゅっと音をさせ指を離されると、悪戯っ子のようなジョルノ様と目があった。
「これで治りますね」
そしてそのまま何食わぬ顔でミスタの治療を再開する。
そうしてそこには鳩が豆鉄砲を食ったような顔の人間が3人取り残され、その絶妙な空気はミスタの治療が終わるまで続いたのであった。
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