ジョルノ様は神様です! | ナノ



好きだということ


どっぷりと日も沈んだ頃、僕ときょうこは何を喋るわけなく静かに家で過ごしていた。
今日はきょうこと過ごす最後の日だ。
持っていたマグカップをコトンと置き、ベッドで授業のノートを写しているきょうこの方を向く。
少し眠たそうにしている彼女の頬は、もうすっかり腫れも引いていた。
「…」
昼に彼女の友人が授業のノートを持ってきてくれた頃は、まだ少し赤みがあったが、痕にはならなかったようで安心した。
…自分がモテる自覚はある。それが原因で女同士がいざこざを起こすのも、別にこれが初めてと言うわけではなかった。
しかしその標的がきょうこだと話は別だ。
僕がこんなにもきょうこを気にかけ、心配をしてしまうと言うこと、もうそろそろ僕も親のせいなどではなく、腹をくくる時が来たのかもしれない。
「きょうこ」
僕がベッドの横に立ち声をかけると、きょうこは眠気眼をこちらに向け、ふにゃっと笑い、布団を少し捲り僕を招き入れた。
「今日はすんなりベッドに入れてくれるんですね」
ここ数日の攻防を思い出し、僕は自然と口元がほころんだ。
「…最後の夜ですしね」
眠そうな声で、しかしハッキリとした意思で彼女がそう言う。
僕がきょうこの方を向いて寝転ぶと、きょうこも広げていたノート類をベッドの端に追いやって布団にもぞもぞと入った。
「ジョルノ様、私、大丈夫ですから」
そして上目遣いで、柔らかく僕に語りかける。
「もし前回と同じヘマをしたとしても、それはジョルノ様のせいではないですから」
「わかってはいます」
わかっている。きょうこがそんなやわではない事、そして今僕がきょうこを困らせていることも。
「…僕の我儘を許してくれてありがとうございます」
すっと彼女の頬に手を伸ばす。
きょうこは猫のようにそれに嬉しそうに頬ずりをする。
胸にじわじわと、隠し切れない感情が溢れてくる。
「これで身内の悪事がチャラになるとは思いません。女々しいですが、しばらくはどうしてもあなたを気にしてしまうと思います」
「…ジョルノ様は、どうしてそんなに私によくしてくれるんですか?」
きょうこの手が、頬に触れていた僕の手に重なる。
「もしこれが、私ではなくフーゴやミスタや、他のメンバーでも同じ対応をしたんですか?」
「…それは…」
それはあなたが大事だから。
そんな考えが頭をかすって、僕は妙に穏やかな心境だった。
きょうこが攫われた時、自分の一部がなくなってしまったような酷い焦燥感に襲われた。
これをただのチームメイトだから、で片付けるのはあまりに不自然だ。
僕はどうやら、この、変態のくせに健気で、僕の一声に一喜一憂する、表情がコロコロ変わって、決まって最後には笑顔になる。
そんなきょうこに、特別な感情を持っているらしい。
「ジョルノ様どうかしましたか?もしかして夕飯でお腹を壊しましたか…?」
心配そうなきょうこが僕をジッと見つめる
今はそれがとてもむず痒い。
「いえ…今日が最後かと思いと、少し考える節があっただけですよ」
「…私だって」
きょうこがポソリと呟く。
「私だってジョルノ様と対等な存在なら、ずっとこの生活が続けばいいだなんて思いますよ」
きょうこがふっと瞼を伏せる。
「確かに私はジョルノ様が好きです。でも、それ以上に私はギャングなんです。命令があれば、私はきっとジョルノ様を殺します。そんな人生なんですよ、私の歩んでる道は。
ギャングこそが私の居場所で、私の生き様なんです」
普段の天真爛漫さに忘れがちだが、確かに彼女はギャングだ。僕よりずっと先輩の。きっともっと酷い任務もこなすようなギャングなのだ。
「なのでそれを否定されると、少し…いいえ、だいぶ、プライドがズタズタになるんです」
ジョルノ様は善意でやってくださっているのにごめんなさい。と言われ、僕はぎゅっときょうこの手を握った。
「あなたの覚悟はわかりました」
だから僕も覚悟を決める時だろう。
はーーーー、と長い息を吐き、握った手にぎゅっと力を込める。
「きょうこ、僕はあなたのことが、」
くー…くー…
言い終わる前に、きょうこの規則的な寝息が聞こえてきた。
「普通、このタイミングで寝ますか」
僕は自然と笑ってしまった。
そして、寝ている彼女の頬にそっとキスをする。
「おやすみなさい、きょうこ」
明日からは、きっと何もかもが違う世界なんでしょう。
ワクワクするような、心配なような
きっとそんな世界なんだろう
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