ジョルノ様は神様です! | ナノ



いずれ訪れる筈だった日


「今日こそは学校に行きますよ!」
全く慣れない共同生活3日目の朝、シリアルで軽い朝食をとりながら、私は声高らかに宣言する。
「ええ、構いませんよ」
ジョルノ様が特に問題もないように、紅茶を飲みながら応える。
てっきり反対されるものだと思っていたので、私は拍子抜けしてしまい、握りしめていたスプーンをカランと落としてしまった。
「え?いいんですか?てっきりこのままずっと自宅で護衛なのかと…」
「そんな監禁みたいなことしませんよ。まあ、学校にはついていきますがね」
紅茶のカップを置いて、ジョルノ様が頬杖をつく。
「で、でも、ジョルノ様とはクラスが別ですし…」
「何のために携帯があるんです」
そう言ってジョルノ様がすっと携帯電話をポケットから出す。
「でっ電話番号!!!!」
ついに使う時が来たのか!と、私がガタッ!と椅子から立ち上がると、ジョルノ様は少し鬱陶しそうに顔をしかめた。
「でも、これはあくまで護衛の為なので、他意はありませんからね」
「わかってますよ」
「どうだか…。では、準備をして行きましょうか。僕のカバンは寮なので、途中少し寄ってもらいますよ」
「はい!では急いで荷物を詰めますね!」
私は朝食を終えた食器をシンクに突っ込むと、バタバタと学校の用意をする。
「あ!着替えるので、こちらの部屋には来ないで下さいね!」
「頼まれても行きませんよ」
大きなクローゼットのある部屋から叫ぶと、ジョルノ様のうんざりとした声が返ってきた。
やった!ジョルノ様と一緒に登校できるなんて、出会った頃からは想像もできなかった事だ。
ああ、わくわくするなぁ。

朝の通学路をジョルノ様と二人で歩く。
普段ジョルノ様が歩いていると寄ってくる取り巻きは近寄ってこず、皆遠巻きにヒソヒソと噂話をしていた。
それに気付かないふりをしていると、学校と寮への分かれ道に差し掛かった。
「では、僕は寮に行きますから、暫くここで待っていて下さい。変な人間にはくれぐれもついて行かないように」
「わかってます!人目も多いですし大丈夫ですよ」
「だからその隙が…はぁ、5分で戻るので気を抜かないように」
最後まで心配そうなジョルノ様が、何度かこちらを振り返りながら寮の敷地へ入っていった。
今のジョルノ様は少し過敏になっている節があるが、前回拉致されたのも寮から見送ってくれた後の一瞬だった。
もう同じヘマをしないように私が周りに神経を張っていると、ふと明確な敵意を察知した。
「ーーー!」
また拐われる、と身構えて、私はスタンドを発動させる。
しかしそこに立っていたのは、組織やDIO様などではなく、いつもジョルノ様を取り巻いている女子達だった。
「あれ?今あいつここにいたよね?」
5〜6人の女子生徒は、いきなり姿を消した私に目を白黒させている。
その手にはスタンガン。
何故。なんてわかりきっている事だった。ただ、ついにこの日が来てしまっただけだ。
私は話をつけようと、スタンドを解除して1歩前に出る。
「話があるなら、聞くけれど」
「うわっ!いきなり出てくるなよ、気味悪い」
女子生徒達は一様に驚いた顔をしていたが、私が黙っているとその顔がどんどん驚きから憎悪に塗り替えられていった。
「お前、何でジョルノの隣なんか歩いてんだよ!」
「全然つり合ってねーんだよ!ブス!」
「ちょっと構われるからって勘違いしてんじゃねーぞ!」
「…」
ああ、ほら、やっぱり。
罵倒されているのに、どこか冷静な自分がその場を見下ろしている。
知っている。そんな事あなた達に言われなくても、私が1番よくわかっている。
私が口をつぐんでいると、リーダーと思しき女子生徒がつかつかと顔が触れるほどに近付いてきた。
「何か言えよ。余裕ぶってんの?」
静かな問に、私も口を開く。
「…私とあなた達で、違う事なんて何も無い」
「は?」
「私の事、私の職業、知ってるんでしょ、もうあまり詮索してこないでよ」
無言で睨みつけると、女子生徒の顔がカッと赤くなった。
「何それ脅し?あんたみたいなヘナチョコ女、どうせ股開くくらいしかしてないんでしょ?そんなくせに、何いきがってるの、そんなんで私達が怯むと思ってるの!?」
リーダー格の女子生徒がガッ!と私の胸ぐらを掴む。
弱い。たかだか中学生の女の子の力。
でもその拳はギチギチと私のシャツにシワを作る。この子は本気なんだ。ジョルノ様に本気なんだ。
だから、何だと言うんだ。
私だって本気だ。今不本意に守られて、ギャングとしての葛藤があって、それでも誰かに譲ろうなんて思わない。
「私はジョルノ様が好き」
「!?」
私は胸ぐらを掴む女子生徒の手を掴む。
「羨ましいでしょう。恨んでもいいよ。でも私には関係ない。どんなに圧をかけられても、私はジョルノ様が好き。私にはジョルノ様だけ。覚えておいて」
私だって菩薩じゃない。
ジョルノ様を狙うライバルの事は憎く思うし、その相手がこうして私に手を出してきたらムカつきもする。
それでも手を出さないのはチームのためだ。一般人にスタンドを使うなというジョルノ様の言いつけがあるからだ。
だから女子生徒をただただ睨む。ありったけの殺意を込めて。
「…ッ!」
パシンッ!
それに怯んだ女子生徒が、反射的に反対の手で私の頬をぶった。
「…」
「余裕ぶってんじゃねーよ!」
女子生徒は感情が高ぶって泣いていた。
頬を叩いた手は弱々しく小刻みに震えている。
「ーーーーー。」
私が口を開こうとした時、すぐ後ろから私を呼ぶ声がした。
「きょうこ!」
はあはあと浅い息を吐きながら、ジョルノ様が私の肩を掴んでいる。
その表情は少し焦りが見え、私は今自分がどんな顔をしているのか想像する事ができた。
きっととても、醜い顔をしているのだろう。
私がふっと全身の力を抜くと、取り巻き達が慌てて弁解を始めた。
「ジョルノ、これは違くて、むしろこの女が乱暴を…」
つらつらと曲解した事実を語りだした女子生徒に、ジョルノ様はピシャリと言い放った。
「今すぐここから立ち去って下さい」
「でも、何で?違うの、悪いのはこの女で、」
「同じことを2度言うのは嫌いなんです」
ジョルノ様の冷め切った目が女子生徒達に向けられる。
「…っ」
何か言いたげな口をキュッと閉じて、ギャラリーが集まりだした通学路を女子生徒達はすごすごと去っていった。
「…何故携帯で連絡しなかったんです」
はあ、と溜息をつくと、ジョルノ様は乱れた私の襟元を正す。
もう、ジョルノ様、ジョルノ様がこんな事をするから、私は舞い上がり、取り巻きは激怒するんですよ?
なんて、今は到底言える気分ではなかった。
「これは個人的な事なので…タイミングが今だっただけで、いずれはこうなっていたんです」
「説明になっていません」
「へへ、すみません」
「…」
ジョルノ様はまだ何か言いたげだ。しかし、私の言ったことが全てなのだ。
「今日は疲れちゃったので、家に返りましょうか」
「いいんですか、不良になりますよ」
「…ギャングですから」
そう言って私は力なく笑った。
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