ジョルノ様は神様です! | ナノ



同じ歯磨き粉


ぽかぽか暖かい日差しで、僕は瞼を数度震わせ目を覚ました。
「ん…」
ベッドから起きて、ぐいっと伸びをする。健やかな朝だ。
ふと隣に視線を向けると、そこには安心、又は油断しきった顔で眠るきょうこの姿があった。
昨夜はあんなにも嫌がっていたのにと苦笑する。
二人で夕飯を食べ、シャワーを浴び、そこからいざ寝るとなった時、きょうこは自分がソファで寝ると言って聞かなかった。
強引に寝泊まりをしている僕からしてみれば、流石に家主を置いてベッドで寝るなんて出来ない。
そこからどちらがベッドで寝るかの言い合い。
そして二人で寝ると言う案に無理やり納得してもらったのが深夜の2時だった。
「これは今日も学校は自主休校ですかね…」
そうして暫くきょうこのアホ面を拝んでいると、んん、と小さく唸りきょうこが目を覚ました。
「おはようございます、きょうこ」
「おはよう…ございます。あれ…?ジョルノ様…?何でジョルノ様が………」
きょうこはゴシゴシと目を擦り、ポヤポヤとまだ半分夢の中のようだった。
昨日も何となく感じたが、どうやらきょうこは朝が少し弱いようだ。
未だに頭にはてなマークを浮かべるきょうこの寝癖をひと撫でして、僕はベッドを出た。
「洗面台をお借りしますね」
歯ブラシが置いてあるシャワー室のドアを開けると、やっと目が覚めたきょうこの悲鳴が背中越しに聞こえた。

きょうこが普段使っている歯磨き粉を適量出し、シャコシャコと歯を磨く。
ただそれだけの事に、やけに生活感を感じる。
こうして誰かと一緒に生活するのはいつぶりだろうか。
正直いい記憶はないが、何だかんだで悪くはない、と、思う。
そんな考え事をしながらシャコシャコと歯を磨いていると、唐突にきょうこがシャワールームのドアを開けた。
それと一緒にふわっと朝食の香りがする。
「ちょっと前失礼しますね」
僕が少し洗面台から離れると、きょうこが歯ブラシに歯磨きを出し、それをくわえてまた扉から出て行った。
きっと歯磨きをしながら朝食を作るつもりだろう。
ズボラとも思える行為だが、今は気の置けないそれが心地よく思えた。
僕は口を濯ぐと、きょうこのいるダイニングキッチンに続く扉を開けた。

僕が扉を出ると、もう朝食は用意されていた。
スクランブルエッグにサラダにトースト。どれも昨日一緒に買いに行ったものだ。
「簡単なものしかないですが、よければ食べてくださいね」
食器を洗うきょうこが僕に気付いて声をかける。
「十分です。いただきますね」
そう言ってイスに座ると、きょうこが2つのマグカップを持ってパタパタとテーブルに駆け寄ってきた。
「はい、朝なのでコーヒーです」
「ありがとうございます」
そうして昨日僕が使っていたものとは逆のマグカップを渡される。
どうやらそれはきょうこの愛用品らしかった。
「すみません」
「? どうしたんです?」
「いえ、別に」
自己満足の謝罪をすると、きょうこは向かいのイスに座り、トーストにバターを塗りながら話しかけてきた。
「ジョルノ様、相談なのですが」
「何です?」
僕もトーストをひとかじりする。
「ダメ元なんですけど…一週間の護衛、もう少し短くなりませんかね?」
「…」
帰国して彼女の護衛に付きたいと言ってから、彼女がずっといい顔をしていない事には気付いていた。
しかし何故だろう、いつもの調子のきょうこなら、尻尾を振ると多少は思っていたのだが、こうも否定されると胸が少しざわつく。
「…僕といると不都合でも?」
自分でもわからない感情を押し殺して尋ねる。
「そんな!それ自体は嬉しいのですが」
マグカップに伸ばした手を引っ込めて、きょうこはもごもごと何かを言いよどんでいるようだった。
「護衛チームが、…ギャングが、誰かに護衛されているのが…ちょっと…何といいますか」
ああ、と僕は勝手に納得した。
確かに自分がきょうこの立場なら、今こうして一緒に朝食をとる事も嫌がっているだろう。
そこは申し訳なく思う。しかしいつの日にか思った、飼い犬のような。そんなきょうこを自分の身内が危険に晒した事がどうしても僕の心に引っかかっている。
「そうですね…では今日を含めて3日間だけ、あなたのそばにいさせて下さい」
これは僕の子供じみた我儘だ。
しかしそんな僕の我儘に、きょうこは少し困った顔で「はい」と言った。
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