ジョルノ様は神様です! | ナノ



ホットチョコレート


授業が終わり、まとわりついてくる女子生徒を適当にあしらい、僕はアジトへ行くため校門へ向かっていた。
毎日飽きもせずよく話しかけてくるなと呆れながら急ぎ足で歩いていると、後ろからパタパタとこちらに駆けてくる音と、今1番聞きたくない声が聞こえた。
「ジョルノ様ぁ〜!」
聞こえないフリをして足を速める。
しかし相手は全力疾走で簡単にこちらとの距離をつめ、すんなりと僕の隣に並んでしまった。
「ジョルノ様!アジトまでご一緒しませんか?」
ハァハァと息を切らせて、そいつ、きょうこは声を弾ませて言った。
「お断りします」
顔も見ずにそう言うと、ふふっと耳障りな声が隣で聞こえた。
「そんなに冷たいこと言わないで下さいよ!どうせ道は同じじゃないですか」
僕がそちらを向かないとわかると、そいつは僕の顔を下から覗きこむようにして言った。
強制的に目を合わされいい気はせず、すぐに目を逸らすと、僕は足をより早く動かした。
「僕はカフェに寄って行くので、アジトへ行くなら一人で先に行って下さい」
特に喉が渇いている訳でもないが、彼女を振り払いたいがために嘘をついた。
しかし、そいつはそんな事で振りほどけるような女ではなかった。
「あ!私も今そんな気分になりました!あそこのキャラメルマキアートが飲みたい気分に!」
そう言って学校の近くのカフェを指さした。
文句が喉まで出かかったが、何だかこれ以上のやりとりは不毛な気がして、僕は不服ながら彼女の押しに折れる事にした。
「…もう勝手にして下さい」
「はい、勝手にします」
そう言って彼女は、声色でわかる程 嬉しそうに答えた。


カフェで各々好きなものを選び、アジトへの近道だと言う裏路地を進む。
いつの間にか自然と彼女は隣に並んで歩いていて、僕もそれを受け入れていた。
いや、諦めていたの方が正しいのかもしれないが。
「おいしい〜」
釈然としない僕の気持ちなんか知ったことではないように、彼女はのんきにそう言った。
「ジョルノ様は何にしたんですか?」
そう言ってまた下から僕を覗き込む。
「ホットチョコレートです」
そして僕はまた顔を逸らす。
「おいしそう!一口ください」
「嫌ですよ」
声を一層明るくして、期待したように言われるも、すぐに否定する。
彼女はえへへ…と残念そうに笑うと、コクリとキャラメルマキアートを飲んだ。
「流石に冗談です。今度買う時はそれにしてみますね」
「…チョコレート、好きなんですか?」
僕は何気なく聞いた。
「いいえ、ジョルノ様と同じものを飲んでみたいだけです」
「…変人ですね」
僕はやっと見えてきたアジトをぼんやり見つめながら、飲み物をズズッと啜った。


「お、学生コンビ到着か」
アジトへ着くと、ソファで足を組んだミスタに出迎えられた。
僕は鞄を近くの椅子に置くと、どうも、と小さく挨拶をした。
「新人がノロノロ到着たぁいいご身分だな」
ガチャンッと乱暴にカップを置き、アバッキオが何が気に食わないのかこちらに睨みをきかせてきた。
「アバッキオうるさい」
「お前も似たようなもんだろ!ちょっとは急いでこい!」
彼女がそう言うと、アバッキオはチッと舌打ちをして悪態をつきだした。
それをまぁまぁなんて軽く押さえながら、ミスタがニヤニヤとこちらを見た。
「それにしても二人して同じカフェの飲み物飲んで、放課後デートか?」
自分で言って可笑しくて仕方が無いのか、下品な笑いを抑えようともせずにバカな事を聞いてくる。
「ええっそんな〜照れちゃ…」
「違います」
「…はい、そうです、違います…」
嬉しそうに事実をねじ曲げようとする彼女の言葉に割って入ると、そいつはガックリと肩を落としてため息までついた。
いちいちリアクションの大きいやつ…などと思っていると、後ろからブチャラティに声をかけられた。
「よぉ、もう来ていたんだな。今日はとりあえず俺とジョルノで街の見回りをしてこようと思う」
留守は頼むぞ、と続けたブチャラティに、そいつが残念そうな声をあげる。
「ええ〜!そんな任務なら私がジョルノ様と行きたいです!ブチャラティ!」
パタパタとブチャラティの元まで駆け寄り、いやいやと子供のように首を振る。
ブチャラティは困ったような顔をし、ぽんっと手をそいつの頭に乗せた。
「すまないが、きょうこには別件で頼みたい仕事がある」
「なんですか?」
「そう不貞腐れるな…、いや、気持ちのいい任務ではないのだがな、ボスから直々のご指名だ」
ボス、そう聞いたそいつは一瞬ピクリと反応して、先程の勢いをなくしまた肩を落とした。
「…はい、了解しました」
「では、すぐに支度をして出てくれ」
ぽんぽんっと2回頭を叩かれ、彼女は苦笑いをしながらブチャラティを見つめた。
そして あ!と何か思いついたような声を出すと、ガシッとブチャラティの両腕を掴んだ。
ブチャラティはそれにビックリして一瞬怯んだが、どうした?と優しく促した。
「任務、早く終わらせるので!今夜はジョルノ様も一緒にディナーにしましょう!」
えっ…と発せられたブチャラティの声も届かぬほどのスピードで、彼女は奥の部屋に行ってしまった。
何やら奥で任務の支度をするらしい。
「…彼女、もうここに来て長いんですか?」
そんな彼女が消えた奥の部屋を唖然と見つめるブチャラティに聞いた。
「そうだな、もう2年くらいたつか。もう一人前と言ってもいい」
ボスからも信頼されているしな、と続けたブチャラティの目は、少し複雑な色をしていた。
「へぇ…」
バタバタと音がする部屋の扉を見つめながら、やっぱり彼女もギャングなんだなぁ…などと今更ながらにそう思った。
「僕も早くそうなりたいものですね」
バンッ!と扉が開き私服姿に着替えた彼女は、いってきますジョルノ様!と言い残して颯爽とアジトを飛び出して行った。
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