ジョルノ様は神様です! | ナノ



狭いベッド


特に会話もないまま、私の住むアパートの前までジョルノ様は私を送り届けてくれた。
「ありがとうございました、ジョルノ様。長旅で疲れたでしょうし、ジョルノ様も気を付けてお帰りになってくださいね」
私がぎこち無く微笑みながらジョルノ様の顔を見ると、ジョルノ様は何かを口篭っている様子だった。
「ジョルノ様…?」
ジョルノ様のこんな様子は珍しい。
やはり何か問い詰めたいことでもあるのかと心做しか身構えていると、何かを決心したようなジョルノ様が私の顔を真っ直ぐ見据えた。
「暫く、あなたの家に泊まっても構いませんか?」
「………………………………え?」
思考が停止する。
ん?今、ジョルノ様は何と?言ったのだ?
疲れ過ぎて私はついに幻聴でも聞こえるようになってしまったのだろうか。
混乱している私を他所に、ジョルノ様も居心地が悪そうにしている。
「だから、…守ると言ったでしょう。昨日の今日です、何が起こるかわかりませんし」
それに、とジョルノ様が続ける。
「ここから僕の寮までは少し遠いので。大人しく泊めて下さい」
後半はもう開き直ったかのように言う。
確かにカイロからずっと付いていてくれたジョルノ様にこれ以上の負担を強いるなんて出来ない。しかし、しかしいいのか?いいの、だろうか。
私も怒涛の展開で脳が麻痺しているのか、そっとジョルノ様の手を握ると、自分の部屋まで手を引いた。
「ただいま」
ガチャりとドアを開けて、癖でそう言う。
ほんの数日ぶりなのに、とても懐かしい気持ちになる。
散らかり放題の部屋にジョルノ様を通す。
「お邪魔します」
カチャッとしっかり施錠をして、ジョルノ様と部屋に入る。
ジョルノ様が私の部屋に来るのはこれで2度目になる。あの時も任務関連だったなぁと、遠い昔のように思い出す。
「夕飯…は、ないんですけど、シャワーだけでも浴びますか?」
「いえ…いいえ、そうですね、お借りします」
悩んだようにしてジョルノ様がそう答える。
「ではバスタオルを用意しますね。服も男性物のシャツがあるので、それを使ってください」
バスルームはこちらです、と案内をしながら、私が疲れた体にムチを打ってあれこれと準備をする。
「ありがとうございます。あなたはゆっくり休んでいて下さい」
そう言ってジョルノ様がバスルームの扉をパタンと閉める。
普段の私なら自分の家のバスルームにジョルノ様がいるなんて只事ではなくはしゃぐ所だが、如何せん今は疲れがピークでそれどころではない。
ジョルノ様がここにいる理由だって、私はまだ納得はしていないのだ。
女としては嬉しい、しかし…。
「あー!やめやめ!」
回らない頭で何を考えても良い方向へはいかない。
私はそれよりも、と、山積みになっている派手な服達をクローゼットにぶち込んだ。
そして布団にぼふん!と倒れ込むと、ジャーーーー…とジョルノ様がシャワーを浴びる音が壁越しに聞こえる。
………何だかそわそわする。
いくら疲れて脳が麻痺しているにしても、少し落ち着けば今の状況のヤバさがフツフツと現実味を帯びてきた。
考えるな考えるな考えるな…。
私が変な汗をかいていると、ガチャっとジョルノ様がシャワールームから出てくる音がした。
ふんわ香る石鹸の匂いに今更ながらにドキドキしてしまって、私はベッドに寝そべりながら、無けなしの理性で壁の方を向いた。
自分と同じものを使っているはずなのに、ジョルノ様の匂いがほんのり香る気がして胸がドキドキとうるさい。
私がすーはーすーはーと落ち着く努力をしていると、ドサッ!と私のすぐ隣に物量を感じた。
「!?」
パッと振り向くと、そこにはお風呂上がりのジョルノ様が仰向けに横たわっていた。
「ジジョジョジョルノ様!?」
「ん…何です?」
髪の毛も洗ったのだろう、いつもは整えられた前髪がはらりと額に張り付き、いつもの254369874億倍色気のあるジョルノ様の目がこちらを見る。
「何って、あの、べ、ベッドが、その」
私があうあうと目を回していると、ジョルノ様がふぅ、と息を吐いた。
「安心してください、ちゃんと床で寝るので、今だけは少しここで休ませて下さい」
お疲れモードのジョルノ様は、手で目を覆って大きく深呼吸をしている。
いや、待って欲しい、今この状況も大変な事だが、先程ジョルノ様はもっと大変な事を口走らなかったか?
「ジョルノ様、床で寝る気なんですか!?」
残念ながらギャングと言う性質上家に友人が来る事もなく、つまり来客用の布団などもこの家にはない。
あるのは硬いソファだけだが、こんなに疲れているジョルノ様を、そんな所で寝かせるなんて出来るはずがない!
「ジョルノ様はベッドで寝てください!絶対に!」
「じゃあ、あなたはどこで寝るんです?」
ジョルノ様がチラリと目を覗かせて問う。
「私はソファで寝ます。ブランケットもありますし」
そう言って私が体を起こしてソファへ向かおうとすると、ジョルノ様の手が私の腕を掴み、グイッと自分の方へ引き寄せた。
「わぷっ」
石鹸の匂いとジョルノ様の香りが鼻をくすぐる。
「あなたこそ疲れているという事を自覚して下さい、拐われて、ろくに眠れてもいないんでしょう」
「それは、来てくれたジョルノ様にだって言えることっ…」
私が反論すると、ジョルノ様の人差し指がそっと私の唇に添えられた。
「…!」
「なら、2人で寝ますか?」
ジョルノ様が、濡れた前髪をかきあげながら艶っぽくそんな事を言う。
その顔はどこか悪戯っぽくて、しかし有無を言わさない圧を感じた。
…少し、DIO様を思い出す。
「……ジョルノ様は、意地悪です」
「はい」
「私はとても疲れていて、だからですよ、こんな恐れ多い事なんて、私は私を許しませんから」
「僕のせいにしてください」
私がゆっくりとベッドに横になる。
今度は壁ではなく、ジョルノ様の方を向いて。
「…これを見越して、お風呂、入ったんですね」
「さあ、汗が気持ち悪かっただけです」
そうして2人で布団を被る。
一人用のベッドは狭く、どうしてもジョルノ様の体に私の体が当たってしまう。
今はこの体温がとても落ち着く。
ドキドキもする。しかし、それが心地いいのだ。このドキドキが私の日常だった。
「おやすみなさい、ジョルノ様」
「…おやすみなさい、きょうこ」
ジョルノ様が目を閉じるのを見届けて、電気を消して私も目を閉じる。
明日の私はどんな反応をするのだろうか。ジョルノ様と同じ布団で寝た事を。きっと騒ぎ立てるだろうな。
そんなことを思いながら、私は久しぶりに泥のように眠りについたのだった。
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