ジョルノ様は神様です! | ナノ



変化の始まり


「この度はご心配とご迷惑をおかけして誠に申し訳ございませんでした」

ジョルノ様と乗ったタクシーの行く先は飛行場で、そこで初めて私は自分がエジプトのカイロにいたのだと知った。
そこからやけにあっさりとした出国手続きをしたかと思うと、何とパッショーネの自家用機が用意されていた。
何故それがあるのか、何故私がそんな扱いを受けるのか、この時のジョルノ様は深く詮索はしてこなかった。
と言うより、帰国した今でさえ、会話という会話はほとんど無い。
何と気まずい事か。
しかし事が事だけに私も必要以上にジョルノ様に話しかけることは出来ず、まずアジトに帰ってきて仲間達に深々と頭を下げたのであった。
「無事ならそれでいいんだ。よく帰ってきてくれた」
そう言って家族のようなハグをしてくれるのはブチャラティ。
「チッ。ギャングが簡単に拉致られてんじゃねーよ」
そうやって悪態をつくのはアバッキオ。だが彼も、私が飛行機に乗って帰ってくる間、現時刻深夜の3時までアジトで待っていてくれたのだ。
それは心配なのか義務感なのか、はたまたブチャラティに何か言われたのかはわからないが、素直に嬉しいことだった。
「これからは尾行とか、一層気をつけるようにするね」
「そうだな。お前はこう言われるのは不本意かもしれないが、ギャングと言えど女性なんだから、注意は怠らないうにな」
ブチャラティはそう言って私の頬にキスをする。
これは相当心配をかけてしまったようだ。
私が苦笑いをしていると、私の少し後ろに立って沈黙していたジョルノ様がふと声を上げた。
「この度は、僕の身内が大変ご迷惑をおかけしました…」
そう言って私と同じように頭を下げた。
その言葉について誰も口を開かない。私も含め、各々思う所があるのだろう。
少し悪い空気の中、頭を上げたジョルノ様がチラッと私を見た。
「…パッショーネにとっても、大事な存在のようですし」
伏せ目で、チクッと刺さる言い方をする。
やはりこんな末端のチームの女が攫われたくらいで自家用機が出た事を、ジョルノ様は疑問に思っているらしい。
しかし、こうしてその話題になる度に目をそらす私の様子を見て、それ以上に踏み込むことはしなかった。
少し胸が痛む。しかしパッショーネにとっての私。ボスと私の関係を、ジョルノ様に話す勇気は、今の私にはまだなかった。なので気にしないフリをしてくれる事に今は救われる。
「ブチャラティ、今回の事の責任として、暫く彼女と行動を共にしてもいいですか?」
「えっ」
予想外の提案に私は心臓がドキッと跳ね上がる。
「責任を感じるのはわかる。だが、今回の件がお前の身内の起こした事なら、お前に関わる事でまた同じことが起こる可能性があるんじゃあないか?」
「確かにあの人は愉快犯のようなもので、僕な反応を楽しんでいる節があります 。でもだからこそ、僕だから守れるとも思うんです」
「守る…か」
ブチャラティが、はあ、とため息を吐く。
ブチャラティの考えていることは何となくわかる。自惚れや、それこそ相手の思うつぼなのではないかと言うこと。
現に私も、ジョルノ様と一緒にいられる!と素直に喜べないのだ。
「何と言われても、僕は彼女といます」
「これじゃあ、いつもと逆だな」
ブチャラティがそう言って苦笑した。
「わかった。気が済むまでそうしろ。任務も多少は考慮をしよう」
半ば呆れるようにそう言うと、ブチャラティはもうお開きだ!とメンバーに言った。
「色々あって疲れただろう。きょうこもゆっくり休め」
メンバーが帰り支度をする中、ブチャラティがポンッと私の肩に手を置く。
「勿論、送っていくんだよな?」
「…ええ」
そう振られたジョルノ様の声は、覇気がなかった。
私を含め、チームの皆は気疲れをしているようだ。何だか空気が良くない。
「では、お言葉に甘えて、ジョルノ様、一緒に帰りましょうか!」
私はパッと振り返る。帰国してからこうしてジョルノ様をまっすぐ見るのは初めてかもしれない。
そうして見たジョルノ様は、酷く疲れているようで、心がチクッと傷んだが、それを取り払うように私は笑顔でそう言った。
「はい。行きましょうか」
私の声に少し表情をほころばせたジョルノ様が、すっと私に手を伸ばした。
「!」
こんな時なのに、私は心臓が跳ね上がる感覚に一瞬息を止めた。
「…はい」
胸のもやもやをかき消すように、私はジョルノ様の手を取り、2人で夜のネアポリスを歩き、家路についた。
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -