ジョルノ様は神様です! | ナノ



自分のもの


「っジョルノさまぁ…!」
私はDIO様の下、ぶわっと涙が溢れ出すのを止める事が出来なかった。
本当は、こんな不細工な顔をジョルノ様に晒すなんて事したくないのに、嬉しさと安堵感で、せっかくのジョルノ様のお顔もボヤけてまともに見えない。
「フン、久しぶりだな。初流乃」
DIO様は私の上からスッと退くと、ベッドに腰掛けジョルノ様を見てニヤニヤとする。
「…僕は、会いたくなどありませんでしたが」
そう言いい、ジョルノ様がツカツカと部屋に足を踏み入れる。
「ちょっかいを出すなら、直接僕の所へ来たらどうです」
「えらく余裕がないな?ハハッ、お前のその顔が見られただけで、今回は満足という事にしておいてやろう」
いつもより低い声で話すジョルノ様に対して、それを嘲笑うように、或いは心底楽しそうにDIO様が言う。
「"自分のもの"なんぞ、増やすと足を引っ張るだけだぞ」
「…大きなお世話です」
そう言うと、最早服をひっかけているだけの私を見て 舌打ちをしたかと思うと、ジョルノ様は私をその状態のままお姫様抱っこの形で持ち上げた。
「あっ…」
されるがままの私をよそに、いつの間に移動したのかDIO様がテーブルの上に置いてあった私のカバンを取ると、それをこちらに投げつけた。
「いつでも帰ってくるといい」
「その冗談、全く笑えませんよ」
ジョルノ様はそう言うと、DIO様を見ることなくその部屋から外に出た。

私があんなに必死に外に出ようとしていたのが虚しくなるくらい、それからの事はスムーズだった。
途中廊下で執事のような男に もうお帰りですか?などと声をかけられたが、私が返事をする前にジョルノ様はその人の前を通り過ぎる。
光もない暗闇の中、しかし迷う事なく館の外に出ると、そこには一台のタクシーが停まっていて、私は少し乱暴にジョルノ様にその後部座席へ投げ込まれた。
「いでっ」
「出してください」
隣に乗り込んだジョルノ様は、ドアを荒々しく閉め運転手にそう言った。
まるで、1秒だってここにいたくはないと言うように。
余裕がなさそうに眉間を指で押さえるジョルノ様から感じるピリピリとした危うい空気。
…私は、こんなに激怒しているジョルノ様を見たのは、初めてだった。
タクシーの中は、暫くぎこちない無言が続いた。
運転手が気まずそうにチラチラと後部座席の私達を見るが、助けて欲しいのは私の方だ。
否、私はたった今助けられたのだが、まだ頭が何もかもについて行けていない。
何故ジョルノ様がここに?そもそもここはどこなのか?この車はどこへ向かっているのか?
ジョルノ様は、何故 乗車してから一度もこちらを向いてくれないのか?
とりあえず乱れた衣服を最低限直し、ピリピリとした空気を纏ったまま窓の外から視線を外さないジョルノ様に、私は自分でもらしくないくらいにオドオドと話しかけた。
「ジ、ジョルノ様」
「…」
返事がない。
もしかして呆れられただろうか。ギャングなのに誘拐などされて、お手を煩わせて、ついに愛想を尽かされただろうか。
「ジョルノ様…?」
自分でも今回の件はよくわからないのです。
それでもジョルノ様に迷惑をかけた事はわかるから。
自分の不甲斐なさが情けなくて、引っ込んだ涙がまた溢れてくる。
「っジョルノ様…大好きなのに…っごめんなさい…!」
私が情けない声でそう言うと、ジョルノ様の肩がピクリと動く。
そしてゆっくりとこちらを見たジョルノ様は、いつもより幾分か幼く、悔しさで泣いてしまいそうな顔をしていた。
何かを言いかけて口をつむぎ、ジョルノ様の指が私の涙を優しく拭った。
「ジョルノさ、ーーー…」
私がジョルノ様の名を呼ぶより早く、ジョルノ様の腕が、力強く、しかし優しく私の背中に回された。
そして存在を確かめるように、ぎゅうう と強く抱き締められる。
いつもは頼もしく思うその体が小刻みに震えている事に気付いた私は、遠慮がちにその肩に額をあてた。
「あなたが無事で…ッ本当によかった…!」
ジョルノ様の腕の中で耳にしたのは、私が今までに聞いた事のないような、絞り出すような声だった。
より強く力を込められた腕に応えるように、私もジョルノ様の背中に手を回し、窓の外のネオンを無視して そっと目を閉じた。
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -