ジョルノ様は神様です! | ナノ



ご主人様のご主人様はご主人様?


「ジョルノ様、美味しい紅茶をありがとうございました!」
「どういたしまして。もう暗いので、気をつけて帰って下さいね」
シャツを届けに来たお礼に紅茶を頂いた後、ジョルノ様はわざわざ寮の前まで見送りに来てくれた。
確かにもうすっかり夜で、こんな時間まで二人きりで過ごせたのかと思うと胸がほんわりと暖かくなった。
私はテンションの上がった調子で、ぐっと力こぶを作って見せた。
「大丈夫です!もし襲われても、こてんぱんにしてやりますよ!」
自信満々にそう言うと、ジョルノ様に、でしょうね、と笑われた。
「明日は同じ任務でしたよね」
「はい!」
明日はジョルノ様と2人で護衛任務の予定がある。
オンとオフは切り替えなければならないが、それでもジョルノ様と一緒に過ごせるのが嬉しくて、私は自然と笑顔になるのを止められなかった。
そんな私を見て、ジョルノ様はやれやれといった顔でため息をついた。
「あまり浮かれてないで、帰ったらさっさと寝てくださいね」
「こどもじゃあないんですから!」
はいはい、と相槌を打たれて、私はそれでは、とジョルノ様に手を振った
「また明日です、ジョルノ様」
「はい」
私は名残惜しく思いながら、くるっとジョルノ様に背中を向けると、ゆっくりと帰り道についた。
別に今目に焼き付けなくても、また明日会える。
そう思いながら鼻歌を歌い、ふいっと角を曲がると、突然目の前が真っ暗になった。
そしてそのまま状況を把握する暇も与えられず、私は体にドンッ!と強い衝撃を感じ、そのまま気を失った。


「ん…」
私がパチ…と目を開けると、そこは暖かいベッドの中だった。
あれ?私、いつの間に家に帰って来たんだっけ…。
何だか記憶が曖昧で、頭が痛む。
私がぼーっとした意識の中起き上がろうとすると、ジャラ、と何か首に違和感を感じた。
「っ!?何これ…!」
バッと手で触れてみると、私の首にはエナメルのような素材の首輪が付けられていた。
その首輪からは冷たい鎖がぶら下がっており、それはベッドの柱に固定してある。
「何…これ…」
慌てて周りを見回すと、そこは私の部屋なんかではなく、今寝ているのはキングサイズのベッドで、周りの装飾は落ち着いた印象ではあるが、どれも高価そうなものばかりであった。
私はここに来てやっと、自分に降りかかっている事態にゾッと寒気がした。
何故自分はここにいるのだろう?
今日はジョルノ様と一緒に護衛任務につく筈…。
そこで私はハッとする。
「そうだ、帰り道に私、誰かに襲われて…」
ここはその誰かの、あるいは組織のアジトだろうか?
わからない事が多過ぎてパニックになりそうだが、こう言う時こそ冷静でいなければ…。
私がふぅ…、と静かに息を吐くと、ひんやりとした風が頬を撫でた。
そして扉の向こうから、カツン、カツン、と誰かの足音が聞こえてきた。
私は手早く柱に巻かれている鎖を解くと、そっと太ももに手をやり、常備している銃に触れた。
カツン、カツン。
その音は徐々に大きくなり、こちらに向かって来ているようだった。
人数は1人。
これからの事は全くのノープランであるが、何か事情を知っている人物に会えるのは好都合だ。
足音が扉の前で止まり、私がグッと銃を握る手に力を入れた時、予期せぬ展開が私を襲った。
「んぐっ…!」
私は何の前触れもなく、屈強な腕に組み敷かれていた。
私は何が起こったのかわからず、目を白黒とさせた。
ドアは開いていない、今だって閉まったままだ。
なら、どうしてこの人物は私の上にいるのだろう。
私が思考を巡らせていると、私に覆い被さっていた人物がゆっくりと口を開いた。
「やっと起きたか。気分はどうだ?」
薄暗い部屋のせいで顔はハッキリ見えないが、男は口元を妖艶に吊り上げながら私に問うた。
「…気分は、あまりよくないわ」
私はジッと相手の出方を見ながら答える。
しかし男は、睨む私をあざ笑うかのようにスッ…と私の頬を撫でた。
その手はとても冷たくて、私はゾワッと身体中の鳥肌が立った。
一瞬たじろいだ私を見て男は満足気に笑い、そのまま手をスルスルと輪郭に沿って下に撫で下ろした。
「んっ…!」
「初流乃の様子を見に行ったら、たまたまお前が目についてな…ちょうどペットが欲しかったのだ」
ピッタリだと思ってな、と、ゆっくりと首輪をなぞられる。
私は首輪越しに感じる指の感覚に、頭がジンッ…と痺れる錯覚に襲われた。
何だろう、この人物の醸し出す独特の雰囲気は。
どうやって部屋に入って来たのか検討もつかず、言っている事もよくわからない。
ただ、気を抜くと射抜かれてしまいそうな、圧倒的なカリスマ性をひしひしと感じる。
私はその雰囲気に飲まれてしまうのが恐ろしくて、咄嗟に銃を男に向けた。
バァンッ!
「…っ!」
一瞬の迷いもなく引き金を弾いた筈が、いつの間にか銃を持った手は男に強く握られ、銃口は上を向き、銃弾は天井にめり込んでいた。
「主人にこんなものを向けるとは、躾が必要なようだなぁ…?」
暗闇からチラリと細められた目が見え、私は金縛りにあったように体が動かなくなった。
ハッキリと合った目から視線が外せない。
私が固まっていると、そのまま力任せにグイッ!と首輪を掴み引き寄せられた。
「ッガ…!」
私は遠慮のないそれに息が詰まり、眉をひそめた。
そんな私を、男は鼻が触れ合いそうな程間近で見つめる。
「1から、このDIOが躾けてやろう…有難く思え」
赤い切れ長の目で見つめられながらそんな事を言われ、私は不本意ながら胸がキュウウっと切なくなってしまった。
何者かもわからない、そんな男なのに。
服従したくなるような…そんな怪しい魅力を感じてしまって、私はフルフルと首を振った。
「わ、私のご主人様は、ジョルノ様です…!」
「ん?そうなのか?」
私のその言葉を聞いたDIOと名乗る男は、それまでの威圧的とも言える雰囲気をフッと消したかと思うと、またニィッと妖艶に笑った。
「なら、私も主人に違いないだろう」
「…?」
私は言われてる意味が全くわからず、疑問を投げかけるようにDIOを見つめた。
するとDIOは、フンッと鼻で笑い、私の顎をくいっと持ち上げた。
「私は初流乃…その、ジョルノの父親だ」
「おっお父様!?」
突然の展開に頭が追いつかない。
しかし、半信半疑だが、妙に納得してしまう自分がいる。
「…っ」
どうしましょう、ジョルノ様。
私は、あなたのお父様に誘拐されてしまったかもしれません。
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