ジョルノ様は神様です! | ナノ



唯一の安眠剤


「んんん〜、報告書終わりっ」
私はアジトのソファに座り、ペンを片手にぐいーっと伸びをした。
ここ数日溜め込んでいた報告書を、やっと処理し終えたのだ。
昼過ぎからやり出した作業だが、窓の外はもう夕焼け色に染まっていた。
私が霞んだ目を擦り欠伸をすると、近くで読書をしていたフーゴが労わりの声をかけてくれた。
「お疲れ様です。今何か飲み物を用意しますね」
「Grazie、フーゴ。わがままを言っていいなら、コーヒーが飲みたい気分だわ」
「しょうがないですね。少し待っていて下さい」
そう言って、フーゴは席を立ち厨房の方へ向かった。
私はそんな彼の背中を眺めてから、先程まで山のような書類を片していたテーブルに、くたーっと突っ伏した。
報告書自体が面倒なのもあるが、今回のものはボス直々の任務が大半を占めていたせいで、精神的な疲労が凄い。
そのせいで気乗りせず報告書を溜め込んだ私が悪いのだが、ボスを恨まずにはいられなかった。
「どうぞ」
目を閉じてううーんと唸っていると、フーゴがテーブルにマグカップを置いた。
そこからは淹れたての美味しそうなコーヒーの香りがする。
「Grazie」
私は一言そう言って、温かいコーヒーをコクリと飲む。
「はああ〜、おいしい」
私はマグカップを持ったままソファにだらんと体を預ける。
そんな私を見て、フーゴが小さく笑った。
「あ、そうだ、この報告書をブチャラティに渡したいんだけど、彼がどこにいるか知らない?」
私がパッと状態を起こして聞くと、フーゴは、あぁ、と奥の部屋を指差した。
「ブチャラティなら、奥の部屋で仮眠中ですよ。丁度いい時間なので、ついでに起こしてあげて下さい」
「ブチャラティが仮眠なんて珍しいわね」
もう一口コーヒーを飲んで、私は報告書を片手に立ち上がる。
数歩歩いて仮眠室のドアの前に立つと、控え目にノックをして、静かにドアノブを回した。
「ブチャラティー…?」
ドアの隙間からそっと顔を覗かせると、電気はついておらず、夕日がぼんやりと差し込む部屋で、ブチャラティがベッドで静かに寝息をたてていた。
「ブチャラティ、もう夕方だよ」
そっとベッドの側まで近付くも、ブチャラティは起きる様子はなかった。
私は一旦サイドテーブルに報告書を置き、キシッとブチャラティの眠るベッドに腰掛けた。
「寝てる時まで難しい顔をしてるのね」
ブチャラティの顔にかかった髪の毛を手でよけながら、その端正で凛々しい顔立ちを眺めた。
長い間一緒にいるのに、こんなにまじまじと顔を見つめたのは初めてかもしれない。
「ん…」
私がジッと見つめていると、ブチャラティが瞼を震わせて小さく声を漏らした。
そのまま暫くして、ブチャラティがぼんやりと目を開けた。
「きょうこ…?」
「Buongiorno、ブチャラティ」
私が微笑みかけると、ブチャラティは目元に腕を持っていき、小さくBuongiorno…と返した。
「今は何時だ…?」
「もうすぐ18時といったところね」
「そうか…」
そう言ってしばしの沈黙の後、ベッドの中でもそもそと動くと、ブチャラティは私の腕を引っ張り、グイッとそちらに引き寄せた。
「わぷっ」
私はされるがまま、ブチャラティのいるベッドに倒れ込んだ。
「なら、もう少し寝かせてもらおう…」
ブチャラティはそう言って私を胸の中に抱え込み、また寝る姿勢をとった。
私は突然の事に少し困惑したが、特に拒否する理由もないので、ゴソゴソと自分からベッドに入り、ブチャラティの背中に腕を回した。
ぎゅっと軽く抱きしめると、ブチャラティが私の頭をスゥッと嗅いだ。
「きょうこの匂いは、落ち着くな」
なるほど私は安眠剤か。はたまた抱き枕か。
それでも、最近毎日忙しそうにしていたブチャラティを思うと、別にそれでもいいと思えた。
「なら、暫くこのままでいるわ」
「…Grazie」
言いながら、頭に軽くちゅっとキスをされる。
彼が甘えてくるのはとても珍しい。
そんな時は、めいいっぱい答えてあげたいと昔から決めているのだ。
私は片手で掛け布団を整えると、ぽんぽん、とブチャラティの背中を優しく叩いた。
「おやすみなさい、ブチャラティ」
返事の代わりに、ブチャラティはぎゅっと私を抱き締めた。


「起こして下さいと頼んだ筈ですが…」
中々戻って来ないきょうこを気にして部屋を見に来ると、そこにはお互い抱き合って幸せそうに眠るブチャラティときょうこの姿があった。
「まだ仕事は残っているんですが…はぁ」
起こそうかとも思ったが、久しぶりに見るブチャラティの安心したような寝顔に、何だか起こすのも忍びない気がして、残りの仕事は自分1人で片付けるか…と、フーゴはやれやれとため息をついた。


ブチャラティリクありがとうございました!
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