ジョルノ様は神様です! | ナノ



気付きますよ、だって


「ふぅ…これで今日の任務は終わりですね」
僕は護衛についていた依頼人が自宅に入るのを確認して、ふぅ、と息を吐いた。
今日は、昼食を食べる暇もなく任務に就いていた。
任務が完了し少し気が抜けたせいか、ジワジワと忘れていた空腹が押し寄せてきた気がする。
腕時計を見ると時刻は17時。
少し早いが夕食を食べてからアジトへ帰ろう。
僕は辺りを見回し、目についたこじんまりとしたリストランテに入ることにした。
ドアを開けると、チリンチリンとドアに付けられた鈴が鳴り、僕の入店を知らせる。
「いらっしゃいませー!」
店の奥から店員らしき声がして、すぐにウェイトレスが僕の元に駆け寄って来た。
その人は僕の姿を確認すると一瞬固まったが、何かを隠すようにすぐにパッと笑顔になった。
「ご来店ありがとうございます。それでは、お席へご案内しますね」
そう言って丁寧に席まで案内するウェイトレスに、僕は何か違和感感じた。
そのまま窓際のテーブルに案内され、どうぞ、と丁寧に席に座らされた。
「こちらがメニューになります」
そう言ってメニューを手渡される。
そのまま視線を上に上げて彼女の顔をまじまじと見ると、僕の違和感は確信へと変わった。
髪の長さも顔の印象も違い、声のトーンは普段より高めだが、このウェイトレスには見覚えがある。
「あの」
「はい、ご注文はお決まりでしょうか?」
「いえ、きょうこ、こんな所で何をしているんですか?」
僕がそう言うと、きょうこは営業スマイルのまま伝票を持って数秒固まり、絞り出すように え、と呟いた。
「あなたがバイトをしているなんて初めて聞きましたが」
「あ、えっ、あの…えっと…」
彼女はあからさまに動揺していて、目がキョロキョロと泳いでいる。
暫く挙動不審な態度を見せた後、きょうこは何か観念したようにため息をつき、僕の目を見た。
「まさか見破られるなんて」
彼女は曖昧に笑い、あちゃーと困ったような笑顔を見せた。
そして僕の耳に唇を寄せ、コソッと小さな声で話し出す。
「今、バレないよう変装して、この店のオーナーの護衛任務中なんです」
ジョルノ様も騙せる自信があったのですが、と、彼女はウィッグをくるくると弄りながら言う。
「確かに、よく化けてると思いますよ」
実際彼女は普段とガラリと雰囲気が変わっており、少し大人びて見える。
キリッとしたアイラインに、色素の薄いウィッグを一纏めに束ね、普段はしないネイルも施してある。
「よく私だって気付きましたね」
彼女は少し悔しそうにそう言う。
確かに一般人なら騙せていただろう。
実際、この辺りでギャングとして名の通っている彼女だが、それを見破り、不審に思う客もいないようだ。しかし、
「僕があなたを見間違うわけないでしょう」
「っへ…」
僕の発言に、きょうこはかああっと頬を赤く染めた。
「チームで四六時中一緒なんですから」
そうつけ加えると、彼女は一転、残念そうな顔を見せた。
「あ、へへ、そうですよね…」
そう言えばブチャラティ達にもすぐバレます、と、彼女は曖昧に笑った。
まだもう少し話そうと僕が口を開きかけた時、他のテーブルから彼女を呼ぶ声が聞こえた。
「おーい、注文いいかー?」
「あっはい!ただいまー!」
きょうこはパッとそちらを見て返事をすると、くるりと僕の方を見て笑顔で言った。
「ではジョルノ様!しばらく離れ離れですが、メニューが決まったらまた会いに来ますからね!」
そして、急ぎ足で他の客の所へ行ってしまった。
僕は接客をするきょうこの後ろ姿を見つめながら、不思議な気持ちになった。
まだチームに入って日は浅いが、無意識に、ちゃんときょうこの事を見ていたんだな…と思うと感慨深かった。
しばらくきょうこの仕事ぶりを見て、僕はやっとメニュー表に向き合った。
さて、何を注文しようか。
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -