ジョルノ様は神様です! | ナノ



健康状態は良好ですか?


「はあああ〜」
青空の下、カフェテリアのテラス席で、私は今日何度目かの恍惚とした溜息をついた。
手に持っている携帯の液晶にはジョルノ様のメールアドレス。
まだ一度も連絡はとっていないが、それがアドレス帳にあるだけで、私は幸せでたまらなかった。
アドレスの配列にさえジョルノ様の魅力を感じてしまって、いよいよ末期だなと心の隅で思う反面、それさえ愛しくて仕方が無い。
ああ、大好きです、ジョルノ様。
私がそんな風にニヤニヤと携帯を見つめていると、ふと手元に人の影が落ちた。
店員さんかと思い顔を上げると、そこには随分とセクシーな服を着た、金髪でイケメンなお兄さんが立っていた。
そしてその人は、私と目が合うとニィッと笑ってこう言った。
「健康状態は、良好ですか?」
イタリアに来て色々なナンパをされてきたが、こうも変な口説き文句に出会うのは初めてかもしれない。
私は何だかおかしくて、クスクスと笑いながら返事をした。
「絶好調よ、ナンパなお兄さん」
ジョルノ様のメアドもゲットできたし…と、私はまた視線を携帯に戻す。
止まらぬ愛しさに、つい画面にちゅっちゅっとキスをして、また幸せに浸る。
「心も体も、とても満たされているの」
私の答えに、お兄さんはそっか、と軽い調子で呟き、私の向かいの席に腰を下ろした。
普段ならここで黙って席を立つ所だが、今日の私は機嫌がいい。
しばらくこのお兄さんとお話してみたいと言う気になった。
「そうよ、今ここで1人でミュージカルできちゃうくらい!」
「へぇ、そりゃあよかった」
お兄さんは頬杖をついて、微笑みながら私を見つめた。
「お兄さんはどう?良好?」
「ん?うーん、人探しをしているんだけど、これだ!て女に中々出会わなくてね」
「それは残念ね」
お兄さんは飲み物の淵をくるくるとなぞって、眉を下げながら微笑んだ。
そんなポーズは取ってはいるが、実の所の感情が読み取りにくくて、不思議な人だなぁとぼんやりとそう思った。
「ビビッとくる運命の人って、突然現れるものよ」
私はジョルノ様との出会いを思い出しながらそう言う。
「少なくとも、俺にとっては君ではなさそうだ」
「少し引っかかる言い方ね!」
私は貶された気になって、ムッと頬を膨らませた。
するとお兄さんは、ごめんごめんと言いながら、私の髪に手を伸ばした。
「世間的に言えば褒めているんだよ。俺の好みは根性の曲がった性悪女なんだから」
そう言って、手で私の髪を弄ぶ。
私も何故か悪い気はせず、されるがままだ。
「君、クスリはやってる?」
「とんでもない」
「だろ?だから、俺にとっては君じゃあないんだ」
突拍子もない質問に驚いたが、お兄さんはいたって真面目なようだった。
確かにそんな女性が好みなら、私は的外れもいい所なのかもしれない。
「随分と変わった趣味なのね」
「好みは人それぞれだろう?」
お兄さんはひとしきり私の髪を弄ぶと、満足したようにスッと手を引いた。
その手を追って、あることに気が付く。
「飲み物の好みは同じなのにね」
ん?と小首を傾げたお兄さんが私の視線を追い、あぁ、と、納得したように呟いた。
「ここのキャラメルマキアートはうまいんだ」
「ふふ、私もとってもお気に入りなのよ」
そう言ってコクリとそれを飲むと、お兄さんも同じようにカップに口をつけた。
「…君がもう少し捻くれた女ならよかったんだけどな」
「へ?」
ぼそっと呟かれた言葉は、私の耳に届く前に風の音にかき消されてしまった。
目でもう一度と催促してみると、お兄さんはニヤッと笑い、内緒話をするように人差し指を唇に当てた。
「今、君と俺の唇、同じ味がするよ」
「んなっ…!」
全く予期していなかった台詞に、私はかああっと顔を赤くした。
お兄さんがあまりに艶っぽくて、こんなB級映画みたいな台詞にときめいてしまった。
危ない、私の心はジョルノ様のものなのに…!
私が動揺してガタッと席を立つと、お兄さんはニコニコと私に手を差し出して来た。
「また機会があれば会いたいな」
「…またこんな偶然があればね」
私は差し出されたお兄さんの手に、握手の代わりに空になったコップを差し出し、カフェテリアを後にした。
「なぁんか、また会える気がするんだよなぁ」
お兄さんはそう言って、笑みを浮かべたまま渡されたコップの淵をレロッと舐めた。
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