ジョルノ様は神様です! | ナノ



夏の暑さと君の体温


「わーい海ー!」
「泳ぐぞー!」
翌日、任務の終わった私達は水着姿でビーチに繰り出していた。
さんさんと照りつける太陽が眩しい、絶好の海水浴日和だ。
ナランチャは浮き輪を片手にわー!と海に向かって駆け出していた。
「うおー!つめてー!気持ちいいー!」
バシャバシャと海水を蹴り、ナランチャは楽しそうにはしゃぐ。
その様子をビーチパラソルの下で本を読むフーゴが呆れたように、しかしどこか優しそうに見つめる。
「バカは元気でいいですね」
「フーゴはこんな所に来てまで読書?」
せっかく海に来たんだから泳ごうと誘うも、首を横に振られてしまった。
「潮の香りを感じながらの読書も乙なものですよ」
「はぁー…私には遠い世界だわ」
私は全身に日焼け止めクリームを満遍なく塗りながら答える。
すると後ろでコーラを飲んでいたミスタが、よし!と気合を入れて太陽の下に出た。
「ちょっくらナンパに行ってくるわ」
ヒラヒラと手を振る彼を、応援するでもなく止めるでもなく見送る。
あまり結果は期待できないのだろうなぁと少し同情した。
隣のビーチパラソルを覗くと、アバッキオとブチャラティがビーチチェアでくつろいでいる様子だった。
皆、任務から解放されて思い思いに休暇を楽しんでいる。
私は視線を海に戻し、隣で女性に囲まれているジョルノ様の手を遠慮なしに引っ張った。
「ジョルノ様も、海へ行きましょう!」
返事は聞いていない!とでも言うように、ぐいぐいと海に向かってジョルノ様を引っ張っていく。
「そんなに引っ張らなくても逃げませんから」
「逃げなくても、取られちゃうかもしれないじゃないですか」
私が後ろでブーイングをする女性に目を向けると、ジョルノ様はスッと目を細めた。
「心配しなくても、彼女達みたいなのは好みじゃあないです」
「じゃあ、どんな人が好みなんですか?」
引いていた手をそのままに向かい合う形になり、もう一つの手もぎゅっと握る。
そして至近距離で見上げる。
「…」
ジョルノ様が無言でジッと私を見つめ、私はよくわからなくて首をかしげた。
「ジョルノ様?」
「その水着、とてもよく似合っていますね」
何の脈略もない、しかしとても嬉しい一言に、私は顔がかああっと熱くなる。
「な、何を急に…!見ないで下さい!」
「理不尽ですね…」
私が、あああっ…!と顔を覆っていると、ジョルノ様は先に海辺まで歩いて行ってしまった。
「…あ」
もしかして、はぐらかされたのかもしれない。
してやられたと、私も小走りにジョルノ様のいる海に向かった。
「つめたっ」
ちゃぷんと足をつけると、少し冷たい海水が肌に当たる。
ふくらはぎ辺りまで海水に浸かった所で、ジョルノ様に追いついた。
「ジョルノ様っ、もしかしてさっきの話…っわわ!」
私は急ぐあまり、海底の石につまずいてしまった。
ぐらっと体が揺れ、あ、転ける、と思った刹那、背中にぐいっと手が回され、そのままギュッと抱き寄せられた。
トクンッと人の温かさを感じる。
「っ気をつけてください。全く…危なっかしい人ですね」
ぴとっと密着した人物から、聞き覚えのある声がした。
「あわわっわ!ジョルノ様っ…!?」
少し汗ばんだジョルノ様の肌の感触が、生々しく手からじんわりと伝わってくる。
私は急激に恥ずかしくなり、バッ!と反射的に後ろに退いてしまった。
「ちょ、きょうこっ…」
その結果、
「わぷっ!」
バシャンッ!
水飛沫をあげて、私は水の中に大きく尻餅をついてしまった。
私はヘソの辺りまで海水に浸かり、口に入ってしまった海水のしょっぱさに夏を感じた。
「何をしているんです…」
「うええ…しょっぱい」
ジョルノ様がバシャバシャと近付いてきて、スッと少し屈みながら手を差し伸べる。
「ほら、立ってください」
「っぁ…」
私はその刹那、時が止まったかのようにジョルノ様に見惚れてしまった。
「どうしました?」
ジョルノ様は手を差し出した姿勢のままだ。
「いえ、任務中は意識していなかったのですが、ジョルノ様の水着姿、とても素敵だなぁと…」
太陽を逆光に私を見つめるジョルノ様は勿論水着姿で、引き締まった肉体に少し白い肌、まるで芸術品のようだと思った。
海が太陽に照らされキラキラと輝いて、よりジョルノ様を素敵に見せる。
「欲情でもしましたか?」
「な、何てこと言うんですか!」
私はかあああっ!と顔を真っ赤にして叫ぶ。
「冗談ですよ」
ぐいっと、少し強引にジョルノ様に引っ張られ立ち上がる。
ザパァッと海水の波紋が広がり、私はまたジョルノ様にぴとっと抱き寄せられた。
「もう…」
何だか先程からドキドキと胸が騒がしくて落ち着かない。
ジョルノ様の素肌は吸い付くようで、ほんの少し、控えめに腰をギュッと抱きしめてみた。
「どうしました?」
「…また転けると、危ないので」
とても苦しい言い訳だ。
しかしせっかくなので、もう少しこのドキドキを感じていたい。
「…そうですか」
てっきり引き剥がされるかと思いきや、ジョルノ様は立ち尽くしたまま動かなかった。
「引き剥がさないんですか?」
「昨日の任務で疲れているでしょう。…しばらくの間は、許します」
「…ジョルノ様…」
私はもう少し、ほんの少し力を入れてジョルノ様に抱きつく。
ジョルノ様の手は重力に任せたままで、とても独りよがりだけれど、私はとても幸せだった。
触れた肌から鼓動が、聞こえてしまいそうだ。
暑いはずなのに、この体温が今は心地いい。
私がドキドキとこのシチュエーションに酔っていると、どこからかビーチボールが飛んで来て私の頭に直撃した。
「いたっ!」
「なーにイチャイチャしてんだよー!」
「ナランチャ…!」
少し遠くでナランチャが楽しそうに野次を飛ばす。
私はムードを壊された憎しみを込めて、飛んできたビーチボールを手に取り、そして大きく振りかぶった。
「よくもやったなー!」
次はナランチャの顔にボンッ!とビーチボールがヒットし、私達二人はあははと笑い合った。
「ジョルノ様もほら!2対1で戦いますよ!」
ナランチャが構えるのを見て、ジョルノ様を呼ぶ。
少しの間の後、含み笑いをしたジョルノ様が仕方ないですね、と言って私の隣に並んだ。


こうして、私達の長いようで短い任務は終わった。


海シリーズ終わりです!
お疲れ様でした!
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