ジョルノ様は神様です! | ナノ



花火したり!


「まさか裏切り者がいるとはな…」
「面倒な事になりそうだ」
私達は車に乗り込み、皆で今後の話をしていた。
この任務は、私達が思っていたより相当面倒な案件であったようだ。
「はぁ〜遊ぶ前に日もくれちゃいそう」
長丁場になりそうな予感に、私は屈伸をして途方に暮れる。
そんな私にフーゴが目で注意をする。
「メールの履歴を過去まで遡った結果、ある法則性を持ってブツを渡しているようだ。アバッキオのリプレイで現場を抑えられるかもな」
「…」
アバッキオはタバコに火をつけながら静かにブチャラティの話を聞いている。
「メールの履歴で解決するなら、私の囮調査は無駄だったのかな」
「そんな事もないさ、おかげでパッショーネが絡んでるって事がわかったしな」
少ししょげる私の頭を、ブチャラティに優しく撫でられ、私はえへへ、と少し照れて笑う。
「じゃあきょうこ、アバッキオの任務について行ってやってくれ」
「へ?」
頭にブチャラティの手を乗せたまま、私はポカンと呆気にとられる。
「俺達もボスへの報告をすませたらすぐに合流する」
「ええ!?何で私が」
今日、あまりに私は酷使されている気がする。
「アバッキオはスタンドを使っている間 無防備になる。念のため護衛についてやれ」
言っている事はわかる。
確かにアバッキオには誰かがついて行くのが得策だが…。
「最悪な人選だな…」
アバッキオがため息交じりに言う。
そのセリフに少しカチンと来た。
「こっちの台詞よ。これ以上焼けたくないのに」
口では反論してみるが、ブチャラティが頼もしそうに、優しそうにこちらを見ているので、うぅ…と続きの文句が出てこなくなる。
アバッキオも同じなようで、ため息を吐きつつも、ゴソゴソと支度を始めている。
「…行くぞ」
「あーい」
気乗りはしないが、ブチャラティのご指名なら仕方ない。
ガチャッと車を開けると、ボソッと小声でジョルノ様が 気をつけてくださいね、と言った気がした。
「ジョルノ様!今何とっ…!」
「うるせぇ行くぞ」
私が確かめようとすると、アバッキオに水着の上から羽織ったパーカーの襟元を掴まれてズルズルと引っ張られてしまった。
「うああ!アバッキオ離してよー!」
「うるせぇ任務すんぞ」
そのままアバッキオに引きずられながら、私達は夕日の眩しい海岸に向かった。


「あ、ねぇアバッキオ見て、綺麗な夕日だよ」
私とアバッキオは目的地へ向かうため、二人で波打ち際を歩いていた。
ザザン…と押し寄せる波にサンダルを濡らしながら、真っ赤に染まった地平線を眺める。
「ロマンチックだね〜」
「てめーと見ても何も楽しかねぇけどな」
私がキラキラとした目でそれを見つめる側で、アバッキオはぶっきらぼうにそう言った。
キッ!と睨んでもどこ吹く風で、先々に私の前を歩いて行ってしまう。
「私だってせっかくならジョルノ様と見たかったわよ!」
バシャバシャと大股で歩き、アバッキオと距離を詰める。
ビシャッと水滴が飛んでアバッキオの服を汚し、アバッキオにぐいっと浜まで引き寄せられる。
「ジョルノジョルノうるせえやつだな」
「そりゃあ、私の世界はジョルノ様を中心に回っているからね!」
どうよ!と胸を張ってそう主張すると、アバッキオは呆れた顔で引き寄せた腕を離した。
「バカじゃねーの。自分ってもんがねぇのかよ」
「そう言うアバッキオも、ブチャラティを中心に世界が回ってるじゃない」
「…」
無言。
アバッキオの無言は肯定と受け取っていい。
チッと舌打ちをすると、アバッキオはドンッ!と私のお尻を蹴ってきた。
「痛ぁ!」
「今のはてめーが悪りぃ」
最初にバカにしてきたのはアバッキオのくせに…。
それでも茶化したのは悪かった。
私は蹴られた尻を撫でながら、ごめんごめんとアバッキオに謝る。
「ごめんね、ブチャラティは特別だもんね、私ももちろんそうだよ」
アバッキオはそっぽを向いてスタスタと歩いて行く。
それに小走りに近付き、ギュッと腕にしがみ付いた。
「ブチャラティのためにも、この任務完璧にこなさないとね!」
「…へいへい、威勢がいいこって」
パッパッと掴んだ腕は振り払われてしまったが、それでも機嫌は元に戻ったようだった。
よかった、ぎこちないままで任務を続けるのは精神的によくない。
私がホッと胸を撫で下ろすと、私の足先にパァンッ!と何かが飛んできた。
「!」
私とアバッキオはバッ!と背中合わせになり周りを見回す。
チラッと下を見ると、先程飛んできたのは銃弾だった。
また何処から撃たれるかと警戒していると、岩の影から黒いスーツに身を包んだ男が姿を現した。
その手には拳銃が構えられている。
「…お前らか。ビーチをコソコソ嗅ぎ回ってる連中は」
男は拳銃を向けたまま、ジリジリとこちらに近付いて来る。
「二人も殺せば、そりゃあバレるよな…」
「死体の片付け方かなり雑だったしね」
私達2人は何とも呑気な会話をする。
それでも隙は見せず、辺りはピリピリとした緊迫感で満ちていた。
そして男がグッと銃の照準を合わせる。
「どこの差し金か知らねーが、死んでもらう!」
パンパン!
連続して2発放たれた弾は、1つは私の肩を擦り、1つは耳の横スレスレを飛んで行った。
「危な!アバッキオ守ってよ!」
「てめぇのスタンドで何とかしやがれクソ女!何のためについて来たんだよ!」
男がチィッと舌打ちをし、また照準を私に合わせていると、私はスタンドを発動させて一気に男との距離を詰めた。
「ーーーーーッ!」
「なっどこに消え、ぐっ!」
思いっきり隙をついて殴りかかったが、私の攻撃は、男の屈強な腕にガードされてしまった。
「抑えられた…!」
私はそのままの勢いで次は足払いをする。
「ぐぅっ!」
ドタッ!
砂が舞い、男は砂浜に倒れこむ。
「チッ…目障りな女だ…!」
それでもまだ私に銃口を向ける。
ガチャッと向けられたそれを、勢い良く足で薙ぎ払う。
男があっ、と声を発した時、男の後ろからアバッキオが男の頭をガンッ!と踏みつけた。
「ぎゃっ!」
そして無表情で私が蹴り飛ばした銃を男に突きつける。
「1人で来るなんざ甘かったな」
そしてそのまま引き金を引いた。
パァンッ!と言う音の後動かなくなった男の喉に触れて脈を確認する。
そんな私の隣で、アバッキオはシュボッとタバコに火をつけた。
「夕暮れの海岸で花火たぁ、洒落てるとおもわねぇか?」
何のことだろうと見上げると、アバッキオが使い捨てライターをバキッと折ったかと思うと、中のオイルを男にビチャビチャとかけだした。
そして今しがたつけたタバコを男に
ポイッと投げつける。
すると、ぼああああっと勢い良く男から火の手が上がった。
「ひゅー、お見事」
「仕事しろよ、護衛様」
私が茶化すと、皮肉で返されてしまった。
私は自分の不甲斐なさを悔やみながら、暫くその花火を見つめた。


その後ブチャラティ達と合流し、ムーディ・ブルースで裏切り者の決定的な証拠を抑えた。
「まさかあの幹部がねぇ…」
ミスタが意外そうに呟く。
「どうする?ブチャラティ」
「今ボスに報告をしたが…始末する事になりそうだ」
アバッキオの問いに、ブチャラティがパソコンを操作しながら答える。
「運のいい事に近くのホテルに護衛をつけて宿泊しているらしい。今日の深夜あたりに、決行だな」
「ハードスケジュールだなぁ」
朝から囮調査や護衛で出ずっぱりの私は、つい弱音とため息をついてしまった。
「これが終われば明日は休暇だ。もうひと頑張りしてくれ」
ブチャラティに頭をポンっと軽く撫でられて、私はプゥッと頬を膨らませる。
ずるい。私はブチャラティのこれに弱いのだ。
「…よし!じゃあ最後の任務がんばりますか!」
私の言葉に、ナランチャがおー!と答える。
今までの頑張りを無駄にしないよう、もうひと踏ん張りやりますか!
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -