ジョルノ様は神様です! | ナノ



スイカ割りしたり!


車に待機していたフーゴに携帯電話を渡し、しばらくブチャラティ達とビーチを偵察した私は、今度はナランチャと囮捜査をする事になった。
入手したメールの内容を見るに、密売人にも各自の縄張りがあるようで、私達は次に、ビーチから少し離れた岩場に目をつけた。
流石にビーチチェアは置けないので、ピクニック用のシートを敷く。
ナランチャと二人でそこに座り、照りつける太陽の下ボーッと遠目にビーチを眺める。
シートを敷いたと言っても座り心地は最悪なもので、私は何度も姿勢や座る位置を変えるなど試行錯誤していた。
そんな私の隣で、足を放り出し不貞腐れたように、ナランチャが口を尖らせて嘆いた。
「ちぇー、こんな岩場じゃ遊べねーよー」
プラプラと足を揺らしながら、ナランチャは羨ましそうにビーチを見つめている。
誰よりも海を楽しみにしていたもんなぁ、と、一緒にはしゃいだ今朝の事を思い出す。
「任務が終わればあっちへ行こうよ」
あっち、と言いビーチを指差すと、ナランチャはパァッと表情を明るくし、嬉しそうにおう!と言って笑った。
「ビーチバレーしようぜ!あとスイカ割り!」
身振り手振りを交えながら、あまりに楽しそうに言うものだから、私もつられて笑顔になった。
ナランチャといる時はいつもそうだ、自然と元気に、笑顔になる。
「ナランチャのそういうところ好きだ〜」
「な、何だよ急に。照れるじゃん」
でもありがとうな!と、少し顔を赤らめた彼は、またお日様のような笑顔を見せた。
「しっかし、人がいねぇのな」
またビーチに視線を戻したナランチャが言う。
確かに今この岩場には私達の他には誰もいない。
小さな子供が遊んでいても良さそうなものだが、それさえない。
本当にこんな場所で麻薬の取引など行われているのだろうか…。
「ヤバイ…ここで長時間の張り込みになったらどうしよう…」
「やめてくれよ、俺、我慢強くねーんだよ…」
知ってる。と呟いて、私達2人は同時に肩をガックリと落とした。
ミスタと囮調査をした時はビーチだったおかげか早く終わったが、ここじゃあ本当に長期戦になってしまうかもしれない。
それにミスタと私は、ブチャラティの言う通りとても今時のちゃらんぽらんなカップル風味だった。
「やっぱりナランチャじゃあ寄ってこないのかなぁ…」
「なっ、子供扱いすんなよなー!」
私がぽそりと呟くと、ナランチャが不満そうに叫んだ。
私は慌てて訂正する。
「子供扱いと言うか、薬なんか使わなそうなんだもの」
「それって褒められてんのか?」
ナランチャが疑いの目でジトッとこちらを見つめる。
「褒めてる褒めてる。尊敬に値しちゃう!」
それを聞くと、疑いの眼差しを向けていたナランチャの表情が、みるみるうちに明るくなっていった。
「やったぜー!」
私は誤解されずにすんで、ホッと胸を撫で下ろした。
ふぅ、と、安心してコクリとジュースを飲むと、それがもう最後の一口だった事を思い出す。
「あ、飲み物なくなったから、私買ってくるね」
よいしょ、と足場の悪いそこを立ち上がると、ナランチャにヒョイっと空のペットボトルを取られてしまった。
「どうしたの?」
「俺が行くよ!」
照りつける太陽をバックに、ナランチャが高らかに宣言する。
「俺も一人前の男だからな!」
どうやら先程の答えが気に入ったらしい。
ニコニコと満面の笑みだ。
「ふふ、じゃあお願いするね」
「ついでにアイスでも買ってくる!」
ナランチャは、言うが早いか売店に向かって走っていってしまった。
残された私は1人、穏やかな海を眺める事にした。
ビーチのように賑やかではないものの、もう少し座り心地がよければ、ここもそう悪くないかもしれない。
でも長期戦は嫌だなぁ…。
そんな事を考えていると、少し遠くからジャリ、と誰かが歩いてくる音がした。
「お嬢さん、一人?」
声をかけて来たのは、日に焼けた金髪の青年だった。
「…ええ、一人よ」
私は少し考えて返事をする。
すると男は下品に笑い、先程までナランチャが座っていた場所に遠慮なく座った。
「さっきからさぁ、見てたんだよ、あんたの事。暇そうにしてるなーって」
言いながら舐め回すように私の体を上から下まで見つめる。
正直虫唾が走る程気持ちが悪かったが、アタリかもしれないので目を伏せてやり過ごす。
「なぁ、連れの子供もいなくなったようだしさ、ここで俺と、しねぇ?」
舌舐めずりをしながら股間を指差されて、あまりの嫌悪感に私は目を伏せた。
それをどう受け取ったのか、男は私を乱暴に押し倒し、上に覆いかぶさって来た。
「んっ…!」
ドンッと岩場に当たった背中が痛い。
そんな私に気遣いなど見せることなく、男はビキニを外しにかかる。
「ち、ちょっと待って」
私が腕をグッと掴むと、男はあからさまに不機嫌な顔になった。
「私、こんな所で恥ずかしいわ」
どんな場所でも嫌なものは嫌だが、男の気を引くために精一杯の恥ずかしそうな顔をする。
すると男は満更でもないようで、へへっと下品な笑い声をあげると、ポケットから小さな袋を取り出した。
「これを使えば、そんな事気にならないくらいぶっ飛んじゃうよ」
その袋には少量の白い薬が入っていた。
このビーチ、どれだけ麻薬が横暴してるのよ…。
などと考えながら、ターゲットがノコノコと現れてくれて少し安心した。
長期戦にはならずにすんだようだ。
「…ねぇ、それってどこで手に入れたの?」
「あ?」
「興味あるけど、安全第一かなぁって」
もじもじと指を擦り合わせると、男はチッと舌打ちをした。
「知らねーよ、俺も最近このビーチでもらうようになってさ」
その言葉に、ハズレかぁ、と少し落胆する。
「でも、パッショーネから横流ししてるって言う噂もあるみたいだぜ」
横流し…。
「ま、んなことよりいいことしようぜ」
男が袋を開けて中の粉を出そうとした瞬間、男の後頭部に何かがぶつかり爆発した。
「ぐあっ!」
どさっ!と男が私の隣に倒れ込む。
「きょうこに何してんだ!」
声のした方を見ると、エアロスミスを出したナランチャがこちらを睨んでいた。
「な、何が起きて…!」
スタンドの見えない男はパニックになったように何度も後頭部を触り後ずさった。
私はスッとその男の隣にしゃがみこむ。
「情報ありがとう。ハズレかと思ったけど結構なビックニュースかもしれない」
へ…?と間抜けな声を出して、男は私を見上げた。
「殺す義理もないんだけど、告げ口されても困るからあなたにも死んでもらうね」
「は?何言ってるかさっぱりわかんね…」
全てを聞き終わる前に、私はシートの上に置いてあった小さなハンマーを手に取る。
「ねぇ、スイカ割りは好き?」
そのまま一直線に男の顔面にそれを振り落とす。
ゴンッ!と鈍い音がして、男はそのまま動かなくなった。
シートで男を覆っていると、バタバタとナランチャがこちらに向かって駆けてきた。
「え!もう始末しちまった!?」
「うん。ごめんね」
「ちぇー、俺超間抜けじゃん」
そう言って転がっている死体の足を蹴る。
「そんなことないよ、このドリンクありがとう」
そう言って持っているコーラごとナランチャの手をぎゅっと握ると、ナランチャはまぁいいか!と、またお日様のように笑った。


余談

「ビキニの紐を外しにかかられた時は内心焦ったよ〜」
「だから…お前は警戒心なさ過ぎんだよ…」
はぁ、とミスタが呆れたようにため息をつく。
皆に事を報告すると、ブチャラティは車に乗り込み、フーゴやアバッキオと何やら作戦会議をしているようだった。
そう言う事があまり得意でない私やミスタは、こうして車を背に世間話をしていた。
「そんなんじゃそのうちどっかの輩に食われるぞ」
「大丈夫!いざとなればボッコボコにしてやるわよ!」
ギャングを舐めるなよー!と息巻いていると、ガラガラッと車の後部座席のドアが開いた。
そして背中に違和感が走る。
「ふぁっ…!?」
「本当に隙だらけなんですね、あなたは」
聞こえてきたのはジョルノ様の声で、同時に私のビキニがハラッ…と重力に任せて落ちそうになった。
「なっ、お前また乳がっ…!」
ミスタが慌てると、ギュッ!と後ろからビキニを強く引っ張られた。
「痛い痛いっ」
涙目で後ろを振り向くと、ジョルノ様が私のビキニの紐を両手でギュッと握っていた。
「今度からそんな事がないように、強めに縛っておきましょう」
どうやら外したのもジョルノ様のようで、ギュッギュッと強めにビキニを結ばれる。
「あ、ありがとうございます…?」
私はされるがままにジョルノ様に体を預ける。
「それと」
強めに結び終わり、ジョルノ様はツー…と私の背中を指でなぞった。
「ひっ…」
「例え囮調査でも、あまり誰彼構わず体を触らせたりするもんじゃないですよ」
私の背後にいるジョルノ様の表情はわからなかったが、少し不機嫌そうに聞こえたのは、気のせいでしょうか、ジョルノ様。
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