ジョルノ様は神様です! | ナノ



海で遊んだり!


ミスタ目線



「海だー!」
「海だぜー!」
翌日海岸に集合した俺達は、皆水着姿になり一般人を装いビーチに潜入していた。
水着になることで開放感がうまれたようで、きょうことナランチャは両手をいっぱいに広げて海に向かって大声で叫んでいた。
波の音がそれに返事をしてくれている!などと言って、ハイタッチをして喜んでいる。
「ここに来た目的を忘れんなよ」
ピシガシグッグと友情を確かめ合うきょうことナランチャの頭を、俺はポコっと軽く叩いた。
今日の天気は海水浴日和のかんかん照りの晴れ。
美人な姉ちゃんもたくさんいて、浮かれる気持ちは俺もよーくわかる。
しかし今日は任務で来たのだ。
程よく焼けたたわわな胸に気を取られてはいけないのだ。
俺がふぅ、とため息をつききょうことナランチャを見ると、にひひーと締まりのない顔をして反省など全くしていないようだったが、ひとまず騒ぐことはやめたようだった。
それを横目に見て、ブチャラティが任務の詳細を話し出す。
「まだ証拠があまりにも少ないので、ひとまず囮調査と同時にビーチの観察を行って、相手の状況を把握したい」
そこでブチャラティがきょうこの方を見る。
「で、だ。囮調査はきょうことミスタに偽装カップルを演じて行ってもらいたい」
その言葉を聞いた瞬間、きょうこはあからさまに嫌な顔をした。
「待ってブチャラティ、何で私とミスタなの。私ジョルノ様とがいいんだけど」
「ジョルノがいると女が集まってターゲットに嫌煙されてしまう。わざわざそんな集団に声はかけないだろう」
もう既に周りの女性たちの視線がジョルノに集まっていた。
きょうこは周りを見回して、諦めたような表情でオーケーオーケーと言ってヒラヒラと手を振った。
「それに、お前とミスタが一番今時のちゃらんぽらんな若者風だからな」
「凄くバカにされた気分だわ…」
きょうこははぁ、と重い溜息を吐いた。
「ま、のんびり行こうぜ〜」
このままではテンションが下がってしまいそうで、俺はきょうこの肩をガッと抱いた。
きょうこはそれに嫌な顔はせず、そうね、と微笑んで見せて、俺は少し安堵した。
「タバコや酒は置いて行くから、それなりのただれたカップルを演じておいてくれ」
その方が奴らは寄ってくるからな、と言い、クーラーボックスや折りたたみ式の椅子を渡される。
「俺達は俺達で行動をしてるから、何かあったら連絡してくれ」
ブチャラティの親切な言葉に、俺はへーいと適当に返す。
「あ!やだ、大変!あれ塗るの忘れてた!」
ブチャラティを含むメンバーが背中を見せて去って行くのをボーッと眺めている間に、きょうこは組み立て式のビーチチェアを設置し終わっていた。
女に力仕事を任せてしまったことに罪悪感を覚えていると、きょうこは何やらカバンをゴソゴソと漁り、手のひらサイズの瓶を取り出した。
「何だそれ」
「日焼け止めよ。塗るの忘れちゃってたの。ミスタ塗ってー」
設置し終わったばかりの真っ白なビーチチェアにうつ伏せ寝っ転がり、きょうこは俺を見上げてそんな事を頼んで来た。
「あ?もっと色っぽく頼んでくれたら塗ってやってもいいぜ」
「何それ、セクハラじゃん!」
きょうこはアハハと楽しそうに笑い、日焼け止めクリームの蓋をキュポッと取り外す。
透明な瓶の中で、白濁色の液体がちゃぽんっと揺れる。
「俺をジョルノだと思ってやってくれればいいんだよ」
「ジョルノ様…?」
ご丁寧に隣にもう一つ配置してくれたビーチチェアに腰を下ろして面白半分にそう言うと、きょうこは思いの外ドキッとした顔で頬を染めて視線を伏せた。
俺は普段見ることのない恥じらうきょうこを見てゴクリと喉をならす。
そしてきょうこがおずおずと話し出す。
「あ、あの、ジョルノ様、もしよろしければ、その…私の体を…触って…下さいませんか…?」
恥ずかしそうに眉を下げ上目遣いにそんな事を言われて、俺は一夏の間違いでも犯してしまいそうな気持ちになった。
しかしそれはあくまでジョルノに向けられたものだ。
俺はふぅ、と息をついて腰を上げる。
「どこの店の姉ちゃんだよ。ほら、塗ってやるからそれ渡せ」
「わーい」
キャラ変わり過ぎだっての。
ころっといつもの調子に戻ったきょうこに、俺はつい笑ってしまった。
瓶を受け取り、きょうこが寝そべるビーチチェアにギシッと片膝をつく。
「水着の紐外すぞ」
「うん」
細いビキニの紐をするりと外すと、真っ白で少し幼さの残る背中が露わになる。
吸い寄せられるようにツーと指で触れると、くすぐったいよと笑われた。
全くもって危機感と言うものがない…、一応俺も男なんだがな。
信頼されているのはとても嬉しいのだが、何か腑に落ちない気持ちで日焼け止めクリームを手に取り、きょうこの背中に塗る。
「ひゃっ冷たっ」
びくんっと跳ねる体は少女の中に女性を感じさせて、俺は悶々としながら少し乱暴にクリームを塗りたくった。
どうにかこの雰囲気を変えなければ…。
「なぁ、ジョルノとはどんな感じなんだよ」
「と言うと?」
「進展とかねーのかって聞いてんの」
キュッとくびれた腰にクリームを塗りながら尋ねる。
「進展ねぇ…あ、関節キスは2回もしたよ!」
「はぁ〜ん、…あのジョルノがねぇ」
日焼け止めを足しながら、それは少し意外だと驚いた。
段々とほだされているのは感じていたが、思っていたより距離が縮まっているようだ。
「まぁ、相変わらずジョルノ様は私に興味なんかなさそうだけど」
「そんな事ねーんじゃねーの?」
「そうかな?」
きょうこが首だけをこちらに向ける。
「最初よりは丸くなったっつーか…よくわかんねーけど」
ぬるんっと滑りのよくなった背中に、入念にクリームを塗りたくる。
脇腹や尻のすれすれまで手を伸ばしても、きょうこは全く気にしていないようだった。
「飲み会以降、結構甘かったりするじゃん」
「んー、言われてみれば」
何か思い当たる節があるのか、うーんと空を見て何か考え出したかと思うと、きょうこがいきなりバッ!と体を起こした。
「それって脈ありってことかな!?」
「知らねー…っておい!乳見えてる!」
紐をといていたビキニはビーチチェアに置き去りになり、ぷるんっと形のいいきょうこの胸が日の下に露わになってしまった。
俺は咄嗟に両手でそれをもぎゅっ!と鷲掴みにした。
「ふわあっ!」
咄嗟の事にきょうこは素っ頓狂な声をあげる。
「…こ、これは不可抗力だからな、むしろ感謝してほしいくらい…」
手はそのままに、ダラダラと暑さのせいではない汗が流れる。
きょうこの胸は俺の手には収まらず左右に零れ、しかし、コリっとした感触のそれが生々しく俺の手の平に当たり、俺は正直脳内がパニックだった。
しかしきょうこは何もなかったかのように涼しい顔で、
「うん、大丈夫だよ。ありがとね、ミスタ」
と言って、ビキニを拾い器用にそれを着た。
俺は焦ったやら安堵したやらで、どさっともう一つのビーチチェアに倒れこむようにして座った。
こいつは本当に、ジョルノ以外は見えてないのな…。
普通男にナマ乳を揉まれたら、もっと反応があるものじゃあないのか?
それだけ信頼されていれのだと思えば、まだ気分はいいが。
俺が未だに手に残るあの感触に悶々としていると、きょうこがガサガサとクーラーボックスを漁り出した。
「ビール開けちゃお〜」
「あ、俺もくれ」
は〜いと言って、ビールを投げて渡される。
これで少しは気分がスッキリすればいいなどと期待して、プシュッと缶を開けた。
ぐびっ
「ぷはぁー!おいし〜」
「ん、んまい」
暑い砂浜でのビールは最高だ。
きょうこも満足げにくぴくぴと飲んでいる。
さてこれこら何をするかなーとビールを飲みながら考えていると、ぬっと影が視界を覆った。
「ねぇそこのいかしてるお兄さんとお姉さん。気持ちいいこと、興味ない?」
現れたのはチンピラのなり損ないのような男で、歳は20代後半といった所だった。
その腕には注射の痕が何点かあり、ピンときた俺ときょうこは目配せをした。
「え、なになに〜凄く興味ある〜」
「とっておきの秘密だからさぁ、あっちの人が少ないところまで来てくれる?」
「行く行く〜!」
きょうこが仕事用の小さな鞄を手に、男のそばに駆け寄る。
「ほら、お兄さんも」
ニヤニヤと気持ち悪い顔の男に呼ばれ、俺もピストルズを忍ばせて、歩き出した男の後に続いた。


「じゃーん!これがとっておき!」
足場の悪い岩場に連れて来られ、男は小さな袋に入った白い粉を出してきた。
「えっこれって、もしかして麻薬…?」
きょうこがビックリしたようなトーンで言うが、もしかしなくとも、見たまんま麻薬だった。
これで砕いたフリスクだったらこの男をぶん殴っている。
しかし男はきょうこの反応が気に入ったようで、下品な笑みを浮かべきょうこに近付き、袋をヒラヒラと揺すった。
「でも麻薬自体はすっごく微量だから、検査にもひっからない。結構みんなやってるんだよ〜」
今ならカップル割しちゃうよ?ギャハハ、と男が一人で笑い出した時、きょうこが首を傾げて男に聞いた。
「これってどこから仕入れてるの?」
「おっと、流石にそれは言えねえなぁ」
「えーどうしても?」
「どうしても!」
きょうこはそっかぁ、と笑顔で答えて、男との間合いを詰めた。
「こっちも商売ッ…」
そしてみぞおちに力一杯の拳を叩き込んだ。
男はカハッ!と息をつまらせ、後ろに向かって倒れこんだ。
「何すんだてめぇッあぐゥ!」
起き上がろうとしたところを、俺がガンッ!と足で顔面を抑えて封じ込む。
「どうしても知りたいなぁ」
「なぁ、教えてくれよお兄さん」
きょうこが男の前にしゃがみこんでおねだりをする。
俺も頭上から、グリグリと足を踏みにじってお願いをする。
「こっちも信用ないと使いづらいからさぁ」
笑いながらそう言うと、俺の足の下で男が悔しそうにクソッと呟いた。
「何なんだこんのクソ野郎どもがッ…!」
そんなやり取りをしているうちに、スタンドで気配を消していたきょうこが男を縄で拘束し終わった。
「あ"っ!?」
それにやっと気付いた男は、慌てて体を無茶苦茶に動かして縄を解こうと試みる。
「うっ!クソッいつの間に!てめぇ!ほどきやがれ!」
そんな声など聞こえないとでも言うように、きょうこはコロコロと縛られた男を転がして海水の近くまで移動した。
「ふふ、お兄さん、海で遊ぶのは好き?」
きょうこが楽しそうにそう言って男の後頭部を掴む。
男は怯えた表情になり、真っ青な顔をブンブンと振った。
「な、やめろ!お前ら、一体何なんだ!こんな事してどうなるかわかってんのか!」
「ん?俺たちがどうにかなるって?誰に?どうされるわけ?」
俺が聞くと、男はグッと喉に出かかった言葉を飲み込んだ。
「教えてよ、手荒な真似はあまりしたくないの」
「この頭のネジ外れたクソ野郎どもが…!」
「…」
ドボンッ!
きょうこが男の後頭部を思いっきり掴み、勢い良く海水の中に沈めた。
ぶくぶくと派手に泡が湧き上がる。
突然の事で水中でパニックを起こしているようだ。
きょうこがザパァッ!と男の頭を水面に出す。
「ぶはっ!」
男は大きく口を開いて酸素を求める。
鼻水まで垂らして情けない姿だ。
「人目のつかない場所に連れて来てくれてありがとう。これでゆっくり尋問できるね」
え、と、男が疑問を投げかけるより早く、きょうこが再び男の顔を海に沈める。
またぶくぶくと泡が湧いて、縄で縛られた体もジタバタと暴れる。
やりにくそうなので、俺もそいつの体を抑える事にした。
「あ、ミスタ、ありがとう」
「構わねーよ」
ニッコリ微笑んだきょうこは、今拷問しているとは思えない程可愛く見えた。
泡が湧いて来なくなった頃、きょうこが男の頭をまた水面に引き上げた。
「ぶはぁッ!ゲボォッ!ハッハッ…カハッ!」
きょうこが男の息が落ち着くのを待って質問をした。
「これを渡した人の名前は?」
これ、と言って麻薬を提示する。
「女なんかに言うかよっ…!」
ドボンッ!
全部聞き終わるが早いが、また海に頭を突っ込む。
そして短いスパンで顔を引き上げる。
「はあ…ッ!」
「組織の名前はわかる?」
「し、しらねぇ、そんなッ」
ドボンッ!
「んっんー!」
「ははっ!失禁してやがるぜこいつ!」
苦しさなのか恐怖からなのか、男は失禁をしていた。
それを見て、きょうこはふふっと優しげに微笑んだ。
「ねぇ、気持ちいい?」
ごぽ、ごぽ、と空気の泡を吐く男の顔に近付き、きょうこは縛られた体を愛おしいもののように撫でた。
「窒息して、水を飲んで、苦しくって、気持ちいいね?だから答えてくれないのかな?」
ざぱあッ!と勢い良く顔を引き上げて、至近距離で男の顔を眺める。
男は涙を流しながらヒューヒューと荒い息を繰り返し、それでもキッ!ときょうこを睨んだ。
「こんのっ…変態野郎…!」
そしてまた海に沈められる。
「何か1つでもいいの、情報を、頂戴?」
そう囁いたきょうこは妙に色っぽく生き生きとしていた。
「俺、昔何かで読んだことあるぜ、ドMはドSになり得るんだって」
「それ、もしかして私のこと?」
ギャングなんだから、拷問なんてできて当たり前じゃない、と彼女は言ったが、それにしては楽しそうだった。
きょうこはジョルノに出会ってMに目覚めたと言っていたが、前から兆候はあったのかもしれない。
そんな無駄話をしている内に、男の体がビクッ!ビクッ!と今までになく痙攣しはじめ、ジタバタと暴れ出した。
もう限界なのだろう。
それでもきょうこは引き上げず、男の背中を慈愛の眼差しで見つめ撫でていた。
そしてビクンッ!ビクンッ!と体が大きく跳ねた頃、やっときょうこは男の頭を海から引き摺り出した。
「ッ…!ぶはぁっ!!ッハッハッハ!!ッカハッヒューッヒュー…!」
「落ち着いてからでいいよ」
きょうこは男の頭を自分の膝の上に乗せて、ぽんぽんと胸を叩いた。
しばらく荒い息を繰り返していた男が、そのうち涙を流しながらポツポツと話出した。
「俺は、っただ、頼まれただけでっ」
「誰に?」
「名前は知らねえ、ネットで知り合って、売った分だけ金が振り込まれるんだ!だから俺は何も知らねぇ!」
俺ときょうこは顔を見合わせる。
「じゃあそのメールアドレスでいいや、頂戴」
「ぽ、ポケットの携帯…取引先って書いてある」
「嘘はついてない?」
「本当だよ!だからもう終わりにしてくれよぉ…!」
俺が男のズボンから携帯を取り出しアドレス帳を調べると、確かに取引先と言う名のアドレスがあった。
履歴にも、薬の取り引きをしたやり取りが何件か残っている。
「あぁ、確かに確認したよ。ご協力ありがとう」
「そうだね、お望み通り終わりにしよう」
そう言って俺はピストルズを構える。
「え…」
「お前は何も知らねぇだろうが、でもお前は俺達を知っちまった」
「な、何言って…」
「情報が漏れると色々と厄介だから、ごめんね、軽いバイト感覚だったんだろうけど」
きょうこが膝からそいつを退かして立ち上がる。
「え、嫌だ、何考えてんだよあんた達、それでも人間かよ!」
「ギャングなもんでね」
バキュンッ!
真上から脳天に一撃。きっと即死だろう。
しかし万が一の事を考えて、縄はそのままに海に突き落とした。


ビーチに戻ると、俺達がくつろいでいたビーチチェアの周りにブチャラティ達が集まっていた。
「ご苦労だったな」
「あ、ブチャラティ!」
きょうこはとてとてとブチャラティに駆け寄る。
「殺しちゃったけど問題ない?」
「あぁ、やむを得ないだろう」
それを聞いて、きょうこはホッとしたようだった。
「そうだ、ターゲットに繋がるかもしれないメールアドレスと履歴ゲットしたよ!」
「そうか、なら、解析を頼みたいから、車にいるフーゴに渡して来てくれ」
「了解〜」
そう言われて、きょうこは走りにくそうにしながらビーチをかけて行った。
手持ち無沙汰な俺は、ビーチチェアに座り夏を満喫しているジョルノにちょっかいをかける事にした。
「間接キスしたんだってな」
「はい?」
いきなり話しかけられ、不思議そうにジョルノがこちらを見る。
「きょうこと間接キスしたんだろ?甘酸っぱいな〜」
ニシシと笑ってやると、少し驚いた顔をしていたジョルノが、ああ、と思い出したように言い、クスッと笑った。
俺はその反応がイマイチわからずに顔に疑問を浮かべていると、ジョルノは俺の髪の毛に手を伸ばし、サラッとそれに触った。
「髪にも、しましたよ」
「!?」
何だこのキザ野郎は…!
こんな奴にきょうこは任せられん!と、俺はきょうこの兄貴のような気持ちになり、ジョルノの伸ばした手をパシンッ!と叩き落とした。
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