ジョルノ様は神様です! | ナノ



夏ですよジョルノ様!


カラッとした晴天の空の下、私はジョルノ様を探して学校付近の大通りを歩いていた。
何と言っても今日から私達学生は夏休みなのである。
しかし通知簿の受け渡しや担任の長い挨拶やらで、クラスの終了時間がズレ、いつも通りジョルノ様と合流するタイミングを逃してしまった。
たまに待っていてくれる校門にもいなかったので、今は彼がよく利用しているカフェを虱潰しに捜索中だ。
何件目かのカフェを曲がると、同じ学校の女子生徒達がやたらと集まっているテーブルを見つけた。
ピョンピョンと跳ねてその輪の中心にいる人物を確認すると、そこには予想通り三つのコロネが美しいジョルノ様がいた。
私は考えるよりも早くその集団に割り込んだ。
「夏休みですよジョルノ様ー!」
もみくちゃになりながら叫んでみるも、私の周りに20人はいるであろう女子生徒の声にかき消されてしまう。
「ねぇジョルノ。夏休みは私と遊園地に行かない?」
「ジョルノ!私と美術館へ」
「ジョルノ、私の家へ泊りに来ない?」
口々に話す女子生徒の声に私は完全に掻き消されていた。
恋する乙女の力は凄まじい。
しかし、恋のパワーなら私も負けてはいない!
「ジョルノ様、ジョルノ様ー!」
香水と汗の匂いをかけ分けて、私は前へ前へと進む。
「聞こえていますかジョルノ様ー!!」
そしてついにジョルノ様が優雅にお茶をしているテーブルまでたどり着いた。
そしてバンッ!とテーブルに両手をついて、ジョルノ様の顔を真っ直ぐ見つめる。
「明日から夏休みですよ!!」
「騒々しい人ですね…」
どうやらジョルノ様は私に気付いていたようで、特に驚く様子もなく紅茶を置いた。
ああ、今日も一段と優雅で美しいです!
「海で遊んだり、スイカ割りしたり、花火したり、肝試ししたりしましょー!」
「はぁ!?ジョルノは私達と夏休み遊ぶのよ!あんたあっち行ってて!」
私がまた一歩ジョルノ様に近付くと、近くで睨みをきかせていた女子生徒にドンッと小突かれた。
「えっ先客がいたんですか?」
私はわりと強めに小突かれた二の腕をさすりながら、ジョルノ様に尋ねる。
「いえ、約束はしていません」
「そんなぁ、つれないわよジョルノ〜」
さらりと言ってのけたジョルノ様に、女子生徒はくねくねと体をくねらせてジョルノ様に擦り寄る。
私は自分の眉がピクンと動くのを感じたが、私はジョルノ様の彼女でもなんでもないので、特にそれを止めることはできなかった。
私がムッとして俯いていると、ジョルノ様が椅子から立ち上がり、私の袖をクイッと引っ張った。
「きょうこ、行きますよ」
「…!はい!ジョルノ様!」
ジョルノ様の進路にいた女子生徒が道をあけて、私もたたたっとジョルノ様の後を追いかける。
通り過ぎる間際、女子生徒の一人に
「調子乗ってんじゃないわよ…」
と囁かれたが、今は聞こえないふりをすることにした。


「丁度いい、次の任務は海だぞ」
アジトに着いて夏の計画を話したところ、ブチャラティから嬉しい発表があった。
私はジョルノ様と顔を合わせてパアッと表情を綻ばせた。
「やったー!ビーチバレーしよー!」
「いえーい!」
両手をあげて喜ぶ私に、ナランチャも一緒にはしゃぎだした。
二人でハイタッチをしていると、ソファで足を組んでいるミスタがやれやれといった顔でこちらを見た。
「ガキは無邪気なこった」
「任務で行くんだからな、勘違いしてんじゃねーぞ」
それに重ねてアバッキオが煙草をふかせながらぶっきらぼうに言う。
「うん!」
「ああ!」
「返事だけは立派なもんだぜ…」
声を揃える私とナランチャに、ミスタが呆れたように笑った。
私達がわいわいと話していると、今まで黙っていたジョルノ様が口を開いた。
「ブチャラティ、任務の内容は?」
「ああ、夏休みの学生や家族連れを狙った麻薬の取り引きの取り締まりだ」
ブチャラティが話し出して、今まで騒いでいたメンバーも黙り耳を傾けた。
そんなメンバーに目をやり、ブチャラティが書類を片手に話し出す。
「どうやら正規ルートから仕入れている訳じゃあないみたいでな。パッショーネの許可も取ってないってもんで、そいつらへの制裁だ」
書類を閉じ、より真面目なトーンでブチャラティが続ける。
「結構な数がいる場合もあるから、今回は全員で行くぞ」
おう!と。ナランチャやミスタが威勢良く答える。
皆揃っての任務は久しぶりだ…。
私は不謹慎ながら少しウキウキしてしまい、ハッ!とあることに気付く。
「ブチャラティ!」
「なんだ?」
「お菓子は何ユーロまでですか!?」
お前、これは任務だぞ!とミスタが私を注意する。
仕方が無いじゃあないか、皆で海に行くなんてとても素敵な遠足のようで。
私がちぇーと唇を尖らせると、ブチャラティが書類で私の頭をぽんっと叩いた。
「4ユーロまでだ。ちなみにバナナはお菓子に含めないこととする」
「マジかよ〜!」
ナランチャが叫んで頭を抱える。
「もう完全に遊びに行く気ですね…」
「お前ら行く前から浮かれてんじゃねーぞ!」
フーゴがため息をついて、アバッキオがあからさまに嫌な顔をした。
「だって楽しいもん!ね!ナランチャ!」
「おう!どっちが遠くまで泳げるか競争しようぜ!」
「負けないよー!」
私達は周りのメンバーなど放っておいてきゃっきゃとはしゃいだ。
だって楽しみなものは楽しみなのだ。それに、
「ジョルノ様の過ごす、初めての夏ですから!」
パッと振り向くと、突然の名指しにジョルノ様は少し驚いた顔を見せた。
そんなジョルノ様の隣に並び、ピトッと肩に密着する。
「私、とってもドキドキして、すっごく楽しみなんですよ!」
「…そうですか」
ジョルノ様は私より高い目線から私を見下ろし、目を伏せ、グイッと私の体を引き剥がした。
「サメが出ても助けませんからね」
「むしろ私がジョルノ様をお守りしますよ!」
どんと構えていてください!と拳を握ると、ジョルノ様は少し表情を綻ばせ、期待しています、と言った。


こうして、ジョルノ様と私の始めての夏が始まった。


海シリーズ少し続きます
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