ジョルノ様は神様です! | ナノ



可愛いところもあるじゃないですか


「…ふぅ、まさかこんなに大量のチンピラが絡んでいるとは」
そう言ってきょうこはパンッパンッと両手を叩いた。
目の前には縄張りで最近騒ぎを起こしていたチンピラが、ざっと10人程倒れている。
それはほとんどきょうこが倒したもので、なるほど、これならボスに信頼されるのもわかるな、と僕は素直に感心した。
「お疲れ様です。しかし、かなり時間が押してしまいましたね」
今日はブチャラティに街の見回りを頼まれている。
今はまだその中間あたりで、しかしチンピラを倒すのに時間をロスし、もうすぐ日が暮れるような時間になってしまった。
「すみませんジョルノ様!こんな簡単な任務なのに時間を取らせてしまって」
たった今活躍したのに、きょうこは深々と頭を下げてきた。
僕は少し申し訳ない気持ちになり、何てことはないのだと言いかけた瞬間、きょうこがパッと顔をあげて言った。
「なのでジョルノ様!こんなダメな私にお仕置きをして下さい!」
少しでも労わる気持ちを抱いた僕がバカだった。
キラキラとこちらを見つめるきょうこを見て、僕は呆れてため息をついた。
「褒めるならまだしも、罵倒なんてしませんよ。あなたのおかげでチンピラを倒せたんですから」
「えええー、それならば、ご褒美として罵って下さい!」
「意味がわかりません…」
本当にきょうこと話すと疲れる。
もっと普通のご褒美はないのかと駄目元で伺うと、彼女はそうですねぇと空を見上げた。
そして、僕と反対にこのやりとりを楽しんでいる様子の彼女は、冗談でも言うようにさらりと言った。
「なら、ご褒美のキスを下さい」
ニコッと笑顔でそう言った彼女を、僕はポカンと間抜けな顔で見つめてしまった。
ご褒美の、キス…?
そんな僕に気付いたのか、きょうこはハッ!として、焦った表情で手をブンブンと振った。
「え、あ、冗談ですっ!忘れてください!」
彼女は失言だ!と言った風に顔を真っ赤にして、頭を抱えてしまった。
いや、しかし…そうか。
「僕に、して欲しいんですか?」
「へっ?」
「キス」
そう言って僕が自分の唇をトンっと指で叩くと、きょうこはますます顔を赤くして、俯いて、あ、あう…と言葉にならない声をあげた。
「そ、そりゃあ、そうですよ…」
好きなんですから…と、もごもごと口ごもりながら、きょうこはジャリ…と足元の砂利を踏む。
「へぇ…」
僕がフッ…と笑うと、きょうこは、何ですか!もう!と、逆ギレのように叫んだ。
しかしその頬は真っ赤に染まり、目には羞恥の涙がたっぷり蓄えられていて、全くもって怖くはない。
僕はそんな彼女に近付き、くいっと顎を持ち上げた。
途端に、ビクッと彼女の体が緊張で固る。
「ジョルノ、様」
「黙って下さい」
きょうこの熱に浮かされたように潤んだ瞳が僕を不安そうに見つめる。
そうして、僕は自分の人差し指と薬指にちゅっとキスを落として、それを彼女の小さな唇にぷにゅっと押し付けた。
「…っ!」
「ご褒美です」
僕が薬指をペロリと舐めて見せると、固まっていたきょうこが更に顔を赤くして口を覆った。
「ふわああああああああ!」
夕暮れ時のナポリの街に彼女の間抜けな声が響き渡る。
僕はそれを聞きながら、可愛いところもあるじゃないかと、内心ほんの少しの愛しさが湧いたのであった。
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