ジョルノ様は神様です! | ナノ



どうかお近付きに


早朝、私はいつも通りの通学路を友人と歩いていた。
雲一つない空に何の変哲もない朝。
私はこの時間がとても好きだ。
たわいもない雑談をしながら歩いていると、友人が急に興奮気味に話をふってきた
「ねえきょうこ!今すれ違った人超かっこよくなかった!?超タイプなんだけど!」
そう言って私の肩をゆさゆさと揺すってくる友人の目はキラキラと輝いていて、他人事のように可愛いな、などと思った
「ごめん、話に夢中でちゃんと見てなかった」
「えええー!超オーラあったのに!きょうこってそういう事本当に無関心だよね」
残念そうな顔をしながらそう言って、名残惜しそうに後ろを振り向く。
朝のネアポリスはサラリーマンや学生で混雑していて、
そのオーラとやらのある男性の姿はもう見当たらないようだった。
友人は残念…と呟きながら、不意に私の腕に手を絡ませてきた。
「きょうこー、お節介かもしれないけどさぁ、あんたもいい年なんだし、もっと積極的に異性に興味持ったら?運命の出会いとか言ってらんないと思うのよ」
「うーん…へへへ…」
私はそれに曖昧な笑顔を返すしかなかった。
自分でもバカだとは思うけど、それでも私は信じている。
白馬の王子様とまでは言わないけど、こう、心臓を鷲掴みにされるような出会いを。
「まだ学生だし、きっとこれからビビッと来るような出会いもあると思うのよ!」
「ふーん?タイプとかないの?何なら紹介するけど」
「タイプ?うーん…」
何気なく周りを見回すと、あるカフェテリアに目が止まった。
キャーキャーと黄色い声をあげる女の子達の中に、その人はいた
ビビッと、きた。
「綺麗…」
私は無意識にそう呟いた。
「え?」
「彼、凄く綺麗…!」
心臓を鷲掴みにされたような感情に、私は全身が震えるのを感じた。
歩みを止めた私の視線を追った友人は、バツの悪そうな顔でゲッと言った。
「ジョルノ・ジョバァーナは流石に紹介できないわ…喋ったことない、そもそも相手にされない」
ジョルノ・ジョバァーナ…。その名前はクラスメイトから何度か聞いたことがあった。
かっこいいかっこいいと聞いていたが、まさかこんなに綺麗な人だなんて…!
「私、ちょっといってくる!」
「はぁ!?ちょっ。きょうこ!」
友人の声を背中で聞きながら、私は早足で彼のいるカフェテリアに向かった。
輪郭がハッキリするにつれて、私の心臓はより大きく高鳴っていった。
金色に輝く髪、凛とした顔立ち、透き通るような肌、一目でカリスマ性を感じるようなオーラ、その何もかもに惹かれた。
彼に何やら話しかけている女生徒を押しのけて、私は彼の前にズイっと出た。
彼はそれをチラッと見て、すぐに鬱陶しそうに目を逸らしコーヒーをすすった。
それさえかっこよくて、私は興奮を抑えきれず、ついとんでもないことを口走ってしまった。
「はじめまして!ジョルノ・ジョバァーナ様!すっごく綺麗ですね!」
「あなたに、一目惚れをしてしまいました!」
周りに居た女性がキャーッと悲鳴に近い声をあげ、口々に私を責める言葉を浴びせてきた。
そんな事は全く気にならず、私はジッと彼を、ジョルノ・ジョバァーナを見つめた。
彼はカップを上品にテーブルに起き、真っ直ぐ私を見つめてこう言った
「…何ですあなた、気持ち悪い」
ガーン
漫画ならきっと、私の頭上にはそんな文字が並んでいたと思う。
いや、冷静になればわかりきった答えだが、私の心臓を鷲掴みにされる出会いがこうもあっさりと拒否されるとは。
「ああーんジョルノもういっちゃうのー?」
私が固まっている間に、彼は代金をテーブルに起き、席を立ち、学校に向かってしまった。
それと一緒に彼を囲っていた女生徒達もついて行く。
「あんたアホでしょ」
どこかで見ていたであろう友人が、ぽんっと私の肩を叩いた。
「だってすっごく綺麗だったんだもん…一刻も早くお近づきになりたくて…!」
「後先考えなさすぎ。って言っても四六時中取り巻きに囲まれてるしねぇ。これくらいインパクトある方が逆にいいのか?」
友人はうーんと考えるそぶりを見せ、しかし満面の笑みで、ま、振られたけどね!と言った。
「ううう…確かにあっけなさすぎる振られ方だったけど、逆に燃えてきたよ!」
「はぁ…あんた本当に変わってる」
そう言って友人は笑って、でも応援してる、と言ってくれた。
行こ、と言われ、私達も学校へ向かって歩きだした。


「と言うことなんだけど!」
私はアジトのテーブルに両手をバンッ!とつき、メンバーに今朝の出来事を熱く語った。
「それ聞かされてどう反応すればいいんだよ…」
ピストルの手入れをしながら、ミスタは心底どうでもよさそうに、しかし律儀に返事をした。
「何か手はないかなぁって、強いて言うなら助言を求めてるの!」
「助言って、きょうこ、もう嫌われてるんじゃねーの?」
ナランチャの何の悪意もない純粋な言葉に、私はまたガーンと突き落とされた。
それに畳み掛けるように、フーゴが
「第一印象最悪ですしね、諦めた方がいいんじゃないですか?」
と言った。
それでもめげない。運命の出会いを私は諦めない!
「もっと親身にアドバイスしてよ!ね!アバッキオ!」
「全く興味ねぇ、てか心底くだらねぇ」
期待の眼差しでアバッキオを見るも、目も合わせずピシャリと言われてしまった。
「イタリア人は皆そっけない…」
私は床に座り込み、体全体で悲しみを表現してみたが、誰も慰めてくれなどしなかった。
虚しくなって椅子に座っているミスタの膝に顎を乗せ、何か言ってよ…と頬を膨らませると、ミスタは呆れた顔で頭をポンポンと叩いた。
「突拍子がなさすぎんだよ」
確かにいきなり知らない人に一目惚れしました!なんて言われたら引くのは当たり前か。
「でも、本当に綺麗な人だったんだぁ…髪はキラキラ煌めいて、目は吸い込まれそうで、肌はきめ細かくて。いても立ってもいられなくて!」
「へいへい」
「適当にあしらわれたぁ…」
ミスタの膝に額を押し付け、途方にくれた。
彼にとって私との出会いは最悪なものだっただろうけど、どうにかお近付きになりたい。
私が悶々と考えを巡らせていると、アジトのドアがバンッ!と開いた。
そこにいたのはブチャラティと、そして
「昨日話した新しい仲間を連れて来た!」
「ジョルノ・ジョバァーナだ」
そう言って紹介された彼を見て私はぱぁっと表情を明るくし、対象に彼は表情を曇らせた。
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