ジョルノ様は神様です! | ナノ



あなたの唇はフランボワーズ


空は綺麗な茜色と青のグラデーション。
こんな日は空を眺めるだけで少しロマンチックな気持ちになれる。
私は赤く染まりつつある夕暮れ時の空を仰ぎながら、そろそろ現れるであろう待ち人の事を思い胸を弾ませた。
初めこそはっきりと嫌だと言われていたが、最近ではこの待ち伏せにも慣れたようで、たまに待ちましたか?なんて聞かれる事もある。
それがまるで待ち合わせをしている恋人同士のようで、私はキュンキュンとときめいてしまうのだ。
その時のことを考え、つい思い出し笑いをしていると、不意に肩をポンと叩かれた。
「何、だらしのない顔をしているんですか。まるで不審者ですよ」
「あ!ジョルノ様!」
噂をすれば何とやらで、そこには私の待ち人、ジョルノ様が立っていた。
太陽の光に照らされた髪の毛はキラキラと輝いていて、今日も一層美しかった。
「ジョルノ様の事を考えていたんですよー」
「やめて下さい」
そう言ってジョルノ様はスタスタと歩き出す。
私もそれに続いて校門を抜けた。
「今日はいい天気でしたね」
もう沈みかかった太陽を見て目を細めると、ジョルノ様もそうですね、と空を見上げた。
「あ、そうだ、ジョルノ様」
「何です?」
「こんな日はジェラートが食べたくなりませんか?」
下から覗き込むようにして言うと、鬱陶しそうな顔のジョルノ様にデコピンを食らった。
「痛いっ」
「その癖、何とかならないんですか?」
「す、すみません」
私は無意識に覗き込んだだけだったので、そう言われても困ってしまった。
前にもこんな事があったのだろうか?
次からは気をつけよう。
私はヒリヒリと痛む額をおさえながら、先を進むジョルノ様の服をくいっと引っ張った。
「それで、あの、大通りに評判のジェラート屋さんがあるんですよ。よければ一緒にどうですか…?」
私がそう言うと、ジョルノ様は少し考える素振りを見せて、その後ジッと私の顔を見つめた。
その顔があまりにかっこいいものだから、私は顔がぽぽぽっと熱くなるのを感じた。
「ジョルノ様…?」
「…どうせ断っても無理矢理連れて行かれるんでしょうし、構いませんよ」
それを聞いて私はパァッと表情が明るくなった。
「本当ですか!?ありがとうございます!」
本当に、最近のジョルノ様は私に優しくなった気がする。
さあ!行きましょう!と言って、ジョルノ様に手を差し出すと、スルーして先を行かれてしまった。
優しくなったとは言っても流石に手を繋いではくれませんよね…!
少しがっかりしながらも、私はジョルノ様の背中を見つめてフフッと微笑んだ。


「わぁー!季節外れなのにたくさんありますね!ジョルノ様!」
「あまりは騒がないで下さい、恥ずかしい人ですね」
私がジェラートの並ぶケースにびったりとくっ付いてはしゃいでいると、ジョルノ様に窘められてしまった。
しかしテンションが上がらざるを得ない種類の豊富さに、私は興奮を抑えながらどれにしようかと悩んだ。
「ジョルノ様はどれにします!?」
興奮した表情でジョルノ様の方を振り向くと、何故かぷっと吹き出されてしまった。
「どうかしましたか?」
「いえ、興奮であなた、凄く面白い顔をしていたので」
そう言ってまたククッと笑いを抑えるジョルノ様を見て、私はかああっと顔を赤面させた。
何故だろう、凄く恥ずかしい。
私が顔を手で覆ってダメージを受けていると、ジョルノ様が隣に並んで店員さんに話しかけた。
「オススメは何ですか?」
「一番人気はジャンドゥイア、所謂チョコレートですね。二番人気はフランボワーズです」
「では、それを一つずつお願いします」
かしこまりました、と言い店員さんがテキパキとジェラートをコーンに乗せていく。
「お会計は一緒でお願いします」
「ええっ!そんな!私が誘ったのに悪いですよ!」
ジョルノ様が鞄から財布を出したが、私はそれを押さえつけた。
「女性に出させる訳にもいかないでしょう。僕に恥じをかかせるつもりですか?」
「う、…」
そう言われてしまうと弱い。
イタリアでは男性が奢ることが当たり前と言う風潮があるように思う。
それに今のやりとりを店員さんに聞かれているので、もうここは諦めるしかなかった。
「お待たせしました」
私は店員さんに2つのジェラートを渡され、その横でジョルノ様がお会計を済ませた。
イタリア文化だとしても慣れない。せめて割り勘にして欲しい。
などと可愛げのない事を考えていると、またジョルノ様に肩をポンと叩かれた。
「アジトに向かいながら食べましょう」
店の外に出るともう空は紺色に染まりつつあった。
またアバッキオに遅いと文句を言われそうだ。
「チョコレートの方、ください」
私は持ちっぱなしにしていたジェラートを急いでジョルノ様に渡した。
「ジョルノ様すみません。ご馳走になってしまって」
「ジェラート一つくらいで大袈裟ですよ」
そう言ってジョルノ様はジェラートを食べようとして、あ、と言うと私の方を向いた。
「どうかしましたか?」
「あまり気にするようでしたら、それ、一口ください」
それでもうこの話は終わりです、とジョルノ様は言った。
しかし、一口と言ってもコーンに乗ったジェラートをどうやって…と考えていると、不意にジョルノ様の顔が接近してきて、私の目の前にあったジェラートをあむっと食べてしまった。
「っ…!!??」
「評判通り、美味しいですね」
そう言ってペロッと口の端を舐めるジョルノ様はあまりに色っぽくて私は軽い目眩に襲われた。
「あなたも早く食べてみて下さい」
「は、はい」
そう言われてジェラートを食べようとしたが、途端、私はハッとした。
今私が持っているこのジェラートは、今ジョルノ様が口を付けたものだ。
つまりそれを食べると言うことは、ジョルノ様と、か、間接、間接キスをすると言うことになる。
私があわあわと慌てていると、ジョルノ様が不思議そうにこちらを見て、そして何かを納得したようにニッと笑った。
「どうしました?早く食べないと溶けますよ」
そう言ってジョルノ様は自分のジェラートをパクパクと食べ始めた。
私はそんなジョルノ様をぐぬぬと見つめながら、己と葛藤した。
目の前にはジョルノ様が口をつけたジェラート。
これを一口食べればジョルノ様と間接キスをすると言うことになる。
ジョルノ様はそれをわかっていて意地の悪い顔でこちらを見ているのだ。
「ぐぬ…!」
私が両手でジェラートを持ちながら葛藤していると、指につつ…とジェラートが垂れてきた。
「わわっ!」
私はそれを反射的に舐めて、溶けてきた部分のジェラートも食べてしまった。
食べてから、あっ、と気がつく。
「あああああ…!」
かああああっと一気に顔が熱くなる。
ファーストキスは本当に甘酸っぱいんだ…。と、そこまで考えて羞恥で顔を覆った。
甘酸っぱいのはフランボワーズのせいだ!
そんな私に追い打ちをかけるように、ジョルノ様が
「こっちも一口どうですか?」
なんて聞いてきた。
「け、結構です!」
私はそれだけ言うのが精一杯で、再び垂れてきたジェラートをどうしてくれようかと涙目で考えた。
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