ジョルノ様は神様です! | ナノ



愛の魔法


よく晴れた昼下がり、今日も変態は元気であった。


「おかえりなさいませ、ジョルノ様!」
アジトのドアを開けた僕を待っていたのは、黒の服に白いフリルのついたエプロンを着た変態だった。
僕は頭痛を覚えて頭に手をやり、その変態に問いかける。
「…何ですかその格好は」
「ジャッポーネで一世を風靡したメイドさんと言うやつです!」
メイド…。
言われてみれば確かにそれはメイド服であったが、僕の知るメイド服よりスカートの丈がえらく短く感じられる。
膝上15cmもないのではないか。
彼女はその場でくるっと回り、自慢げにスカートを広げて見せる。
太ももが露出され、下着が見えるギリギリのラインにこちらがヒヤヒヤとする。
「ジョルノ様の雌奴隷らしくご奉仕しようかなーと」
「誰が誰の何奴隷ですか…」
僕は頭を押さえながら、はぁ、とため息をつきドアを閉める。
突っ込みどころが多すぎて、どこから突っ込めばいいのかわからない。
「…とりあえず軽食をとらせて下さい」
僕はそんな彼女の隣をすり抜け、椅子に座りメニューを開いた。
ずらっと並ぶメニューから軽めのものに目を通していると、彼女がスッとメニュー表を取り上げてしまった。
僕はあからさまにむすっとして彼女を見上げる。
しかし彼女は、ニコニコとした笑顔で僕に話しかける。
「軽食でしたら、私が作ります!」
何を言い出すかと思えば、胸にドンと手を置き彼女は高らかにそう言った。
「あなた、料理なんてできるんですか?」
「できますよ!実はそれなりに得意です!」
そう言えば前に器用貧乏だなんて言っていたなと思い出す。
メニュー表は彼女の後ろに隠されてしまい、奪い返す気にはならなかった僕は、彼女の申し出を受けることにした。
「いいでしょう。ただ、不味かったら残しますよ」
「ありがとうございます!では、さっそく調理に取り掛かりますね!」
そう言って彼女はお辞儀をし、短いスカートを揺らしながらパタパタと厨房へ向かった。
一般人を簡単に厨房に入れる店側に驚いたが、それも普段の彼女の人当たりの良さあっての事なのだろうか。
何だかんだで、周りは皆彼女に甘い…。と、そこまで考えてハッとする。
「…僕も、大概ですね」
僕は苦笑し、用意してあった紅茶を一口飲んだ。


「お待たせしました!」
ほどなくして、上機嫌なきょうこが皿を持ってやってきた。
その皿にはやたらと膨らんだオムレツが乗っていた。
「これは…?」
「本日のオススメ!メイド特製オムライスです!」
オムライス…?聞き覚えのない料理名に僕は一気に不安になる。
そんな僕の不安は御構い無しに、彼女はケチャップを取り出すと、そのオムライスと言う料理に何やら文字を書き出した。
「Ti…amo…って。何を書いているんですか」
「隠し味は愛情って言うじゃないですかぁ」
ルンルンと上機嫌な彼女は、ケチャップをテーブルに置くと、次は胸の前で手をハートの形にした。
「では、最後にとっておきです」
こほん、と一つ咳をすると、彼女は満面の笑みでオムライスに向かって
「おいしくなぁれ、萌え萌えキュンッ!」
と唱えた。
僕の背筋にゾゾゾッと悪寒が走る。
「何です今のゾッとする呪文は」
「ジョルノ様が私を好きになる魔法をかけました」
「呪いじゃないですか」
僕は出されたスプーンで、恐る恐るオムライスを切り分ける。
すると中からケチャップで味付けされたであろう米が出てきた。
ベーコンや玉ねぎなどが入っていて、純粋に美味しそうだ。
「本当はチキンライスなんですけど、ジョルノ様は鳥が苦手と伺ったので」
わざわざ僕に配慮してくれてチキンをベーコンに変更してくれたらしい。
性格は難ありだが、こういう一面は素直に感心する。
僕は少し嬉しく思いながら、パクッと一口オムライスを口に含む。
「!」
「ど、どうですか…」
彼女が不安げに僕に問う。
「おいしいです…」
意外なことに、彼女の料理は普段ここで食べる料理と並ぶのではないかと言うほど美味しかった。
はじめて食べる料理だが、とても食べやすくパクパクとオムライスを口に運ぶ。
そんな僕を見て、彼女はパァッと顔をほころばせた。
「愛がたくさん詰まってますからね!」
この美味しさが愛の量なら、僕は相当愛されているらしい。
今更ながらに少しむず痒くなる。
「なぁジョルノ。俺にも一口くれよ」
パクパクと食べ進めていると、ミスタがひょいとソファから身を乗り出してきた。
「嫌です」
そう言って彼に背を向ける。
「ケチケチすんなよー」
後ろから不満の声が聞こえるが答えずにいると、ちぇっ、と諦めたような声がした。
「ジョルノばっかずりぃな」
そう言ってミスタが勢い良くソファに座った。
少し意地汚かっただろうか。
しかし、彼女が僕のために作ったものを誰かに食べさせるのは凄く勿体無く感じたのだ。
ふと顔を上げると、ニコニコとこちらを見る彼女と目が合う。
「作って、よかったです」
そう言って微笑む彼女を見ると、よりオムライスが美味しく感じられるのだった。
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