ジョルノ様は神様です! | ナノ



愛しい飼い犬


今日は皆のスケジュールが合ったので、メンバーでの飲み会が開かれた。
未成年である筈のきょうこも、飲み慣れた様子でワインをぐいぐいと飲んでいた。
おかげで顔は真っ赤になり、目もトロンと蕩けている。
そんな無防備な姿でフーゴとナランチャにピタッと寄り添い、何やら絡んでいる様子だった。
フーゴはアルコールに強いのか普段と変わらない様子で、少し鬱陶しそうに、しかし律儀にきょうこに相槌をうっている。
少し離れた場所にいるため何を話しているのかは聞こえないが、きょうこは楽しそうに、服がはだけている事にも構わず喋っていた。
「…」
何か、面白くない。
この間の任務のヘマの件も真っ先に慰めてもらいに行ったのはミスタで、アルコールが入り素になった彼女が絡むのはフーゴやナランチャ。
胸のモヤモヤを感じて僕はハッとして、持っていたワイングラスを一気に煽った。
彼女が誰と仲良くしようが僕には関係のない事だ。
離れてせいせいするべきでもあるはずだ。
コトン、とグラスをテーブルに置くと、先程までフーゴとナランチャにべったりだったきょうこがこちらにたたたっと走り寄ってきた。
僕は何か気まずさを感じ、無意識に顔をそらした。
「ジョルノ様ぁー!聞いてくださいよ!さっきからフーゴが適当な返事しかしないんですよー!」
広いソファにも関わらず、きょうこはピトッと僕に寄り添ってきた。
こんなに彼女が接近してくるのは初めてかもしれない。
「…どうせあなたが、くだらない話でもしたんでしょう」
「くだらなくないですよー!」
呂律も怪しい彼女が、僕の腕をぎゅっと掴んでいやいやと首を振る。
すぐそばにいる彼女から強いアルコールの香りがした。
もう相当飲んでいるようだ。
僕がさっさと振り払おうと彼女の手を掴むと、彼女がグッと顔を近付けて言った。
「私は、いかにジョルノ様が素晴らしいか、力説していただけなんです!」
「…は?」
伸ばした手はそのまま彼女の手を掴んで停止した。
「ジョルノ様もチームに慣れてきたとは思いますが、まだメンバーとの距離感を感じるんですよ!だから、余計なお節介なのですが、みんなにもっとジョルノ様の良さをわかってもらおうと思って!」
まさか自分の事を話していただなんて驚いて少し固まってしまった。
「それなのにはいとかええとか適当な返事ばかりで…嫌になっちゃいますよー!」
そう言って彼女はワイン瓶をそのままグイッと煽った。
流石に無茶な飲み方だと止めに入る。
「心配してくださってありがとうございます。…あなたがそう思ってくれているだけで、じゅうぶんですから」
言いながら彼女からワインのボトルを取り上げる。
彼女はびっくりしたような顔で僕を見て固まっていた。
「ジョルノ様…優しい…」
彼女はうるうると瞳をうるませて、僕の手をぎゅっと掴んだ。
「ジョルノ様!好きです!」
「…!」
「だからジョルノ様にも、ここを好きになって欲しいんです、もっとみんなと仲良くなって、もっとチームになりたいんです」
彼女はうるうると瞳に涙を溜めながら言う。
彼女は彼女なりに、チームに後から入った僕を気にしていてくれたのだ。
素直にそれが嬉しくて、僕は彼女の頬に手を添えた。
「ありがとうございます」
「ふふ…えへへ〜」
すると彼女は、先程の真面目な顔はどこへやら、だらし無いくらい幸せそうな顔で微笑んだ。
そして頬に添えてある僕の手にそっと手を添えた。
「ジョルノ様の手は暖かいですね」
目を伏せて幸せそうに言う。
「手も、顔も、声も、中身も、全部好きです」
こーんなに!好きです!と言って、彼女はめいいっぱい両手を伸ばした。
それがあまりに子供っぽくてつい笑ってしまった。
「はいはい」
「本当なんですからねー!」
彼女は怒ったようにこちらを見つめる。
「信じてください!」
「えぇ、知ってますよ」
「どうだか!」
神妙な面持ちの僕には気付かず、彼女はすくっと立ち上がるとボトルを片手に次はブチャラティの元へ行ってしまった。
また僕の話をするのだろうか。
僕は彼女の背中を見つめながら、ワインを口に含んだ。


「ジョルノ様ぁ〜構って下さい〜」
ごろにゃーんとでも言うように、酔っ払って頬を真っ赤にしたきょうこが僕の肩にすりすりと頬を摺り寄せる。
夕方に開始された飲み会は深夜を迎え、既に皆は思い思いの場所で眠りについていた。
しかしきょうこは相当酒に強いのか、相変わらずのペースでワインを飲み続けている。
そしてソファに座る僕の横に居座り、先程から猫のようにごろごろと甘えてくる。
僕も酔いが回ったのか、何だかそれが悪くないと思え甘んじて受け入れている。
「ジョルノさまぁ、好きです」
「もう聞き飽きましたよ」
「何度言っても、伝えたりないのですよ」
そう言って彼女はぎゅううと僕の腕を抱きしめた。
普段なら恐れ多いなどと言って滅多にしない行動だ。
明日になって必死に謝る彼女の姿が目に浮かぶ。
それとも今日のことなど、忘れてしまうのだろうか。
そう思うと、少し口が滑った。
「僕も、嫌いではないですよ」
「…!本当ですか!?」
彼女は僕に預けていた体をバッと正すと、真っ赤な顔を驚きでいっぱいにした。
「私てっきり、嫌われているとばかり…」
えへへ、と笑った彼女は少し寂しそうで、普段の一直線な彼女とのギャップに少し心が締め付けられた。
それでも僕の口は素直ではないのだ。
「嫌いではないと言うだけで、好きではないですよ」
ツンと言ってのけチラッと彼女の顔を覗き見ると、相変わらず寂しそうに笑っていた。
「それでも、ジョルノ様に少しでも近付けたなら、私とっても嬉しいんです」
力なく笑う彼女を見ているとたまらなくなって、ソファに置かれた彼女の手をぎゅっと握った。
全部ワインのせいだ。
「っジョルノ様…?」
「…ありがとうございます。あなたが僕の事を気にかけてくれていること、凄く嬉しいんですよ」
僕がそう言うと、耳元で彼女が息を飲む音が聞こえた。
「っ当たり前じゃないですか。ただ私はジョルノ様もチームも、大好きなだけなんですから」
そっと彼女の手が僕の手に重なり、自分でもよくわからない感情が胸の辺りをぐるぐると回る。
これが何なのか、僕は頭を回転させるが答えが出ない。
「ジョルノ様になら、忠犬のように従いますよ」
そう言って微笑む彼女を見て、瞬間にもしかして、とある仮定に行き着いた。
数日前から彼女に抱いていたモヤモヤした感覚、それは、犬かもしれない。
飼い犬なのだ、彼女は。
基本的に可愛く利口で、悪さをすれば躾けてやればいい。
そして飼い犬が他人に懐くのは、少し腹が立つ。
ミスタやフーゴに抱いていた嫉妬はきっとこれなのだ。
「お手」
「?」
急に差し出された手に彼女は一瞬ぽかんとしたが、すぐに左手を僕の手に置いた。
僕はそれを満足げに眺め、笑顔で彼女の頭を撫でた。
「いいこです」
彼女は困惑した表情をしながら、しかし幸せそうにそれを受け入れた。
そうだ。
この気持ちは、ペットを愛でる気持ちなんだ。
僕は自分が出した結論に満足し、未だにワインをあける彼女を置いて他のメンバーと同じく寝る準備を始める事にした。
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