ジョルノ様は神様です! | ナノ



埋まらないもの


僕が任務を終えてソファでゆっくり紅茶を飲んでいると、ガチャンッ!と大きな音をたててアジトのドアが開かれた。
午後のひと時を邪魔された不快感を抱きながらゆっくりとそちらを見ると、涙目のきょうこがハァハァと息を切らせてそこに立っていた。
「う、うわああん!ミスターッ!」
言うや否や、彼女は僕の隣で漫画を読んでいたミスタに勢い良く抱きついた。
僕には、目もくれず。
「うお!?どうしたんだよ」
「任務っ、ヘマしちゃった!ブチャラティがすぐフォローしてくれたけど、ヘマしちゃったよぉぉ」
悲しいと言うより悔しそうに彼女は言い、ミスタの胸に顔をグリグリと擦り付けた。
一瞬呆気にとられていたミスタだが、すぐに優しい顔になると、自分の膝に乗って派手に泣くきょうこの背中をぽんぽんと叩いた。
「ブチャラティがちゃんと片付けてくれたんだろ?結果オーライじゃねーか」
「でもぉぉ」
「泣いたら余計ブサイクになんぞ」
きょうこを一旦引き剥がして、手で乱暴に涙を拭う。
彼女はうぅ…と唸りながらそれを受け入れる。
「ミスタ、ハグ」
「へいへい」
駄々っ子のように彼女はそう言い、ミスタは彼女の後頭部を掴むとぽんっと自分の方へ引き寄せた。
きょうこは額を胸に擦り付けながら遠慮なしにミスタを抱きしめる。
「いでででで」
痛がるミスタは、しかし困ったような笑顔で彼女の背中をさすっていた。
…何だか、まざまざと見せつけられている気分だった。
僕と他のメンバーでは埋めることのできない、時間が培った信頼と、それに伴う日常を。
僕が複雑な気持ちで紅茶を飲んでいると、遅れてブチャラティが帰ってきた。
「よう、ブチャラティ」
「チャオ、ミスタ。…きょうこはまだ落ち込んでいるのか」
「だって…ブチャラティ…」
「俺は別に怒っちゃあいない。もう過ぎた事だ」
それよりボスへの報告書を書くから別室に来いと言われ、きょうこはおずおずとそれに従った。
きょうこが別室へ映ると、ミスタがふぅ、と一つ息をついた。
そして顔だけをこちらに向けてニヤッと笑った。
「そんなに羨ましかったか?」
「…何の事です」
「いつもはお前にべったりなきょうこが俺ん所に来て」
僕はその問いかけに無言で顔を反らせたが、それは図星だったからだ。
任務でヘマをしたと言う彼女は、帰って来てから一度も僕の顔を見なかった。
真っ先に失敗を慰めて欲しい仲間は、僕ではなくミスタなのだ。
きっと僕がチームに入る前からそうだったんだろう。
「ま、どうしようもねーよ。だからそんな面白くなさそうな顔すんな」
「そんな顔してません」
僕が紅茶を飲むと、ミスタは足を組み直して言った。
「別に付き合ってる訳じゃないんだろ?」
「…当たり前です」
僕の返事に、何が面白いのかミスタは笑った。
確かに、彼女が真っ先に頼るのが僕であって欲しいとは思った。
ただこの独占欲がいわゆる恋と言うものなのかは、僕にはわからなかった。

2017-01-06
テキスト微修正。

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