グリフィンドールの監督生のリーマスくんは、それなりに人気者。

ジェームズやシリウスくんと一緒に居るから、最初はなんだかお菓子のおまけみたいにみんなに名前が知れて、監督生になっていっきに知名度があがったってかんじ。
かっこいいのに、隣にシリウスくんが居るから目立たないし、頭がいいのに、隣にジェームズがいるから目立たない。それでも、あの二人は人気者であることに意味を見出だしてるのに、リーマスくんは彼等と友達であることが単純に大切みたい。彼等の名前が出る度に、嬉しそうに笑ってるのが、なんか、とってもよかった。なんか、とってもすきだった。
わたしがずっと見てきた彼のいいとこは、有名になっても何ひとつ変わらない。

だから、今、目の前でリーマスくんが告白されているのも、ごく当たり前なことなんだ。


「ごめんね」

リーマスくんは申し訳なさそうに頭を下げる。優しい拒絶の言葉。慰めるために頭を撫でたり、これからも友達でよろしくって握手をするわけでもない、言葉と笑顔だけのさようならは彼女が縋る隙を与えない。完璧だった。慣れてるのかなあ。他に好きな子いるのかな…かわいい子なのに

悲しそうに笑って去っていった女の子に意識を集中させていると、リーマスくんがくるりとこっちを向いた、やば、

「なまえ…のぞき見はよくないよ」
「ご、ごめんね」
「……いいけど、」

リーマスくんは何か言いたそうだったけれど、眉を下げて笑うだけだった。たまたま居合わせてしまっただけだけど、スルー出来ずに立ち止まってしまった私が悪くて、申し訳ないうえに気まずくて顔を伏せると、「教室行く?」と彼の声。頷けば、手から鞄が取り上げられた。

「え、い、いいよ!」
「結構重いね。図書館帰り?」
「えっと、うん。魔法史と魔法薬のレポートかかなきゃ」
「他に面白そうなのあった?」
「あ、小説何冊か借りたよ」
「オススメだったら、また教えて」

にこり、リーマスくんの笑顔に思わずつられて思わず微笑む。結局、鞄はリーマスくんの手の中だけど、返してくれそうにないしわたしはその行為に甘えることにした。やっぱり優しいなあ

「リーマスくん、」
「ん?」
「モテるね」
「…っ、え?」
「噂になってるよ、今年の監督生はかっこいいって」
「そんなこと、ないよ」

告白されてた後に否定しても全然説得力ないよ。その言葉はあえて飲み込んだ。照れてるのかな、そう思って顔を覗き込んで、わたしはおどろいた。リーマスくんは、困ったような悲しいような顔をしていたから。

「好きな子に振り向いてもらえなきゃ、意味ないよ」


好きな子、いるんだ。


わたしは、そっか、とだけ答えて、それ以上何も言わなかった。言えなかった。
そんな寂しいこと言わないで、リーマスくんなら大丈夫だよって励ましたいけど、唇が縫い付けられたみたいに開かない。
好きな子いるんだ。そっかあ。
なんだか胸が空っぽになってしまいそうで、慌てて開かない口を横に吊り上げた。
うまく笑えてたら、いいな。

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