キッドが着地した林にいますぐにでも駆寄りたかったが、それが良い方向に転ばないことは冷静に分かっていたため、なまえは心臓のあたりをぎゅっと握りしめて待った。怪我などしていないだろうか。無事に戻ってきてくれた安堵と、顔を見るまで安心しきれない怖がりな心がざわめく。
いつからだろう、こんなにも心臓が止まりそうなほど、快斗のことが大切になっていたのは。
快斗のことが、好きになっていたのは。

「オメーの答え、聞きに帰ってきたぜ」

振り向くと、もうすっかり白い衣装を脱ぎ捨てた黒羽快斗がにっこり微笑みながら立っていた。

「……っ、快斗、よかった!」
「おー!向日葵もちゃんと無事だぜ」
「うん…!」

安堵で浮かんでしまった涙を、快斗は苦笑しながら指先で拭う。やっと彼女に笑顔が戻ったところで、快斗は彼女の両手を包んだ。

「?」
「ワン、ツー、スリー」

ぽん、と軽やかな音を立ててなまえの手の中から現れたのは、元気よく天に向かって伸びている一輪の向日葵だった。
今回の事件で、いろいろな思いを、たくさんの人の愛情を象徴していた、向日葵。

「なまえ、好きだよ」
「………っ!」
「好きだから、危険な目にあわせたくない。ずっとそばに居て欲しい…それじゃ答えにならないかな」
「……わたしも、」

自分の気持ちに素直に。
おばあさんの声が響く。
そうか、手遅れになる前に、気付けてよかった。まだ手が届くうちに、彼の手を握ることができてよかった。

「わたしも、快斗が好き」
「…うん」
「これからも、そばにいたい。いさせてください」
「うん…ありがとう」

快斗に腕をひかれて、ぎゅっと抱きしめられる。あたたかい。愛しさがこみ上げてきて、また視界が揺らぎそうだった。

「俺の答え、もう一回していい?」
「え?」
「キスしたい、なまえ」

にっと笑った快斗は、握った向日葵のように眩しかった。


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