ちょっと大胆すぎたかなあ。

快斗は向日葵を眺めながら、頭の中はなまえのことでいっぱいだった。あのぽかんとした顔がかわいかった、なんて余裕な思いが浮かんだと思えばすぐに、嫌われてしまったのではと不安になる。感情が行ったり来たりで落ち着かない。冷静にならなければ命に関わるのに。ああ、どうしよう、

『………いと……かいと、快斗!』
「……!?なまえ、」
『ぼんやりしてないで!入場が終わったみたいよ。もうすぐ閉鎖される』
「………怒ってない?」
『…………』
「…なまえ?」
『…自分の気持ちにはやめに素直になりなさいって、あのお婆さんに言われたの』
「…?」
『私の答えもちゃんと伝えたいから、絶対無事に帰ってきてね』

柔らかく優しい声だった。すっと快斗の気持ちが落ち着いていく。いつだって、この声に助けられてきた。絶対に失いたくないと恐怖すら抱き始めたのは、いつからだっただろう。大切な人の笑顔を守りたい。その気持ちがわかるからこそ、お嬢様と寺井の気持ちを叶えてやりたかった。

「よし、やってやる…!」


美術館から悲鳴があがり、次々と客が溢れ出してきた。なまえは双眼鏡の倍率をあげて、客の中を探す。工藤新一もとい快斗の姿はない。その時、美術館が音を立てて崩れ始めた。パニック状態の客の声に、なまえは手のひらをぎゅっと握りしめた。

こわい、こわい。

快斗との通信は切れてしまった。向日葵がひっかかってる、と言っていたから、保護プログラムを作動させるために残っているのだろう。

「お願いだから、帰ってきてよ…!」

自分の気持ちに正直になろうと、決めたのだから。
快斗にキスをされて初めて、ずっと抱いていた愛しさが、恋だと気付くことができたのだから。

「お願い、快斗…!」

その時、崩れる建物の間から、すっと白い影が現れた。

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -