「快斗、本当に行くの?」
「……なんつー顔してんだよ」
「だって、あの計画書……阻止するには、どうしたって危険だよ」
「でも、俺が行かなきゃ、向日葵燃えちまうだろ」
それは分かってる。それでもなまえは、快斗が撃たれた時の恐怖から抜け出せていなかった。もし戻ってこれなかったら。どうしたらいい。
「やっぱり私も、」
「だめだ。二人だと、脱出が難しくなる」
「…足手まといなのは、分かってる、けど…!」
「そうじゃなくって…!」
快斗は目を伏せるなまえの手を取った。
小さく震える手。ぎゅっと落ち着かせるように両手で握る。
「こないだも言ったけど、俺は、なまえが危険な目にあうのは嫌だ」
「……なんで?」
「なんで、って、」
「パートナーなんだから、私だって快斗と一緒に戦いたいよ」
「………それは」
わっと湧き上がる会場。美術館への入館がはじまったのだ。工藤新一として入館するつもりの快斗は、毛利蘭たちと時間をずらして行動しなければならない。タイミングが重要になってくるため、もう動きはじめなければ。
なまえはそっと手を離した。
「困らせてごめん。気をつけて」
「………」
「……快斗?」
快斗は無言でなまえの手を掴み直すと、そのままぐっと引き寄せて肩を掴んだ。呆気に取られた彼女の体は簡単に傾く。どうしたの、と紡ごうとした唇を、そっと塞ぐ。ちゅ、と小さな音を残して、一瞬で離れた唇。
「これが俺の答え」
「…………」
「じゃ、あとでな!」
ぽかん、としたなまえを他所に、快斗は一瞬で工藤新一へと姿を変える。にっと笑ってなんでもなさそうに手を振った快斗に言葉を返す事もできず、その背中がゲートをくぐったのを見送った瞬間、なまえはその場に崩れ落ちた。
「…………なん、な、の」