「よーお、貧乳」
「あほ峰くん、どうもこんにちは」

わたしと青峰くんは、なんというか、犬猿の仲。
ことあるごとに、こうやって私の頭に肘を置いて、チビだの貧乳だのいじめてくるのです。ちなみに私はチビなことも貧乳なこともまったく気にしてない!だって比べる対象の問題でしょう。青峰くんに比べたらみんなチビだし、桃ちゃんに比べたらみんな貧乳だ。そう思いたい。

「あほ峰じゃねえよ。このド貧乳」
「語彙が足りなさすぎ。なんにでもドを付ければいいと思ってるんですか?」
「うるせーつーか敬語やめろ」

敬語なんてアイツだけで十分だろ、と言った矢先、部室にてっちゃんが入ってきた。
おはようございます、というてっちゃんの後ろにわたしはすぐに隠れて、青峰くんを睨み上げた。

「てっちゃん、あほ峰くんがいじめる」
「またですか、あほ峰くん。いい加減にしてあげてください、あほ峰くん」
「テツまでアホアホうるせーよ!」

二年生になって一軍に、そしてスタメンになった黒子テツヤくんは、わたしの幼馴染。
わたしがマネージャーとして入るのとほぼ同時に、てっちゃんは一軍に上がったらしい。わたしたちが仲良しなことに赤司くんはびっくりしてたけど、わたしだっててっちゃんが一軍入りしていることにびっくりしたんだ。
だって、てっちゃんはずっとずっと目立たないところにいたんだから。わたしの目の前で、きらきらと輝きながらバスケをしているてっちゃんに、少し驚いたけど、すぐにくすぐったいような嬉しさでいっぱいになった。

バスケが大好きなてっちゃんがここに居ることは、なんにもおかしいことなんてないんだ。

「あ、てっちゃん、今日うちにご飯食べにくる?」
「いいんですか?ぜひ、お願いします」
「わーい!あ。桃ちゃんも来るよね?」

ちょうど部室に入ってきた桃ちゃんにも声をかける。こてん、と首を傾げる姿はとてもべっぴんさんで、「てっちゃんとわたしの家で一緒にご飯食べよ?」と言った後の、顔を赤くしてぶんぶん頷いた姿はとってもかわいい。


「じゃあ、部活終わったら三人で帰ろうねー」
「……おい」
「よーし!美味しいもの作るからね!何がいいかなあ…」
「おい、聞け貧乳」
「………」
「この場に貧乳一人しかいないだろ。おい」

無視を決め込んだわたしの頭を、青峰くんが肘でぐりぐりする。いたい。

「なんですか」
「俺も行く」
「誰もあなたなんて誘ってないです」
「お前のメシが不味くないか俺が判断してやるって言ってんだよ」
「青峰くん、素直に行きたいって言えばいいのにいー」
「うるさい黙れさつき」

ぎゃあぎゃあ、と言い合える青峰くんと桃ちゃんも幼馴染。
幼馴染通し、そして青峰くんとてっちゃんがパートナー、わたしと桃ちゃんが親友ってこともあって、なんだかんだこの4人で行動することも少なくなかった。


「仕方ないなあ。じゃあ、みんなでご飯だね」
「おう」

にかっと笑う青峰くんは、悪い人じゃないんだけど……
やっぱりちょっと、いじわるなのです。


「どう?」
「……さつきのよりは、食えるな」
「ちょっと、どういうことよー!」
「いつも美味しいです、なまえちゃん」
「えへ!ありがと、てっちゃん!」


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