わたしの背中にずっしりと、のしかかっているものはなんだろう。ふわふわと自由に跳びはねている柔らかい髪の毛が首筋をくすぐって気になるし、お腹に回った手にぎゅうと力が込められる度に、お腹のむにむにを指摘されるのではないかとひやひやする。
そんなわたしのハラハラなんて知らないそれは、首元で、はあと切なそうなため息をついた。やめてぞくぞくするから!

「ね、快斗!」

それの名前を呼ぶ。ぴくりと反応した快斗は、もぞもぞと動いて、今度は額をぐりぐりと押し付けてきた。

「く、くすぐったいよ、」
「んー」

動物か!そう思いたくなるようなその様子に、わたしの口からため息がぽん、と飛び出した。ぴくり、また動く。次の瞬間には体が離れたから安心したら、今度はわたしの肩から腕を回して、わたしの頭を胸に抱え込むように抱きしめてきた。耳に息が、かかる。ちか、い…!

「ん、ちょ…っと、快斗!」
「んー?なーに、なまえちゃん、ドキドキしちゃった?」
「い、いいから!離れて!」
「やだ」

なんだかちょっとわがままなかんじで、快斗はさらにぎゅうとわたしを抱きしめる。その姿は男というよりも子供で、上がりかけていた熱がゆったりと下がる。どきどきが、愛しさに負けてゆく。わたしは浅く息をついてから、肩に回る彼の腕を、優しくとんとんと叩いた。
すると、私の頭に顎を乗せていた快斗が、ゆるゆると下がってきて、ぴとりとわたしの頬に、頬をくっつけてきた。

「……っ」
「あーなまえやわらかくて気持ちー」
「そ、う」
「ん」
「快斗さあ、」
「ん?」
「猫みたいだね」

ごろごろ、あそんであそんで!
そう言って、自由気ままに膝の上を転がる猫みたい。
快斗は、あー…と呟くと、ちゅ、とわたしの頬に唇を寄せて、くすくすと笑った。

「ちょ、」
「猫いいなあ」
「は?」
「猫。なまえの膝の上で一日中丸くなりたい」
「……一日中はいやだなあ」
「だめかあ」

ざんねん、そう呟いて、快斗はまたわたしの頬に唇を落とす。目、髪、また頬、自由気ままに動く唇に気をとられていて、彼の指先がわたしの顎をするりと撫でたのに気がついた時には、わたしの唇は快斗に奪われていた。

「ん……っ」

ちょっと角度的に無理矢理なキスは、なんだか落ち着かなくてもぞもぞする。快斗も満足がいかなかったのか、少しわたしの顎を寄せて、自分も身を乗り出して、もう一度長いキスをした。ひたすらわたしを求めるような唇と、離れたくないとしがみつく腕に、愛しさが込み上げてきてしかたがない。
無意識のうちに彼の頭を撫でると、唇を触れ合わしたまま、快斗がわたしの体を引っ張る。そのまま彼の上に倒れ込んで、一瞬離れた唇が、また塞がれる。何度も、何度も。
何回それを繰り返したかわからなくなったところで、快斗はまたわたしの首筋に顔を埋めて、ぎゅうぎゅうと抱きしめてきた。

「……も、快斗、どうしたの?」
「ん?」
「なんか今日、甘えただね」
「……だめ?」

だめ?だなんてかわいい聞き方をするもんだ。そんなの、だめだなんて言えるわけがないのに。
わたしは彼の頭をもう一度、込め切れるはずがない愛情を込めて、ゆるゆると撫でた。眠たくなってきたのか、快斗が小さくあくびをする。それがなんだかとても嬉しくて、わたしはくすくすと笑いを漏らす。
結局わたしも快斗が大好きだから、甘えられたら幸せ以外何もないんだ。


そんなわたしたちの、日曜日の午後。

(thanks匿名さん)
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