綿菓子雲より甘く
澄んだ青い空に背の高い雲。綿菓子に似たそれは膝の上で惰眠を貪る男の銀髪を思わせた。
「…なんだか、銀さんの髪みたいだわ。食べたら甘そう」
そっと触れた銀髪は、柔らかくて溶けることなく指に絡んで流れる。陽だまりの匂いに交って甘い匂いが鼻腔を掠めたような気がした。可笑しくて笑う。
「お前になら食われてもいいよ」
聞こえて来た声に俯くと、眩しそうに薄目を開けた男と目が合った。髪を撫でていた指先を捕らえられると引き寄せられたと同時に唇を奪われていた。
――これじゃ逆じゃない、口に出来ない言葉の代わりに風鈴がチリンと鳴いた。
銀妙SS垢より
加筆修正して再録
2016.08.21
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