春風のように攫って





唇に温もりを感じて瞼を開けた。目の端で白と波模様が揺れる。

頬を擽るような風に銀色の髪がなびいて、隠しそびれた男の耳は微かに熱を帯びたように赤くなっていた。
自然と笑みがこぼれて、そっと手を伸ばす。
柔らかな耳朶からじんわりと掌に熱が伝わる。

「寝込みを襲うなんて、」

卑怯ですよ、そう続くはずの言葉もいつの間にか肩に回った男の掌に強く引き寄せられた。言葉を塞ぐように重なってしまっては、もう何も言えなかった。



銀妙SS垢より加筆修正



2016.06.24





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