夏蝉の鳴くころに





石畳みの道を女に手を引かれて歩いた。
油蝉が忙しなく鳴き、下駄の音が境内に響く。
贈った髪飾りが黒髪に映えるのを目にして腹がむず痒かった。
項の生え際をぼんやりと眺めているとふいに女が振り返る。

「疲れました?」

すぐさま首を振る。

「いいや」


――暑苦しい夏の日も妙と歩くなら悪くない。




2016.01.01





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