ぷち銀誕





あらあら。

遠くの方で声が聞こえた気がした。
それは音を立てないように近づき、コトリ、と机に何かを置くと呆れたようにため息を吐いた。
横になったまま瞳を開けられずにいると背中に指先を当てられて一気に緊張した。

一文字ずつ丁寧に綴る言葉を必死に脳内で繋げていく。

最後の文字を綴り、終わりを告げるように離れる指先が名残惜しくて、瞳をこじ開けると飛び起きる。
視界にとらえた妙は驚くこともなくその場でにこりと微笑んでいた。

「何て書いたの」

堪らずに背中をなぞった指先ごと掴んで引きよせる。
熟睡していたらきっと気付けなかっただろう。

「あら?狸寝入りしていたのなら分かるでしょう?」

腕に抱え込んだ妙が身じろぐと可笑しそうにまた笑う。
笑う度に肩が揺れ声が鼓膜に直接響くのが心地よくて。

「悪ィ銀さん要領悪くてわかんねェわ」

直接音にして聞きたいと思ってしまった。
一年の中でたった一言だけで幸福に変わると知った。

「仕様がない人」

耳にかかる銀髪を掻き分けると妙はそっと唇を寄せて囁く。



『銀さん、お誕生日おめでとうございます』






銀さんハッピーバースデー!


2015.10.10

銀妙10月祭2015様に投稿した作品です




2015.11.05





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