ただ唯一の世界






「あちぃなオイ…」

不満を漏らす声に意識が浮上すると一番に男の顎が目に入った。
今にもこぼれ落ちそうな汗の粒を手の甲で拭う様まで瞳が追うと、太腿に置いた後頭部が男の体温を吸い取るようにじわりじわりと全身に熱が回るのが分かる。
男は目覚めたことに気付かず青く晴れた空を見上げている。


こんな風に男を眺めることなんてなかった。


妙は起きてしまうのが勿体無く感じてしまい、暑さを訴えるように、妙の肌からも玉露のように汗が伝うも緩やかに送られてくる団扇の風や陽だまりの匂いに、もう少しだけ男の下で夏を感じていたいと妙はそっと瞼を閉じた。







SS垢より再掲載



2015.08.03






2015.10.14





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