境界線を越えて
「雨が降ると渡れないらしいんです」
雨音がリズム良く屋根を叩く。
それに紛れるようにお茶を啜る音、その後に小さく妙が口にした。
週刊誌に目を落としていた目線を妙に向ける。
「何が」
とぼけたように返すと、湯呑みに回した妙の指が僅かに動く。
「一年に一度だけなのに可哀想だわ」
そう言うと目を伏せた。
他人の恋に想いを馳せて心を痛める妙に、ため息をつく。
堪らず机の向こう側にいる妙に顔を寄せた。
ツイログ七夕SS
診断メーカーより
『境界線なんていらない』
2015.07.07
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