降り注ぐそれは





姿の見えない相手を無意識の中で探す。

道の往来、勤め先。
以前なら用事もなくふらりと家に立ち寄っては他愛無い会話を交わしまたふらりと出て行く。
いつの間にか出来上がった習慣が途切れてしまって、妙は戸惑った。空いてしまった時間が妙に告げるように流れていく。
それを口にしてしまえば、足元から崩れ落ちてしまいそうで怖かった。この感情が何を示しているかなんてとうの昔に気づいていたのに。

降り出した雨に行く手を阻まれた妙は止む気配のない空を軒下からぼんやりと眺めていた。忙しなく過ぎる日常は妙の感情を上手く隠してくれる。

それなのに、止まってしまった。

思わず下唇を噛んだ。認めたくない感情が心を占めていく。

会えないのが寂しい、なんて。

いつの間にか心に居座ってしまった“誰か”を振り払うように頭を振る。
けれど、雨に閉じ込められてしまった思考は今も彼の気配を探していることに嘘はつけそうになかった。









銀→→(←)妙


銀妙への3つの恋のお題:寂しいときに限って居ない/こんなに好きにさせておいて/雨の中にただ佇んで



2015.07.07





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