震えるその手をとって






妙の掌が重ねるように銀時の甲に触れる。隣り合わせに並んで座ることはあっても、こうして意味を持って触れ合うのは初めてだった。怯えに似た気持ちが湧き上がる。

「銀さんの手は大きいですね」

確かめるように呟く妙は俯いていてどんな表情をしているのか分からない。妙しか知らなかった。

笑顔の裏のその涙を。

顔を覗き込もうと体を動かす。それに気付いた妙が顔をあげると一瞬、鼻先が触れた。

「…お妙の手は、小せェのな」

瞳が合わさって距離が縮まる。逃げることなく見つめ返す妙に、口の中で舌打ちをする。
手遅れになる前に、なんて思いが頭を掠めたけれど目の前で揺れる瞳に全て飲み込まれて消えた。
柔らかい唇に押し付けた自分の唇が震えていて、合わせたまま嗤ってしまう。
情けない。
けれど唇を合わせる前に目を閉じた妙の瞼が細かく震えていて、想いは同じなのかと安堵してしまった。

「逆だと思ってたんだけど」

唇を離すと掌を返して妙の指を握りしめた。

「俺が壊れちまいそう」

妙が少し笑ったのが救いだった。






3つの恋のお題:君しか知らない/手遅れになる前に/俺が壊れそう




2014.09.23





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