キラキラ光る夏
涼みに行くぞ、と銀時に誘われるまま原付の後部座席に座って流れる景色を眺めていた。夏の日差しが照りつけて、生温い風が通り過ぎて行く。
しばらく走ると目前にキラキラと煌めく波が見えて、次第に潮の香りが鼻をくすぐる。
今年初めての海だった。
「泳ぎます?」
草履が砂に埋まって上手く歩けずにいると、腕を支えて男は女の歩幅に合わせて歩いた。
「クラゲいるからやめとけ」
引いては押し寄せる波間を二人で見つめる。潮風が照りつける太陽の日差しをほんのすこし和らげてくれていた。
「せっかくだから、入りませんか?」
そう言うと男から離れて草履と足袋を脱ぎ捨て、裾を持ち上げると女は波に足をつけた。
「ふふ、気持ちいいですよ」
はしゃぐ声が年相応で自然と頬が緩む。
その声に誘われるように男も足をつけると、一層嬉しそうに笑う。それに気を取られて裾を持つ手が緩むと、少し高めの波が押し寄せてきた。
「ぁ…」
裾が濡れる寸前。足を抱くように男は女を抱き上げていた。
「なに、見惚れてた?」
抱き上げた女をからかい気味に見上げると、
「ええ。銀さんの髪、キラキラ光ってたの」
銀髪に手を伸ばすと人掬いして撫でる。ふふ、と悪戯っ子のように妙が笑う。からかうつもりが、何も言えなくなってしまった。
「…来年もまた来るか」
キラキラと光る瞳を覗き込みながら小さく呟くと小さく頷く。
「ええ、また連れて来てくださいね」
来年の夏までこの熱は続く。
銀妙で残暑お見舞い申し上げます。
2014.08.25